アイドルタイムとは?削減方法や有効活用する方法を解説
業務が少なく手待ち時間が発生している状態である「アイドルタイム」。飲食業や小売業などの業種で起こりやすい傾向にあります。アイドルタイムを放置すると、人件費が無駄になったり従業員のモチベーションが低下したりするなどのデメリットがある一方で、従業員の教育や設備メンテナンス、集客活動などに役立てることもできます。
この記事では、アイドルタイムの削減方法と有効活用法について詳しく解説します。
アイドルタイムとは
アイドルタイムとは、直訳すると「遊休時間」または「無作業時間」を意味し、 ビジネス領域では業務がまばらで暇な時間帯を指します 。本来業務に従事すべき時間であるにもかかわらず、仕事が発生しない、または業務量が減少することで、従業員が労力を持て余しているという状況です。
このような時間は、飲食業、小売業、サービス業、製造業といった業種で多くみられます。具体的には、飲食店におけるランチのあと、ディナーが始まるまでの時間帯や、製造業での材料の入荷待ちや機械メンテナンスによる作業停止時間などが挙げられます。
逆に、多くの業務が集中し稼働率が高い時間帯は「ピークタイム」と呼ばれています。例えば、飲食店では昼食や夕食のピーク時に多くの顧客が訪れ、従業員がフル稼働している状況のことです。
アイドルタイムが発生しやすい業種・業態
顧客のニーズにあわせて業務を行う業種や業態では、アイドルタイムが生じやすいといえます。特に、需要の予測が難しい業種において、アイドルタイムの発生頻度が高くなります。具体的な例は以下のとおりです。
飲食店
飲食業においては、モーニング、ランチ、ディナーのピークタイムの合間にアイドルタイムが生じやすくなります。加えて、大雨や猛暑といった天候、来店に影響を与える時間帯、近隣でのイベントや交通規制により顧客の流入が阻害される時間も影響します。小売業
小売業では、開店直後や閉店間際、平日の日中など、顧客の来店が少なくなり、アイドルタイムが生じやすい傾向にあります。特にコンビニエンスストアにおいては、通勤・通学時間帯や昼食時、帰宅時間帯などのピークタイムの合間にアイドルタイムが生じます。サービス業
特に美容院やエステ、整体など予約制のサービスにおいては、予約が入らない時間帯が存在します。また、予約の変更やキャンセルもアイドルタイムの要因です。さらに、旅館やホテルでは最終チェックインからチェックアウト開始までの間に宿泊者の受け付けがないため、アイドルタイムが増加する可能性があります。製造業
製造現場においては、季節的な閑散期や生産調整が計画される際、段取り替えの前後にアイドルタイムが生じることがあります。さらに、材料や工具の待機、予期せぬ停電や設備の故障といった偶発的な要因も影響を及ぼします。
アイドルタイムのデメリット
ここでは、アイドルタイムがもたらす3つの主なデメリットを解説します。
コストが増える
アイドルタイムが発生することで、その時間に関する人件費が無駄になる場合があります。例えば、時給1,000円の従業員が1日1時間のアイドルタイムを持つ場合、1ヶ月の営業日数を25日とすれば、月間で25,000円の人件費が浪費されることになります。従業員が多い企業や、アイドルタイムが常に見られる企業にとって、その損失は膨大な額となります。
従業員のモチベーションが下がりやすい
アイドルタイムが多い職場では、 従業員が自らの仕事の意義を見失い、モチベーションが低下しやすくなる でしょう。また、スキルアップの機会が減ることで、成長実感が得られず、仕事に対するやりがいも薄れてしまいます。モチベーションが低い従業員がいると、業務効率が低下し生産性が落ちたりミスが生じやすくなったりします。さらに、優秀な人材は、やりがいのある職場を求めて転職する可能性が高くなります。
サービスの質が低下する恐れがある
アイドルタイムが常態化すると、 従業員の仕事に対する緊張感が薄れ、接客や業務がおろそかになりやすい でしょう。これにより、顧客満足度の低下や顧客の流出を引き起こしてしまう可能性があります。特に、飲食業や小売業、サービス業など、顧客との接点が多い業態では、サービスの質が売上に直接関係するため注意が必要です。
また、前述した従業員のモチベーションの低下も、サービスの質を損なう一因となり得ます。モチベーションが低下している従業員は、業務への関与が薄れ、顧客サービスへの姿勢にも悪影響を及ぼす可能性があるからです。
アイドルタイムの削減方法
ここでは、アイドルタイムを削減するための具体的な方法を2つ紹介します。
業務プロセスの見直し
まずは業務プロセスを見直し、無駄な作業を省き、より効率的な業務手順に置き換えることが重要です。例えば製造業においては、作業工程を見直し運搬距離や検査手順を最適化することで、手待ち時間を短縮できるでしょう。段取りを改善し機械の稼働率を向上させることも有効です。このように 業務内容を再構築し、不要なタスクを排除する ことで、アイドルタイムを減らせる可能性があります。
リソース配分の最適化
アイドルタイムを削減するためには、リソース配分の最適化も重要です。 需要の変動にあわせて、人員や設備を柔軟に配置 することが求められます。具体的には、発生しているアイドルタイムを利用して、従業員に休憩時間をとってもらったり、ほかの業務に回ってもらったりといった手段が考えられます。
このような対策を講じてもアイドルタイムが発生する場合は、従業員の数や勤務時間を調整するなどシフト自体の見直しが必要です。人材配置の最適化はコスト削減だけでなく、従業員の負担軽減にも寄与します。また、製造業などでは生産計画を踏まえてアイドルタイムの発生タイミングを予測すると、事前に最適なリソース配分を組むこともできるでしょう。
アイドルタイムを有効活用する方法
アイドルタイムは、適切に活用することで企業の生産性向上や競争力の強化に結びつきます。そして、アイドルタイムを活用すれば、営業終了後の作業負担を減らすことも可能です。以下に、アイドルタイムを有効に活用するための具体的な5つの方法を紹介します。
ピークタイムに備えて準備をする
アイドルタイムは、ピークタイムの準備を行うための絶好の機会です。この時間を有効に活用することで、円滑なサービスの提供ができ、顧客満足度の向上に繋がります。飲食店の場合、料理の下ごしらえや店内の清掃を行うことで、ピークタイムにお客さんが快適に過ごせる環境を整えられます。
また、在庫の確認や補充、日常業務の整理をこの時間に実施することで、ピークタイムにおける在庫切れや業務の漏れといったトラブルを防げます。アイドルタイムはただの待機時間ではなく、次のピークに向けた貴重な準備時間として活用していきましょう。
設備や店舗のメンテナンスを行う
アイドルタイムを利用して設備のメンテナンスを行うことは、トラブル防止や製品の品質向上において重要です。日常的にこまめなメンテナンスを行うことで、設備の不具合を未然に防ぎ、安定した生産体制の維持が可能です。
例えば、製造業において設備の点検や修理を行うと、生産ラインの停滞を防ぎつつ生産効率を維持・向上させることができます。また、小売業や飲食業において、アイドルタイムを店舗の清掃や美化にあてるのもよいでしょう。
従業員の教育や研修を実施する
アイドルタイムを従業員教育や研修に活用することも効果的です。従業員のスキル向上は、企業の生産性向上や競争力の強化に貢献します。また、従業員のモチベーション向上や定着率の改善も期待できるでしょう。
アイドルタイムを活用して行える教育には、接客のロールプレイやクレーム対応のシミュレーションなどが含まれます。このようなスキルアップの機会を積極的に設けることにより、従業員のサービス品質を向上させ、最終的には顧客満足度や売上の増加に繋げられます。
採用や集客活動に取り組む
アイドルタイムを採用や集客活動に活用することで、売上の増加や顧客基盤の拡大を目指せます。特にSNSを活用したアプローチは、短い待ち時間を生かして効率的に行うことが可能です。
具体的には、日常的に料理の写真や店舗の雰囲気をスマートフォンで撮影し、ストックしておくという方法があります。それに紹介文やコメントを付け加え、アイドルタイム中に投稿するだけで簡単に行えます。また、メッセージや投稿に対するコメントの返信も、基本的にはアイドルタイムに行うといいでしょう。これにより、効率的にSNSを運用し、集客につなげることが可能です。
新たな経営手法や業務受注を始める
アイドルタイムを利用して新たな経営手法や業務受注に取り組むのもひとつの戦略です。例えば、飲食業などの店舗を運営する企業では、アイドルタイムをテイクアウト営業に活用することで、売上の拡大を図れます。
また、製造業の場合は既存の設備を用いて新しい生産や加工の受注を検討するのも有効です。このように、アイドルタイムを効果的に活用して新規事業を展開することで、新たな顧客層の獲得や売上の増加につなげられます。
アイドルタイムへの対策事例
アイドルタイムを新たな事業やサービス展開に活用するための施策の具体例をいくつか紹介します。アイドルタイムを効果的に活用しながら、ビジネスチャンスを拡大する取り組みを積極的に試してみてください。
平日の昼間限定メニューや割引キャンペーン
平日のランチとディナーの時間帯の間に「アフタヌーンティーセット」といった限定メニューや「ハッピーアワー」といった割引キャンペーンを実施することで、来店の動機を生み出せます。
空席をテレワークスペースとして貸し出す
飲食店の空席をテレワークスペースとして提供することで、ビジネスパーソンの集客が期待でき、アイドルタイム中の売上向上にも寄与します。
イベントやワークショップを開催する
スーパーマーケットなどの小売店において、アイドルタイムにイベントやワークショップを開催することで、顧客の興味を引きつけ、来店者数の増加が期待できます。
時間帯に応じた業態の変更
昼間はカフェとして営業し、夜にはバーに変わるなど業態の変更により、異なる客層にアピールし、収益の最大化を図れます。
まとめ
今回は、業務量が少なく従業員に余裕が生じている状況「アイドルタイム」について、アイドルタイムが引き起こすデメリット、アイドルタイムが発生しやすい業種の具体例、効果的な活用方法や施策を紹介しました。
アイドルタイムをピークタイムに向けた準備や新たなサービスの提供に活用することで、生産性や売上の向上が期待できます。この記事を参考に、ぜひアイドルタイムを有効に活用する方法を検討してみてください。
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