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東海道五十三次の宿場町として栄えた桑名宿。美し国・三重の玄関口で時をなぞる旅へ 

さんたつ

【旅の手帖】東海道手伝い歩き_0

東海道五十三次の42番目の宿場として栄え、いまもおおよそ1㎞四方のめぐりやすい範囲に史跡が点在する桑名。ハマグリをはじめ、名産品も多い美(うま)し国・三重の玄関口で“新旧のいいもん”を訪ねた。

秋の涼風に誘われ、美し国の玄関口へ

東海道唯一の海路、七里の渡し跡。

「10回に分けて、東京の日本橋から京都の三条大橋まで東海道の踏破を目指しているの」とは、桑名宗社(そうしゃ)の鳥居の前で出会った埼玉県在住の女性2人組。江戸時代後期、桑名宿には旅籠(はたご)が約120軒があり、東海道で2番目にその数が多い宿場だったという。

「多くの人々が通り、異文化が合わさる場所。それが、歴史がありながら新しいものも好む桑名人の気質を育んだと思います」と、桑名宗社宮司の不破義人(ふわよしひと)さん。

近代の桑名人にも、その気概が。山林王と呼ばれた2代・諸戸清六(もろとせいろく)は“日本近代建築の父”ジョサイア・コンドルに新居の設計を依頼。それが現在の『六華苑』に残る洋館だ。揖斐(いび)川を望む4層建ての塔屋や輸入タイルを敷いた水洗トイレなど、豪華かつ当時最先端な暮らしをしていたのがわかる。

東海道を行く旅人を見守り続けた桑名宗社の鳥居。伊勢湾台風の傷痕も残る。
この日、桑名宗社の「眺憩楼(ちょうけいろう)」では、2代目・村正が奉納した太刀の写しと鎌倉時代作の「末行」という古刀を展示。3カ月に1回展示替え。
初代諸戸清六の住居が残る諸戸氏庭園。2025年12月7日まで秋の一般公開中。月休(写真=諸戸財団)。
『六華苑』の廊下。洋館と和館が壁一枚を隔て、真っすぐつながっている。

令和のいま、老舗の新たな挑戦が増えているのも、また実に桑名。昭和5年(1930)にリヤカーから始まった生花店『おはなちゃん』は、民泊を開始。店主の水谷寛之さんいわく「古きよき日本家屋の雰囲気がよかったのか、2度泊まりに来た外国人客もいました」。

ほぼ同世代、大正15年(1926)創業の『オオスミフルーツ』は、5年前に姉妹店のカフェ『BELIER(べリエ)』を開業。千葉県からこの地に嫁ぎ、事業を始めた大角志穂さんは「桑名は人と人の間に垣根がなく、助け合いの心がある」と笑う。「このカフェも地域密着型。サンドイッチに使うパンも海鮮も、地元のお店さんから仕入れています」

寺町通り商店街で毎月3と8がつく日に開かれる朝市、三八市。
桑名市観光協会の渡辺さやかさん。「多度大社や長島の『なばなの里』など足を延ばせば、ほかにも見どころ多数!」。

70年近く市民に愛されたアイスまんじゅうの『マルマン』は、昨年閉店……かと思いきや、今夏復活!

「子どものとき、大好きだったあの味を絶対になくしたくなくて。薪窯で小豆を4時間炊いて甘みを引き出したあんこと、練乳ベースのミルクを真鍮の型で固めるという製法は一切変えていません」と味を継承した水谷さん夫妻。

桑名といえば、江戸時代からハマグリが名物。料亭で味わえるほか、『らぁめん登里勝(とりかつ)』にもこの海の幸を使う渾身の一杯が。

店主の丹羽伸材(のぶき)さんによると「桑名のハマグリは木曽三川から流れ込む栄養豊かな水域で育つので、大きくてふっくらしている」そう。高級な地産食材を気軽にラーメンで味わえるとは。その手があったか桑名のハマグリ!

復活した『マルマン』のアイスまんじゅう220円(手前)とフルーツ味200円。
桑名駅前には銀座商店街(写真)などレトロな風景も。
安永餅ストラップ実物大1980円など、安藤食品サンプル製作所が手がける桑名の名産グッズをお土産に。
『安藤食品サンプル製作所』の安藤恭子さん。「桑名市物産観光案内所でも都饅頭ストラップやアイス饅頭キーホルダーを販売しています」。

『六華苑』地方で唯一現存するコンドル建築

2階サンルームもコンドル建築の特徴。
庭園も池泉回遊式庭園と芝生広場で和洋折衷。天井にはコンドルが多用したバラの意匠が。
「暖炉の火かき棒などハート形の意匠も散見できます」と石神教親(のりちか)苑長。

大地主だった2代諸戸清六の住居として大正2 年(1913)竣工。洋館は東京の鹿鳴館や旧岩崎邸庭園を手がけたジョサイア・コンドルの設計で、洋館と和館が横につながる構造は珍しい。洋館の居間の押入れなど和洋折衷の造りが随所に。

☎0594-24-4466
9:00~16:00受付
月(祝日の場合は翌平日)休
460円
三重県桑名市桑名663-5
JR関西本線・近鉄名古屋線桑名駅から徒歩20分

『らぁめん登里勝』寿司職人ならではの繊細な技と盛りつけ

自家製の平打ち細麺の上に桑名産ハマグリがのる。
「いまもいなり寿司と焼き鯖寿司は提供しています」と3代目の丹羽伸材さん。

寿司店の3代目が、昼はラーメン・夜は寿司の二毛作からラーメン専門に。はまぐり塩らぁめん(時価。写真は1900円)は澄んだスープながら、ハマグリやアサリ、焼いた鯛のアラなどで出汁を重ね、旨味濃厚!

☎0594-22-1101
11:00~13:45 LO・18:00~20:15LO(火は昼のみ営業)
水休
三重県桑名市京町39
JR関西本線・近鉄名古屋線桑名駅から徒歩15分

『MuGicafe』地産小麦のふわもち食感に虜

桑名もち小麦粉のうどんで作る和るぼなーら1200円、パンケーキはんぶん550円。
戦後築の風情ある商家を改装。
「近くでホテル兼カフェの『ムギノワ』も開業しました」と代表の保田與志彦さん(中央)。

小麦粉を主に扱う食材卸問屋が「桑名もち小麦」のおいしさを知ってもらおうと開業。もち性のでんぷんをもったその小麦粉で作ったパンケーキやうどんは、もっちりむにむにの愉悦食感。店内では同小麦粉も販売している。

☎070-5335-9871
11:00~17:00
火休
三重県桑名市京町42
JR関西本線・近鉄名古屋線桑名駅から徒歩15分

「桑名宗社(春日神社)」桑名一の古社はあの名刀を所有!

今年改修された参道。その先の右に桑名神社、左に中臣神社が鎮座。
眺憩楼は9:00~15:00、不定休(2月上~中旬は閉館)。
村正のペーパーナイフ1200円、村正御守1000円など。

『延喜式神名帳』に記載される、桑名神社と中臣(なかとみ)神社の両社からなる。境内北側には、天保2年(1831)築とされる元大塚本陣の建物を移築した「眺憩楼」があり、神社に奉納された三重県指定文化財の「村正」などの名刀や、その写しを展示。

☎0594-22-1913
境内自由(社務所は9:00~17:00)
三重県桑名市本町46
JR関西本線・近鉄名古屋線桑名駅からバス4分の田町下車、徒歩2分

『桑名のお宿TERAMACHI』お花屋さんの2階が素敵な民泊に

寛之さんとお母さん。1階が生花店だと安心感があるという宿泊客も。
寝室2室に加え、団らんに使えるリビングダイニングがある。

「100周年を目指し、事業を広げようと民泊も始めました」と、1階で生花店『おはなちゃん』を営む4代目の水谷寛之さん。襖や欄間など古きよき風情は残しつつ、トイレ2つとシャワー室を備え、滞在は快適に。

予約はairbnbから
1泊素泊まり3万2251円(最大7名まで)
三重県桑名市南寺町16
JR関西本線・近鉄名古屋線桑名駅から徒歩12分

『BELIER(べリエ)』キラキラ果実で旅先でも健康に

注文後にカップの中身をミキサーにかけるフルーツスムージーとグリーンスムージーは各650円。
野菜たっぷりのサンドイッチも。

スムージーやケーキ、サンドイッチは、老舗『オオスミフルーツ』が毎日名古屋から仕入れる新鮮果実や野菜たっぷり。おいしくて健康的と評判だ。グラニュー糖は控えめ、果実本来の甘さを生かしたりんご飴500円が一番人気!

☎0594-82-5218
10:00~17:00(売り切れ次第終了)
水休
三重県桑名市南魚町68
JR関西本線・近鉄名古屋線桑名駅から徒歩16分

取材・文・撮影=鈴木健太
『旅の手帖』2025年12月号より

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