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【2024年度最新】高齢者医療費の実態と負担軽減策とは

「みんなの介護」ニュース

長谷川 昌之

高齢者医療費の現状と推移

高齢者医療費の推移と将来予測

日本の高齢者医療費は年々増加の一途をたどっており、この傾向は2024年度以降も続くと予測され、医療制度の持続可能性に大きな課題を投げかけています。

出典:『令和5年度 医科医療費(電算処理分)の動向』(厚生労働省)を基に作成

このグラフは、2019年度から2023年度までの5年間における高齢者医療費の推移を示しています。

2023年度のデータを見てみましょう。75歳以上80歳未満の医療費が4兆5300億円、80歳以上85歳未満が4兆2839億円、85歳以上90歳未満が3兆3975億円となっています。75歳以上80歳未満の医療費が最も高いことが見て取れます。

将来予測に目を向けてみましょう。厚生労働省のデータによれば、2040年度には医療費全体が92.9~94.7兆円に達する見込みです。この増加傾向の背景には、高齢化の進展や医療技術の進歩によるコスト増、制度改革などの要因があると考えられます。

高齢者医療費の増加は、社会保障制度全体に大きな影響を与える可能性があります。そのため、効率的な医療サービスの提供や予防医療の推進など、様々な対策が検討されているのが現状です。

高齢者人口の増加が医療費に与える影響

日本における高齢者人口の増加は、医療費に多大な影響を及ぼしています。2025年には団塊の世代が75歳以上となり、国民の約5人に1人が後期高齢者になると予測されています。この超高齢化社会により、医療費は2011年度の約39兆円から2025年には約60兆円に達する見込みです。

高齢者人口の増加が与える主な影響は以下の通りです。

医療サービスの需要増加:高齢者は慢性疾患を抱えることが多く、医療を必要とする頻度が高いため、医療サービスの需要が急増します。 医療従事者の不足:高齢者の増加に伴い、医療従事者の需要も増加しますが、少子高齢化により生産年齢人口が減少し、医療従事者の確保が難しくなっているのが現状です。 地域による医療資源の偏在:特に地方では、高齢者が多く住む地域で医療施設が減少し、医療へのアクセスが困難になっているケースがあります。 社会保障制度への影響:医療費や介護費用の増大は、社会保障制度の持続可能性を脅かす要因となり得ます。

こうした影響を踏まえ、効果的な対策や政策が求められています。例えば、予防医療の強化により、高齢者の健康寿命を延ばし、医療費の抑制を図る取り組みが進められています。また、地域包括ケアシステムの構築により、医療と介護を効率的に提供する体制づくりが進んでいます。

さらに、医療技術の革新も重要な役割を果たすでしょう。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用した健康管理システムの導入により、早期発見・早期治療が可能となり、結果として医療費の抑制につながる可能性があります。

高齢者人口の増加は避けられない現実ですが、これらの取り組みにより、高齢者医療費の抑制と質の高い医療サービスの提供の両立を目指しているのです。

高齢者の疾病構造の変化と医療費への影響

高齢者の疾病構造の変化は、医療費に大きな影響を与えており、以下の要因が特に重要であると考えられます。

慢性疾患の増加: 心血管疾患、糖尿病、認知症などの慢性疾患が増加しています。これらの疾患は長期的な医療管理を必要とするため、医療費の増加につながっているでしょう。 医療技術の進歩: 新しい治療法や薬剤の登場により、高齢者が受ける医療サービスの質は向上しています。しかし、同時にこれらの先進的な治療法は高額であることが多く、医療費の増加要因となっているのです。 地域差の影響: 地域によって高齢者の健康状態や医療へのアクセスが異なるため、医療費にも大きな差が見られます。都市部と地方での医療資源の偏在が、全体的な医療費に影響を及ぼしているのが現状です。 介護費用との関連: 高齢者が慢性疾患を抱えることで、自立した生活が難しくなり、介護サービスへの依存度が高まります。これにより介護保険制度への負担も増加し、社会全体の医療・介護費用が増大しているのです。 複数疾患の併発: 高齢者が複数の慢性疾患を同時に抱える「多病」状態が増加しています。これにより、一人当たりの医療費が上昇し、全体の医療費増加につながっているでしょう。

これらの要因を考慮し、高齢者の疾病構造変化に対応した医療制度改革や予防医療へのシフトが求められています。例えば、生活習慣病の予防や早期発見・早期治療に重点を置いた健康診断の充実、健康的な生活習慣を促進するための教育プログラムの実施などが進められています。

高齢者の疾病構造は今後も変化し続けると予想されます。そのため、柔軟かつ効果的な対策を継続的に検討・実施していくことが、医療費の適正化と高齢者の健康増進の両立には不可欠でしょう。

高齢者医療制度の仕組みと2024年度の制度改正ポイント

後期高齢者医療制度の基本的な仕組み

後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者を対象とした日本の公的医療保険制度の一部です。この制度は、高齢者の医療費負担を軽減し、必要な医療サービスを受けやすくすることを目的としています。

制度の主な特徴は以下の通りです。

被保険者の範囲: 原則として75歳以上の方が対象となります。ただし、65歳から74歳の方でも、一定の障がいがあると認定された場合は加入できます。 運営主体: 各都道府県に設置された後期高齢者医療広域連合が運営しています。これにより、地域ごとのニーズに応じた柔軟な運営が可能となっています。 窓口負担割合: 医療機関での窓口負担は、原則として1割です。ただし、一定以上の所得がある方は2割または3割の負担となります。 保険料の構成: 保険料は「均等割額」と「所得割額」の合計で計算されます。2024年度(令和6年度)からは全国平均で月額7082円です。 高額療養費制度: 医療費が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が後日払い戻される仕組みがあります。

出典:『令和5年度 医科医療費(電算処理分)の動向』(厚生労働省)を基に作成

このグラフは、2019年度から2023年度までの5年間における後期高齢者医療制度の医療費推移を示しています。2023年度(令和5年度)の後期高齢者医療制度全体の医療費は14兆6582億円に達しており、そのうち現役並み以外の医療費が13兆7284億円を占めています。

この制度により、高齢者は経済的な不安を軽減しつつ、必要な医療サービスを受けることができるようになりました。また、予防医療の推進により、健康寿命の延伸や医療費の適正化も図られています。

しかし、高齢化の進展に伴う医療費の増加は大きな課題となっています。そのため、制度の持続可能性を確保するための改革が継続的に行われており、2024年度にも重要な制度改正が予定されているのです。

2022年10月からの窓口負担割合の変更内容

2022年10月から、後期高齢者医療制度における窓口負担割合が大きく変わりました。この改正は、現役世代の負担軽減と医療制度の持続可能性を確保するために行われるものです。

改正の中心となるのは、一定以上の所得がある75歳以上の方の窓口負担割合を1割から2割に引き上げる点です。

対象は同じ世帯に課税所得が28万円以上の方がおり、かつ年金収入とその他の合計所得金額が一定額(単身世帯で200万円以上、複数世帯で320万円以上)を超える方です。

この改正により、約20%の後期高齢者が2割負担となる見込みです。ただし、急激な負担増加を防ぐため、2割負担となる方々には配慮措置が設けられています。

具体的には、外来医療費の自己負担増加額を月3000円までに抑える仕組みが2025年9月30日まで適用されます。同一月内に同じ医療機関で受診した場合、負担増加額が3000円を超えても、それ以降は1割負担分のみの支払いとなるのです。

この制度改正は、高齢者医療の質を維持しつつ、世代間の公平性と制度の持続可能性を確保することを目指しています。しかし、個々の状況に応じて影響は異なりますので、自身の状況をよく確認し、必要に応じて地域の窓口や医療機関に相談することが大切です。

高齢者の医療費負担限度額の改定と影響

2022年度の後期高齢者医療制度改正では、医療費負担限度額の見直しも行われます。この改定は、高齢者の医療アクセスを確保しつつ、制度の持続可能性を高めることを目的としています。

改定の中心となるのは、高額療養費制度の見直しです。この制度は、医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。2024年度からは、外来のみの場合の月額上限が18000円に、外来と入院を合わせた場合の月額上限が57600円に設定されます。

さらに、慢性疾患などで継続的に医療を受ける必要がある高齢者のために、外来医療費の年間の負担上限額も設定されます。これにより、長期的な治療を要する高齢者の経済的負担が軽減されることが期待されます。

この改定により、高齢者の方々は必要な医療を受けやすくなる一方で、一部の方々にとっては負担が増加する可能性もあります。しかし、制度全体としては、世代間の公平性を保ちつつ、持続可能な医療制度の構築を目指しています。

高齢者医療費の負担軽減策と今後の課題

予防医療と健康寿命延伸の取り組み

高齢者の医療費負担を軽減するためには、予防医療の推進と健康寿命の延伸が重要な取り組みとなっています。厚生労働省は、「健康日本21」という国民健康づくり運動を推進しており、生活習慣病の予防や介護予防に焦点を当てています。

この取り組みの一環として、特定健康診査(メタボ健診)が実施されています。40歳以上75歳未満の方を対象に、メタボリックシンドロームに着目した健康診査を行うことで、生活習慣病の早期発見・早期治療を目指しています。また、各種がん検診の推進も重要な施策の一つです。胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんなどの検診を積極的に受診することで、早期発見・早期治療が可能となり、結果として医療費の抑制につながることが期待されています。

地域の高齢者を対象とした介護予防事業も展開されています。運動機能向上や認知症予防のためのプログラムを提供することで、高齢者の健康維持と自立した生活の継続を支援しています。さらに、一部の自治体では健康ポイント制度を導入し、健康づくり活動に参加するとポイントが貯まる仕組みを設けています。これにより、高齢者の健康意識の向上と自主的な健康管理の促進を図っています。

これらの予防医療と健康寿命延伸の取り組みは、単に医療費の抑制だけでなく、高齢者の生活の質の向上にも寄与しています。健康で活動的な高齢者が増えることで、社会全体の活力が維持され、医療・介護システムの持続可能性も高まるのです。

しかし、これらの取り組みを効果的に進めるためには、高齢者一人ひとりの積極的な参加が不可欠です。そのため、健康づくりの重要性に関する啓発活動や、参加しやすい環境づくりが今後の課題となっています。また、地域差や個人差を考慮したきめ細かなアプローチも必要でしょう。

地域包括ケアシステムによる医療・介護の効率化

地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する仕組みです。このシステムの構築により、医療と介護の連携が強化され、効率的なサービス提供が可能となっています。

このシステムの中核を担うのが、在宅医療の推進です。病院から在宅への円滑な移行を支援し、不必要な入院を減らすことで、医療費の抑制につながっています。同時に、高齢者にとっては住み慣れた環境で療養できるというメリットがあります。

また、多職種連携も地域包括ケアシステムの重要な特徴です。医師、看護師、介護福祉士、ケアマネージャーなど、様々な専門職が連携してケアを提供することで、高齢者一人ひとりのニーズに合わせた、きめ細かなサービスが可能となっています。

さらに、介護予防・日常生活支援総合事業の実施も進んでいます。この事業は、高齢者の社会参加を促進し、介護予防を図ることを目的としています。例えば、地域のボランティアや民間企業などの多様な主体による生活支援サービスの提供や、高齢者自身が担い手となって活躍する場の創出などが行われています。

認知症施策の推進も地域包括ケアシステムの重要な柱です。認知症の早期診断・早期対応の体制を整備し、認知症の人とその家族を地域全体で支援する取り組みが行われています。認知症カフェの設置や認知症サポーターの養成など、地域の実情に応じた様々な取り組みが展開されています。

出典:『令和5年度 医科医療費(電算処理分)の動向』(厚生労働省)を基に作成

このグラフは、2023年度における高齢者に多い疾患の医療費を示しています。循環器系の疾患が6兆1945億円と最も高く、次いで新生物(がんなど)が5兆797億円、筋骨格系及び結合組織の疾患が2兆7226億円となっています。この結果から、地域包括ケアシステムにおいては、特にこれらの疾患に焦点を当てた予防や管理が重要であることがわかります。

地域包括ケアシステムの構築により、医療・介護サービスの重複を避け、適切なサービスを適切なタイミングで提供することで、全体的な医療・介護費用の効率化が期待されています。しかし、その実現には地域の実情に応じた柔軟な対応や、多職種間の緊密な連携、そして何より地域住民の理解と協力が不可欠です。

高齢者の医療費控除制度の活用方法

高齢者の医療費負担を軽減する方法として、医療費控除制度の活用が挙げられます。この制度は、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を行うことで所得税が還付される仕組みです。

医療費控除を受けるための対象となる医療費は幅広く、病院や薬局での支払いはもちろん、介護保険サービスの自己負担分、医療用品の購入費なども含まれます。

控除額の計算方法は以下の通りです。

1.その年に支払った医療費の総額から、保険金などで補填される金額を差し引く

2.所得金額の5%か10万円のいずれか低い方の金額を差し引いた額が、医療費控除額

申告の際には、「医療費控除の明細書」の作成が必要です。そのため、医療費の領収書や明細書は大切に保管しておくことが重要です。また、特定の医薬品購入費用については、通常の医療費控除とは別枠で控除を受けられる「セルフメディケーション税制」も存在します。

ただし、制度の詳細や申告方法は年々変更される可能性があるため、最新の情報を確認することが大切です。不明な点がある場合は、税務署や専門家に相談することをお勧めします。

高齢者医療費の問題は、個人の努力だけでなく、社会全体で取り組むべき課題です。医療費控除制度の活用を含め、様々な負担軽減策を効果的に組み合わせることで、高齢者が安心して必要な医療を受けられる環境づくりを進めていく必要があるでしょう。

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