10歳代の子育て層を調査 思春期の子との関係が示す、親の働き方とウェルビーイングの実態
日本総合研究所(東京都品川区、日本総研)は11月20日、10~18歳の子供を持つ就業者を対象に、子供との関係が仕事観やウェルビーイングに与える影響に関する調査を実施し、11月20日の「世界子どもの日」に併せて結果を公表した。
同調査は、企業と子供の権利の接点に注目する「子どもコミッションイニシアティブ」の活動の一環として行われたものである。
企業の支援は「乳幼児期」中心では? 10歳代の子育て層に注目
日本総研は、企業における育児支援制度の多くが「3歳まで」や「小学校低学年まで」の子供を想定しており、10〜18歳の子供を持つ親に対する支援や実態把握はこれまで十分に進んでいないと指摘している。
10〜18歳の子供は、進路選択や職業への関心が高まる時期であり、親の働き方や価値観に対して独自の見解を持ち始める。一方、企業では従業員のウェルビーイングを重視する施策が拡大しつつあるが、こうした年齢層の子供を持つ従業員の実態や価値観は、施策設計に十分反映されていないのが現状である。
同調査では、従業員が子供とかかわる中でどのような仕事観・生活観を持つようになるかに着目し、企業におけるウェルビーイング施策の検討に資することを目的としている。
「子供がいるから頑張れる」親の意識が働き方に影響
10~18歳の子供がいると回答した4691人のうち、「子供がいるおかげで仕事を頑張れていると思う」「子供の将来のために自分は役に立っていると思う」「子供を通じて自分の社会が広がっていると思う」といった肯定的な経験が上位に挙がった。
また、「子供との時間を確保するために転職を検討したことがある」と回答した割合は約30%であり、職種別では25〜37%の範囲に収まっていた。全ての職種において3~4人に1人が転職を検討していたことになる。
さらに、「子供の将来のために自分が役に立っていると感じたことがある」と回答した割合は、全ての職種で60%以上と高水準であり、最も高い職種では86%に達した。一方で、職種間で約26ポイントの差が見られ、職務内容などによる感じ方の違いも示唆された。
子供との団らんの頻度が生活満足度と関係する傾向
仕事のある日の子供との接触頻度と生活満足度には、以下のような傾向が見られた。
・「平日に30分以上、子供と団らんすることがよくある」とした人のうち、生活満足度を10点と回答した割合は47.2%
・「団らんがほとんどない」とした人では、10点とした割合は5.1%にとどまり、0点とした人の割合は29.7%と最も高かった
日本総研は、こうした結果から、子供との日常的なかかわりの頻度が生活満足度の高さと一定の関係を持つ傾向があると分析している。
働く時間の長さは子供の評価にどう影響?
子供が親の働く時間を「長い」「長すぎる」と評価している割合は、週50時間以上勤務している親で最も高く、37.7%だった。一方で、週30時間未満でも「長い」と感じる回答があり、労働時間と評価には個人差があるとされている。
さらに、子供が「親の仕事を良い仕事だと思っている」と答えた場合でも、「働きすぎている」と評価される割合は約40%であり、「そう思っていない」層でも同様の傾向が見られた。
日本総研は、仕事の評価につながる要因が労働時間の長さだけとは限らないと受けとめられていることを指摘している。
思春期の子を持つ親への理解が施策の鍵に
日本総研は、調査結果から以下の点を示唆している。
・子供との関係を通じて、親は自身の社会的役割や働き方への意識を高めている
・職種を問わず、一定割合の親が子供との時間確保のために働き方を見直している
・子供との団らん頻度が生活満足度と関係しており、家庭内の関係がウェルビーイングに影響を与える可能性がある
・子育て支援は乳幼児期に限らず、10歳代の子供を持つ従業員にも対応することが、企業施策の実効性を高めると考えられる
これらの結果から日本総研は、企業が従業員のウェルビーイング向上施策を検討する際、10〜18歳の子供を持つ親の価値観や実態にも留意すべきであると指摘している。
また、従業員が子供とかかわりながら、自らの仕事に満足して働けるような環境整備にあたっては、幼い子供を持つ親への支援に限らない視点が必要であるとしている。
調査は、2025年8月にインターネットで実施された。対象は、日本国内在住の就業者(会社員、会社役員・管理職、公務員・団体職員、派遣・契約社員)で、過去6か月に週平均20時間以上の就業実績があること。全回答者数は9404人で、うち「10〜18歳の子供がいる」と回答した4691人を対象に分析を行っている。
発表の詳細と調査結果は、日本総研の公式サイトで紹介されている。