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ジャングリア沖縄が示す地方創生の道「北海道×沖縄」スタートアップと新規事業で描く未来図とは?佐藤副社長とトークセッション

OKITIVE

日本列島の最北端と最南端。気候も文化も異なる北海道と沖縄には意外な共通点が−。 那覇市で開催された第2回沖縄イノベーションカンファレンス内で行われたトークセッション『北海道×沖縄』スタートアップと新規事業のローカル to ローカル」では、両地域で活躍する経営者や行政担当者が一堂に会し、「ジャングリア沖縄」を運営する株式会社ジャパンエンターテイメントの佐藤大介取締役副社長を含め、地域発イノベーションの可能性を探りました。

佐藤副社長 地域愛が生む新たな可能性

「道民も県民も、自分の地域への愛着が強く、それを堂々と口にできる県民性・道民性を持っています」と語るのは、沖縄本島北部で7月に開業予定の大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」を運営する株式会社ジャパンエンターテイメントの佐藤大介取締役副社長。 北海道、青森、沖縄など各地での勤務経験を持つ佐藤氏は「東北の方は東京を意識して控えめになりがちですが、北海道と沖縄には自信を持って地域の良さを発信できる共通点があります」と解説します。 そんな共通点があるからか、両地域はすでに連携の土台を築きつつあります。 モデレーターを務めた沖縄セルラー電話の國吉博樹取締役執行役員常務コーポ−レート本部長は「2018年から『どさんこしまんちゅプロジェクト』という両地域の企業や地域経済を発展させる取り組みが展開されています。南の端と北の端で力を合わせ、新たな価値創造と共通課題の解決を目指しています」と紹介しました。

北海道は「宇宙」に強み、沖縄から企業進出も

北海道と沖縄、それぞれの地域でどのような新規事業が生まれているのでしょうか。 札幌市役所でスタートアップ支援を担当する伊藤諒氏は「最近特に目立つのが宇宙関連です。ロケットベンチャーのインターステラテクノロジズはトヨタとも連携し出資を集めています。北海道としては、道東の大樹町にスペースポートを持つ強みを活かしています。東京に次いで日本で2番目にロケット関連のスタートアップが集積しています」と説明しました。 沖縄発のスタートアップによる北海道への展開も動き出しています。伊藤氏によると、沖縄発の超吸水性ポリマーを製造・販売する「EFポリマー」は北海道のピッチコンテストで優勝し、現在は北海道進出を準備中だとのことです。 「ローカルからローカルへの展開は、とても理にかなっています」と伊藤氏。「一つの地域で実証したものを、似た課題を持つ地域で展開していく。それが日本全体のイノベーションにつながるはずです」と期待を寄せます。

沖縄には素晴らしいロケーションがある

観光分野での協業も活発化しています。 株式会社大人の代表取締役を務める五十嵐慎一郎氏は毎年9月に札幌で開催する複合フェスティバル「NoMaps」での取り組みを紹介。「2024年は沖縄との協業企画を3、4件実施しました。沖縄のアーティストによるライブや物産展など、2025年はさらに拡大する見込みです」 また、五十嵐氏は妹と共にインバウンド向けウェディング事業も手がけています。 「海外のお客さまにとって、北海道も京都も沖縄も距離は関係ありません。私たちはアウトドアウェディングを得意としていますが、沖縄には素晴らしいロケーションがたくさんあります。沖縄は県単位でウェディングのプロモーションを展開している印象を受けるので、そこから学べることも多いと感じています」と話します。

地域資源を活かした新規事業も

沖縄テレビ開発営業企画部長の新里一樹氏は、沖縄在来の山芋「琉球ヤムイモ」のブランド化プロジェクトを推進しています。 「ローカル発の事業は、どうしてもプロダクトアウト型になりがちです。しかし、地域資源をベースに市場ニーズとのギャップを埋める努力をすれば、グローバルな展開も可能だと考えています」と新里氏は説明します。 実際、琉球ヤムイモはアスリートの間で注目を集め、「パリ五輪出場予定選手からもサンプル提供の依頼がある」と明かしました。 「ウサイン・ボルト選手がヤムイモを食べて強靭な肉体を維持したという逸話があるように、沖縄の山芋にも同様の効果が期待できるのではないか」と商品の展望を語りました。

本物の体験や自己成長を求める「ブルーゾーン」

セッション中、五十嵐氏は「ブルーゾーン」という言葉に興味を示しました。ブルーゾーンとは100歳以上の長寿者が多い地域を指し、世界で5地域が指定されています。そのうちの一つが沖縄です。 これに関連して佐藤氏は、沖縄県の観光地としてのブランド戦略調査の結果を紹介。 「沖縄を訪れる方々は、単なる癒やしではなく、本物の体験や自己成長を求めています。例えば、やんばる地域では3泊4日で30万円のツアーに喜んで参加される方もいます。このような高付加価値な観光は、ブルーゾーンという文脈とも相性が良いと考えています」と補足しました。

ジャングリアで「沖縄から日本の未来を作る」

観光産業の変革も進んでいます。 ジャパンエンターテイメントが手がけるテーマパーク「ジャングリア沖縄」は、単なる収益事業ではなく「沖縄から日本の未来を作る」という理念を掲げています。 「東京発ではなく、沖縄発で新しい産業を創造したい。私たちは変化の起点になりたいと考えています」と佐藤氏は意気込みを語ります。 「これまでの日本のテーマパークは、海外のアイデアやライセンスに依拠し、利益の多くが海外に流出していました。私たちは『ジャングリア沖縄』として、沖縄の価値を世界に発信しながら、将来的には自分たちのモデルを海外展開していきたいと考えています」と佐藤氏は展望を示します。

ジャングリアでは共感されたが...人材と地域金融課題

しかし、課題もあります。五十嵐氏は「北海道の地銀はまだまだスタートアップ支援に消極的です」と指摘します。 これに対し佐藤氏は「ジャングリアは出資の7割を沖縄の投資家から集め、残りは地銀と政府系金融機関によるシンジケートローンで調達しました。『地方を元気にする』という理念に、地銀も共感してくれたんです」と、資金調達の成功例を示しました。 人材面では、季節による需要変動への対応が課題となっています。伊藤氏は「ニセコは冬場は人手不足で、短期バイト募集に追われる一方、夏は人が余る。観光のピークが異なる沖縄との人材シェアリングができないだろうか」と提案します。 セッション終盤、國吉氏は「2050年の沖縄のあるべき姿を描く『GW2050プロジェクツ』が始動しています。観光人材の育成や、アグリテックの活用など、北海道と沖縄が変化の起点となって外貨を稼いでいける可能性は大きいと考えています」と展望を示しました。 「一つの地域だけで頑張るのではなく、各地域が連携することで、日本全体でエコシステムを構築していくことが重要ではないでしょうか」という伊藤氏の言葉が、今後の地域発イノベーションの方向性を示唆していました。

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