平塚で牧場さんぽ。『加藤さんちの牧場』『片倉牧場』を巡り、とれたての恵みを味わう散歩コース!
平塚市の令和6年版行政概要によると乳牛17戸、肉牛3戸、豚4戸と畜産農家の数は県下随一。小田急伊勢原駅~平塚駅まで縦断すれば、心安らぐ牧歌的風景と、とれたての牧場の恵みが待っていた。
絶品肉質の秘密はエサの配合にあり「加藤さんちの牧場」
現代表・加藤征弘さんの父が本格的に養豚をはじめたのは半世紀前。「サツマイモ・大麦をメインにミネラル成分を配合したエサと、不純物を除去した活性水で育てているので、脂がくどくなく甘みがある。肉質もやわらかいんです」。「湘南うまか豚」と名付けられたこの豚肉は養豚所併設の直売所(☎0463-58-3658)で買えるほか、市内にある『黒豚とんかつだいち東八幡店』でも週末限定で提供。
市内で唯一ジャージー牛を飼育!「片倉牧場」
戦後、初代が酪農業を始め、2000年に3代目の片倉幸一さんが継承。「その時からジャージー牛を2頭飼いはじめ、今は17頭。ウチの田んぼの裏作で育てた牧草を、エサに与えています」。子供たちに牧場の楽しさ・大変さを伝えるため、地元小学校の搾乳体験も受け入れている。「一般の方の見学は敷地外からになるけど、手が空いてたら中も案内しますよ~」。☎090-5566-4523
牧場の幸を巡る散歩コース~平塚で育まれる味わいと循環に触れて
伊勢原駅からバスで10分ほどゆられると、車窓がチェーン店から市街地、田園風景へと変わった。小高い丘と緑に囲まれた郊外に「加藤さんちの牧場」はある。
「祖父もそうでしたが、この辺の農家は昔から豚を1、2頭飼っていました。ウチは東に丘があり日照時間が少ないので、農作物より養豚が向いてたんです」と加藤征弘さん。豚舎からは『ブォ~』という大きな鳴き声。カルシウムとカリウムなどを含んだ粉末まで飼料に混ぜ、育てた“湘南うまか豚”は元気いっぱいだ。直売所に並ぶ精肉は、厚木の食肉センターで処理された塊肉を加藤さん自身がすぐにさばくため、新鮮そのもの。白モツやハツといった鮮度勝負の内蔵関連もいち押し!
見ための美しさが鮮度を証明『加藤さんちの牧場直売所』
さばきたての豚肉・モツを豚舎の前で販売。人気は肩肉ロースや光沢美しい新鮮なレバーなど。レバカツなど買ってすぐ味わえる総菜も販売している。
加藤さんちの牧場直売所
住所:神奈川県平塚市岡崎5504-2/営業時間:11:00~18:00/定休日:日~木/アクセス:小田急電鉄小田原線伊勢原駅からバス8分の「王御住グランド前」下車、徒歩6分
次の目的地へは歩いて35分ほど。道中は丹沢の山景が広がり気持ちがいい。田園の中に浮島のように見えるのが「片倉牧場」だ。牧場主の片倉幸一さんいわく「平塚市の新幹線から北側一帯は農振農用地で、開発の制限があった。だから牧場が残ってるんです」。片倉さんは市内酪農家が結成した「角笛会」で、当時会長も務めていた。あさつゆ広場に働きかけ同会の牧場8軒の生乳を仕入れてもらい、ジェラートやソフトクリームとして販売してもらうことに。
「都市近郊酪農の良さは、消費者との距離の近さ。ジャージー牛を飼い始めたのも、地元の子たちに白黒以外の牛さんもいることを知ってほしかったからなんです」
近年は近所で肉牛を飼育する「矢野牧場」と、新たな取り組みも。
「肉牛の受精卵を、ここの乳牛に移植し妊娠させることで母牛から搾乳できる。生まれた子牛は『矢野牧場』が肉牛として育てる。地元で循環が生まれるんです」
再度30分ほど歩き、『あさつゆ広場』へ。片倉さんのジャージー乳のジェラートは濃厚かつ後味すっきり。発汗した体に染み渡った。
平塚の大地の恵みがここに集結『あさつゆ広場』
平塚をはじめJA 湘南管内の野菜・米、果実・加工品・生花を販売。夏は種なしピーマン、ズッキーニなどが並ぶ。加藤さんちの牧場の豚肉もここで購入可能! 『あさつゆ工房』(冬期以外は10:00~16:30)では片倉さんのジャージー乳を使ったジェラート(シングル400円)も。
あさつゆ広場・あさつゆ工房
住所:神奈川県平塚市寺田縄424-1/営業時間:9:00~17:00(『あさつゆ工房』は冬期以外は10:00~16:30)/定休日:水(不定あり)/アクセス:JR東海道本線平塚駅からバス20分の「平塚養護学校前」下車、徒歩5分
散歩土産に!ジャージー乳の洋菓子を『Domine joie(ドミネ ジョワ)』
平塚の米や片倉牧場のジャージー乳など地元食材を大切にする店主・石田時光さん。「ジャージー乳はコクがありつつ、風味にクセがなくほかの素材をじゃましない。菓子作りに最適なんです」。写真の洋菓子はすべてジャージー乳を使用。シュークリーム360 円、湘南ジャージープリン420 円など。
Domine joie(ドミネ ジョワ)
住所:神奈川県平塚市明石町26-6 中央ビル1F/営業時間:10:00~18:00/定休日:水、第1・3・5火/アクセス:JR東海道本線平塚駅から徒歩5分
取材・文・撮影=鈴木健太
『散歩の達人』2025年7月号より