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イチロー氏のバット登場 24年ぶりシード獲得の進学校 教えを未来へつなぐ特別な一日

Shizuoka

親善試合では富士高校野球部の部員が審判やボールボーイなどを担当(富士高校野球部提供)

■富士高校が学童野球チームを招待 親善試合と野球教室

元メジャーリーガーのイチローさんが指導に訪れた学校として知られている静岡県立富士高校野球部が5月4日、県東部の学童野球チームを招いた「第2回富士高ベースボールフェスタ学童野球親善試合」を開催した。親善試合の進行は野球部員が担い、野球教室ではイチローさんから届いたバットを参加した子どもたちが手にする時間も設けられた。

【写真で見る】野球振興に力を入れている富士高校 昨年の同じ時期にもフェスタ開催

富士高校は今年の春季高校野球静岡県大会でベスト16に入り、24年ぶりに夏の静岡大会のシード権を獲得した。県内屈指の進学校による快挙達成から約2週間、今度は地域貢献活動で県内野球界の話題となった。

富士高校野球部は3年前から、野球振興に力を入れている。三島南高校で長年野球を通じた地域貢献活動を続けてきた稲木恵介監督が富士高校に赴任したことがきっかけだった。

稲木監督は、今では全国に広がっている園児や小学生を対象にした高校球児による野球教室を先駆けて開催してきた。富士高校に着任後は、野球教室と勉強会を組み合わせたイベントやバッティングに特化したイベントなどユニークな取り組みを企画している。

イチロー氏から届いたバットをスイングする学童野球の選手

■イチロー氏から届いたバット 野球教室で小学生がスイング

5月4日に実施したイベントの目玉は「イチローさんのバット」だった。富士高校が野球振興に力を入れていることを知ったイチローさんは2022年12月、高校を訪れて選手を直接指導した。

イチローさんの訪問は野球部で語り継がれているが、指導を受けた部員は今年3月で全員卒業した。稲木監督はイチローさんからの教えが徐々に薄れていくと危機感を抱いた。また、昨年から高校野球に本格導入された低反発バットの影響で、選手のコンタクト率低下に課題を感じていた。そこで、指揮官は関係者を通じてイチローさんに相談。すると、1本のバットが届いたという。

今回の野球教室では、そのバットを参加した小学生が手にする時間をつくった。子どもたちはバットを触ったり、振ったりしながら「重~い」、「打っているところが同じだ」などと声を上げた。稲木監督は小学生に、こう語りかけた。

「イチローさんはメジャーでは体が小さい選手でしたが、体をしっかりと使って自分の力の全てをバットがボールに当たる瞬間に伝えることが大切と話していました。高校生が体の使い方などを教えるので、みんなが今持っている力を全部使えるように意識してください」

野球教室では打撃や守備も野球部員が指導

■特別ルールの親善試合 野球部員だけで運営

野球教室は部員がメニューを考案し、当日は指示やスケジュール管理など指導者や保護者の力を借りずに進行した。親善試合も部員だけで運営した。県東部にある3つの学童野球チームが総当たりとなるように3試合を組み、審判やアナウンス、ボールボーイやバットボーイなどの役割を分担した。

試合は「コールドゲームは適用せず、試合時間は1時間半」、「投手の投球数は1日最大70球」、「選手のリエントリーを認める(回数制限を設けない)」といった独自の規定を設けた。そして、その他のルールとして以下の3つを入れた。

①ベンチ内で罵声・怒声・暴言は厳禁とする

②応援席の聞き苦しい野次も厳禁とする

③保護者は指示された応援席にて観戦し、グランド内へは立ち入らない

今回のイベントには3つの学童野球チームから計59人の選手が参加

■選手は伸び伸びプレー 保護者は微笑ましく応援

こうしたルールは、学童野球の課題を意識した内容となっている。近年深刻な野球の競技人口減少の要因には「起用する選手の固定」や「投げ過ぎによる肩肘の故障」、「指導者による怒声罵声」や「保護者の役割」が指摘されている。今回の親善試合では子どもたちが野球の楽しさを感じ、将来の競技人口を増やすヒントが詰まっている。

実際に子どもたちは笑顔で伸び伸びとプレーし、保護者は応援に集中していた。稲木監督は「普段は保護者が担う役割を高校生が行うことで、子どもたちの様子を微笑ましく応援していました。生徒たちはイベントの内容やタイムスケジュールを掲示して保護者にも分かりやすい工夫をするなど、スムーズにイベントを進めていたと思います」と話した。

富士高校野球部は、イチローさんからの教えを参考にして夏のシード権を24年ぶりに獲得した。そして、直接指導を受けた財産を次世代の子どもたちにも継承している。

(間 淳/Jun Aida)

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