チェッカーズのボーカル 藤井フミヤ!ファンとの関係性は40年間 “永遠のBOYS & GIRLS”
40周年ツアーファイナル、111回目の武道館、円形ステージに立った藤井フミヤ
2023年からスタートした藤井フミヤデビュー40周年のアニバーサリーツアーは47都道府県、61ヶ所で敢行され、すべての会場がソールドアウト!そして、今年の6月9日にはこの8ヶ月にわたるロングツアーのファイナル『40th Anniversary FINAL in 日本武道館』で自身111回目となる武道館のステージに立った。
この日の武道館は360度、全ての方位からバンドを正面に捉えることができる円形ステージだった。これを日本で初めて試みたのがザ・チェッカーズ(以下:チェッカーズ)だ。それは、今から37年前、1987年11月16日、“GO TOUR” 初日の大阪城ホール。“GO TOUR” といえば、彼ら初のセルフプロデュース・アルバムとしてリリースされた名盤『GO』を引っ提げてのツアーだった。
チェックの衣装を脱ぎ捨て、メンバーが革ジャンで佇む『GO』はアルバムジャケットに映し出されたそのヴィジュアルが象徴しているように、ブリティッシュビートを下敷きにしながら独自性を高めた硬派なアルバムだった。しかし、そこには、“やりたいようにやってやる!” というようなファンを突き放した印象は全く感じられず、逆に “新しい世界を見せてあげるよ” とファンの手を優しく引っ張り、連れ出すような感覚があった。
そして、それを体現していたのが “GO TOUR” の円形ステージだった。今の自分たちのすべてを見て欲しいというファンファースト。まずはファンを楽しませたい、そのために自分たちは何をすべきか? という部分が念頭にあったのではないか。
デビューから40年、全くブレていない藤井フミヤのスタンス
チェッカーズのデビューから40年間歌い続けている藤井フミヤのそんなスタンスも、現在に至るまで一寸もブレていない。ファンの手をそっと掴むように、新しい世界へ連れ出す。
それは、解散後のソロ第1作となった「TRUE LOVE」の時も感じたし、今回の武道館だってそうだ。ソロになってからの藤井には、チェッカーズ時代のセクシーさを加味した伸びやかな歌声に、しなやかさと普遍性が兼ね備えられた。一緒に年を重ねたファンの生活に優しく溶け込んでいくようなしなやかさと普遍性を併せ持ち、夢を見続けさせてくれる。
永遠にロックンロールの人、藤井フミヤ
それと同時に藤井は、永遠にロックンロールの人だなと思う。95年には、アルバム『R&R』で、敬愛するTHE MODSの「TWO PUNKS」に潜む物語性を噛み締めながらカバー。そして、デビュー20周年の2003年には、キャロルのトリビュートアルバム『MY CAROL』をリリース。ここに収録され、オリジナルに忠実にレコーディングされた「涙のテディ・ボーイ」からは、自身のルーツに対する愛情の深さが顕著に伝わってくる。
そして、好きで好きでたまらないロックンロールをどのように新しい形でアウトプットしていくかという部分に注力していったのがチェッカーズ時代の藤井である。ロックンロールを歌うシンガーには、エルヴィス・プレスリーの持つセクシーさと、バディ・ホリーのチャーミングさ、そしてジョニー・キャッシュから感じる哀愁が大切だと思うのだが、この三要素を満たしているのが藤井フミヤでもある。
売野(雅勇)=芹澤(廣明)時代の楽曲でいえば、「哀しくてジェラシー」「星屑のステージ」「ジュリアに傷心」の “哀愁3部作” や珠玉のポップナンバー「涙のリクエスト」や「あの娘とスキャンダル」で変化する、声の質感にその印象を感じ取ることができるだろう。
「GO」以降で発揮されていったシンガーとしての魅力
後期の楽曲でいえば、91年にリリースされた9枚目のオリジナルアルバム『I HAVE A DREAM』に収録された「How're you doing Guys?」が最高だ。ロックンロール・クラシックの大名曲で、イギリスの女性シンガー、ルルが1964年にリリースした「シャウト」にインスパイア。深化したなめらかなバンドサウンドの中に初期騒動を潜ませたチェッカーズならではのグルーヴと絡み合うその歌声は、セクシーでチャーミング。そしてどこか哀愁を感じずにいられないロックンロールシンガーの本領があった。
やはり、チェッカーズ時代の藤井の魅力は『GO』以降で発揮されていった。「♪未来に感じ 濡れてくれ」と歌う「NANA」はひとつの到達点であったと思うし、『GO』のオープニングに収録された「REVOLUTION 2007」で、リスナーの手をそっと掴んで未来に連れ出すような臨場感は、誰も真似することができない。
先日の武道館公演は、数多くのチェッカーズナンバーが奏でられ、過去と未来を行き来しながらそこに潜む普遍性が会場に染み込んでいった。そして、ハイライトはやはり、この「REVOLUTION 2007」だった。数あるシングルヒットではなく、37年前にリリースされたアルバム収録曲にすぎないが、本人にとっても非常に重要な曲であることが明白だ。そして、そこに懐かしさは微塵もなく、今もそっと手を掴むように、ファンの心を未来へと連れ出す。だから藤井フミヤとファンとの関係性は “永遠のBOYS & GIRLS” でいられるのだろう。