「フィリピン、中国、クルド、どんどん対象が変わっています」埼玉県ヘイト行為のなぜ
お笑いタレント、大竹まことが同世代や全世代の男女に向けてお送りしているラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・毎週月〜金曜13:00~15:30) が7月1日に放送され、埼玉県の川口市、蕨市を中心に激しくなっている在日クルド人に対する排斥運動に詳しい、任意団体『在日クルド人と共に』の代表の温井立央が出演。ヘイトについて伺った。
大竹「クルド人に対するヘイトなど、いろんなことが近頃問題になっています。温井さんは蕨にお住まいで、最初にクルドの人たちとどう関わり合ったんですか?」
温井「2016年に、私の妻が近所の公園で遊んでる女の子に声をかけたんですね。その子がクルド人だということが分かり、まだ学校に行っていないということだったので、近くの小学校に入学させようとしました」
大竹「学校の時間だったのに公園で遊んでたっていうことですか」
温井「そうなんですよ、昼間だったので。それで学校に掛け合ったところから関わりが始まりました」
大竹「なるほど。クルドの人たちは、もともとどんなところで暮らしてる人たちだったんですか?」
温井「もともとは中東のトルコ、イラク、シリア、イランにまたがって暮らしてる、先住民のような人たちなんですね。もともと、その一帯に暮らしてたんですけれども、第一次世界大戦が終わった後に、それぞれの国に国境が分割されてしまって、そこで少数民族として暮らすことになります。特にトルコに多くの人がいて、同化政策の中で非常に迫害を受けてきたという歴史があります」
大竹「基本的にクルド人の人たちは、自分たちの国を持っていない?」
温井「そうですね、自分たちの国がないんですね。独立する機運はあったんですけども、それもなくなってしまって、今は国なき民族です」
大竹「クルドの人たちは日本にいつ頃来て、今は何人ぐらいいらっしゃるんですか?」
温井「だいたい90年代から日本に来たということですが、実はクルド人というパスポートはないんですよね」
大竹「あ、そうか。国がないわけですからね」
温井「だからトルコ国籍という形になってしまうんですね。トルコ国籍の人たちは、現在日本にだいたい6000人ぐらいいて、そのうちの2000人ぐらいが埼玉県に住んでいて、それ以外に統計に出ない“仮放免”の人たちが700人ぐらい川口にいるということで、大体2000から3000ぐらいのクルド人が住んでるんじゃないかと言われています」
大竹「その埼玉県でクルド人に対する差別とか嫌がらせが起こってますね。これはクルド人の人だけが対象になってるんですか?」
温井「今はクルドの人だけが対象になっていますが、実は蕨・川口にはたくさんの外国籍の人が住んでいて、2009年にはフィリピン国籍の中学生に対するヘイトがありました。学校の前で「出て行け」と言うんですね。2010年代に入ると今度は中国籍の人に対するヘイトがありました。そして今はクルドの人ということで、どんどん対象が変わってます」
大竹「クルド人に対するヘイトの背景にはなにがあるんですか?」
温井「ヘイトがひどくなったのは去年、難民入管法の改定案が国会で審議された頃からです。去年6月には川口市で「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」というのが採決されたんですね。その数日後に市内の病院で、クルドの人たちが百人ぐらい集まることがあって、それをきっかけに一気に広がりました」
大竹「クルドの人たちは難民ですよね。国は持たないので帰るとしたらトルコに帰るしかないわけですか?」
温井「今のところはトルコ国籍のパスポートで日本に入ってる人達です。他にもシリア国籍もいらっしゃいますけれども、圧倒的にトルコの人が多いんですね。なので、やはり返されるとなるとトルコになります」
大竹「トルコに帰されると、彼らはどういう目にあうんですか?」
温井「実は人によるんですね。帰されたら全ての人が、例えば拷問を受けるとか、弾圧を受けるとか、収監されるということではないんですけれども、やっぱり一部の人は収監されたり拷問を受けたりします。つい先月も私達のやってる日本語教室に来ていた人がトルコに帰ったんですけども、空港で捕まって、それから音信不通になってしまいました」
大竹「蕨市の行政は手を差し伸べてくれるようなことは?」
温井「難民認定とか在留資格の国の管轄になるので、自治体は「そこは国の管轄です」と言うんですね。もちろん自治体でできることもあると思うんですけれども」