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両極端な執事が魅せる「愛」と「忠誠」、ミュージカル『黒執事』最新作『~緑の魔女と人狼の森~』が開幕

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ミュージカル「黒執事」~緑の魔女と人狼の森~  撮影=浜村晴奈

ミュージカル「黒執事」~緑の魔女と人狼の森~ ゲネプロ 2025.9.11(THU)梅田芸術劇場

全世界シリーズ累計3,600万部超と、2006年10月号より月刊『Gファンタジー』(スクウェア・エニックス刊)で連載中の大人気漫画『黒執事』(原作:枢やな)。19世紀後半、ヴィクトリア朝時代の英国を舞台に、名門貴族の若き当主に仕える全てにおいて完璧な執事の物語を描き、そのゴシックで華麗なビジュアルと、ミステリー・アクション・ギャグがふんだんに盛り込まれたエンターテインメント性の高いストーリーは若い女性を中心に絶大な支持を受けている。

2009年の舞台化以降、これまで9度にわたって舞台化。「生執事」と呼ばれ好評を博す同シリーズの最新作、『ミュージカル「黒執事」~緑の魔女と人狼の森~』が9月12日(金)より大阪・梅田芸術劇場で幕を開けた。前日にはゲネプロが行われ、その全貌が明らかになった。

同作では、演出に毛利亘宏、音楽に和田俊輔という、シリーズの根幹を支えてきたトップクリエイターが約10年ぶりに復帰。『黒執事』シリーズが持つ幻想的で不気味な世界観を忠実に立ち上げ、照明や音楽でより深く没入させる。

物語の舞台は19世紀英国。名門貴族ファントムハイヴ家の執事セバスチャン・ミカエリスは、13歳の主人シエル・ファントムハイヴとともに“女王の番犬”として裏社会の汚れ仕事を請け負っていた。女王の命により、ドイツで起こる不可解な死亡事件の調査へ赴くセバスチャンとシエル。足を踏み入れただけで呪い殺されるという“人狼(ヴェアヴォルフ)の森”について真相を探る二人におぞましい呪いが降り注ぐ――。

天寿光希

プロローグでは、天寿光希演じるババ様の不気味な笑い声と呪詛のような言葉が辺り一面に轟く。やがてドイツの“人狼の森”に囲まれる村で暮らす女性たちも加わり、ババ様とともに不穏な旋律に歌声を乗せる。その響きは、これから降り注ぐ“呪い”を予言しているかのようだ。

“人狼の森”を調査するためやってきたファントムハイヴ家当主のシエル、執事のセバスチャン、使用人たちが登場。セバスチャンとシエルが悪魔の契約を交わしたことも改めて語られ、シエルの過去も暗示する。そして、キャスト全員が揃い、本作のメインテーマ『緑の魔女と人狼の森』を披露。物語は大きく動き始めた。

立石俊樹
小林郁大

執事のセバスチャン役は、前作『~寄宿学校の秘密~』の初演・再演から立石俊樹が続投。3度目とあって、セバスチャンの流麗な身のこなしもすっかり板につき、悪魔的な存在感も一層際立っている。一方、当主のシエル役は、オーディションを経て13歳の小林郁大に決定した。小林は原作と同じ年齢とあって、シエルが抱く等身大の不安や葛藤を瑞々しく表現。その姿に若くしてファントムハイヴ家の当主となったシエルの心のうちがより伝わってくる。そして、この年齢のリアリティが、「完璧な執事」と「未熟な主人」という関係性を自然と際立たせていた。

Clara

緑の魔女ことジークリンデ・サリヴァンを演じるClaraは、若くしてアイデンティティが崩壊する苦しみを全身全霊で熱演した。ババ様や村の女性たちに囲まれ、外の世界を知らずにいわば“純粋培養”で育ったサリヴァンだが、シエルたちがやってきたことで環境が大きく変化する。そんなサリヴァンの心情を奏でるClaraの歌声は力強く、「私は確かにここに立っている」と、その存在感を強めた。

小野田龍之介

Clara、小野田龍之介

サリヴァンに仕える執事、ヴォルフラム・ゲルツァーもサリヴァン同様新キャラクターだ。演じるのはシリーズ初登場の小野田龍之介。サリヴァンに深い愛情と忠誠を誓い、不器用だが人情味溢れるヴォルフラム。周囲を圧倒する佇まいのヴォルフラムだが、どこか暗い影もつきまとう。その真相もやがて明らかになる。

立石俊樹、小林郁大

誰よりも主人のことを想うヴォルフラムの存在が、セバスチャンの冷酷さや悪魔性をより引き立てる。同時に、シエルがセバスチャンと結んだ「契約」の側面も強調される。セバスチャンは頼りになる「完璧な執事」だが、やはり「あくまで執事」なのだ。

ファントムハイヴ家に仕える5人の使用人、フィニアン(糸川耀士郎)、メイリン(角川美紗)、バルドロイ(北村圭吾)、スネーク(佐藤永典)、タナカ(本間仁)も大活躍。それぞれが本領発揮し、使用人として働く姿からは見られなかった強い光をその目に宿した。

小林郁大、Clara、立石俊樹

また、ババ様が明かす過去とサリヴァン出生の秘密。ヒルデ・ディックハウト役の蘭舞ゆう、グレーテ・ヒルバート役の玉山珠里、アンネ・ドレヴァンツ役の井上花菜をはじめ、ファントムハイヴ家との戦いで高い身体能力を遺憾なく発揮するドイツ人女性たち。セバスチャンとヴォルフラムの対決では息を飲むようなアクションで、二人の異なる温度をぶつけ合う。彼らを突き動かすものはすべて「愛」と「忠誠」だ。随所で「愛とは何か」「忠誠とは何か」と問いかけてくる。

各場面とも照明が印象的だ。たとえば、なぜか古めかしい装いをしているドイツの女性たちがセピア色の照明に包まれると、まるで名画のような美しさを見せる。また、ヴォルフラムが独白する場面でも、光が重要な役割を担っており、楽曲とともに心の機微を繊細に描き出した。

ドイツで起こる不可解な死の謎を解くことを第一命題とする中で、シエルをはじめ、サリヴァンら登場人物たちの葛藤や心の成長を描く本作。そして、愛と忠誠が制御不能になった先はどうなるのか。最後までスリリングな展開が続く。

取材・文=Iwamoto.K 撮影=浜村晴奈

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