【すてきな山小屋】個性いろいろ、尾瀬の山小屋6選。季節を変えて何度も訪れたい！
旅の目的地として、宿選びはとても重要。旅館や民宿、ホテルと同様に山小屋を目的地とした旅もいい。山での暮らしには少しだけ制約はあるけれど、それがむしろ心地よく感じるほどのとっておきの体験が待っています。福島県、栃木県、群馬県、新潟県にまたがる尾瀬は、山旅初心者にもうってつけのコースが整備され、山小屋を求めて旅を始めるにもおすすめの場所。そんな尾瀬にある、個性豊かな山小屋を案内します。
主な登山口へのアクセス
【鳩待峠へは】
上越新幹線上毛高原駅からバス1時間40分の尾瀬戸倉で乗り換えバス35分の鳩待峠下車。
【大清水へは】
上毛高原駅からバス2時間10分の大清水下車（～10月20日は新宿から大清水まで高速バスが運行〈約4時間40分、要予約〉）。
【沼山峠へは】
会津鉄道会津線会津高原尾瀬口駅からバス2時間の尾瀬沼山峠下車。
尾瀬には目的にしたいほど、魅力的な山小屋ばかり
山小屋に泊まってみたい。けれど登山、ましてや宿泊を伴う山行だなんてハードルが高い……なんて思う人も多いのではないだろうか。そんな人にこそ、尾瀬がおすすめ。
1400m以上の高所にありながら、基本的にはずっと平坦な木道歩きで、しっかり装備を整えて準備さえすれば、体力に自信がない人でも安心して山歩きが楽しめる。
山小屋も基本的に2名以上で予約すれば個室に案内してくれるし、小屋内にはWi-Fiも通っている。湧き水が豊富なことから飲み水も汲み放題で、トイレもウォシュレット。お風呂にも入れてしまうなんて、快適なことこのうえなし。
そして、朝夕には泊まった人だけが見られる、素敵な景色も待っている——。
尾瀬開拓の歴史を物語る、質実剛健な山小屋『長蔵小屋』
福島県側の入山口・沼山峠、または群馬県側の入山口・大清水からアクセスできる尾瀬沼のほとりに立ち、燧ヶ岳登山の拠点としての利用も多い。尾瀬で一番古く、大正時代から続く山小屋で、代々の小屋主は自然保護活動に携わり、尾瀬を守ってきた歴史をもつ。歩いてすぐの場所には別館が立ち、こちらでも宿泊ができるほか、喫茶室（平日不定休あり。SNSで案内）も併設。ピザやレモンタルトなどの軽食が提供されている。
【『長蔵小屋』詳細】
長蔵小屋
住所：福島県桧枝岐村尾瀬沼畔1／アクセス：会津鉄道会津線会津高原尾瀬口駅からバス2時間の尾瀬沼山峠下車、徒歩1時間15分
至仏山を眺めつつこだわりのグルメを『尾瀬小屋』
鳩待峠から徒歩約3時間30分、尾瀬ヶ原の見晴地区に6軒立つ山小屋のうちの一つ。創業は昭和32年（1957）、2020年に現オーナーの工藤友弘さんが小屋を引き継いだ。喫茶メニューは毎年半分以上を入れ替えるというこだわりぶりで、「早朝から夜まで、キャンプをしている人にも山グルメ楽しんでほしい」との思いから、売店は7～19時の長時間営業。骨付き鶏モモ肉のコンフィなど、とても山のご飯とは思えないメニューが並ぶ。
【『尾瀬小屋』詳細】
尾瀬小屋
住所：福島県桧枝岐村燧ケ岳1／アクセス：上越新幹線上毛高原駅からバス1時間40分の尾瀬戸倉で乗り換えバス35分の鳩待峠下車、徒歩3時間15分
尾瀬ヶ原の中心に佇む一軒宿『龍宮小屋』
尾瀬ヶ原の真ん中、竜宮十字路近くに立つ眺望抜群の山小屋。山ノ鼻の方向を見ると至仏山、振り向けば燧ヶ岳がそびえ、尾瀬ヶ原に面した部屋からは雄大な湿原の風景を眺められる。小屋の建材にはクロベなどを使用し、木のぬくもりあふれる室内も魅力。小屋主の萩原澄夫さんが丁寧にドリップしてくれるコーヒーも絶品だ。
【『龍宮小屋』詳細】
龍宮小屋
住所：群馬県片品村戸倉652／アクセス：上越新幹線上毛高原駅からバス1時間40分の尾瀬戸倉で乗り換えバス35分の鳩待峠下車、徒歩2時間35分
尾瀬のことなら“ひげくまさん”にお尋ね『桧枝岐小屋』
見晴地区の山小屋の一つ。3代目主人の萩原英雄さんは“ひげくまさん”の愛称で親しまれており、わざわざ会いに来るという常連客も多い。店前にはテラスがあり、『喫茶ひげくま』を営業中。伏流水で冷やしたドリンクが涼しげだ。館内には画家だった先代の絵や、お客さんからの手紙などが飾られている。
【『桧枝岐小屋』詳細】
桧枝岐小屋（ひのえまたごや）
住所：福島県檜枝岐村燧ケ岳1／アクセス：上越新幹線上毛高原駅からバス1時間40分の尾瀬戸倉で乗り換えバス35分の鳩待峠下車、徒歩3時間15分
尾瀬で唯一温泉が湧く『温泉小屋』
見晴から北へ40分ほど歩いた赤田代地区にある、その名のとおり温泉の湧く一軒宿。鉄分を含んだ赤茶色の湯に惹かれた登山客や、三条ノ滝を目指す人から人気が高い。山小屋らしいレトロな雰囲気漂う別館と、築25年と新しい本館（3枚目の写真）の二つがある。晴れた日にはテラスに出て、パラソルの下でコーヒーやビールを飲むのが至福のひととき。
【『温泉小屋』詳細】
温泉小屋
住所：福島県檜枝岐村燧ケ岳／アクセス：上越新幹線上毛高原駅からバス1時間40分の尾瀬戸倉で乗り換えバス35分の鳩待峠下車、徒歩4時間
女将さん自慢の手料理をぜひ！『山の鼻小屋』
尾瀬ヶ原の入口・3軒の山小屋が立つ山ノ鼻地区に位置し、鳩待峠から入り湿原を散策したり、至仏山登山の拠点としたりするのに便利。宿泊はもちろんのこと、11～14時には軽食処もオープン。女将さんの食事を目当てに訪れる人も多い。写真の上州豚丼味噌汁付きのほか、ラーメンやソフトクリームなどの甘味もある。
【『山の鼻小屋』詳細】
山の鼻小屋
住所：群馬県片品村戸倉中原山898-9／アクセス：上越新幹線上毛高原駅からバス1時間40分の尾瀬戸倉で乗り換えバス35分の鳩待峠下車、徒歩1時間
取材・文＝本誌編集部 撮影＝白石ちえこ
『旅の手帖』2024年8月号より