2時間おきのミルクでつなぐ子ネコの命…殺処分ゼロの背景にある新しい家族へのバトン
さまざまな事情で飼い主の手から離れ、保護されるネコたちがいます。
そうした小さな命を守り、新たな家族の元へと繋ぐ取り組みを見つめました。
連載「じぶんごとニュース」
かつては札幌市だけで年間2000匹以上が殺処分
大きな目で見つめる、愛らしい姿に、誰もが釘付け…。
6月14日、札幌市の動物愛護管理センター『あいまるさっぽろ』で開かれたのは、新しい飼い主へとつなぐ、保護ネコの譲渡会です。
80人以上が訪れました。
入院や引っ越しなどの事情で放棄されたり、飼い主が孤独死したり…。
多頭飼育崩壊の家から、保護されたネコもいます。
そんな行き場をなくしたネコたちを救い出し、安心して暮らせる飼い主へと託す―。
札幌の保護団体『ねこたまご』が活動を始めて、14年になります。
併設されたカフェは、ネコにとって、新たな飼い主と出会う大切な場所です。
ねこたまごの活動が始まる前、札幌市では毎年、2000匹を超えるネコが殺処分されていました。
多くは母乳が必要な、生まれたばかりの子ネコ。
“小さな命を救いたい…”その思いから活動は始まりました。
24時間見守る“ミルクボランティア”
『ねこたまご』が保護した、生後1か月に満たない2匹。
名前は“三日月”と“新月”です。
お世話をする玉田美紀子さんは“乳飲み子ボランティア”と呼ばれるメンバーの1人です。
生まれたばかりの子ネコはしばらくの間は食事や排せつができず、2~3時間おきにミルクをあげる必要があります。
「子ネコは1時間起きて2時間寝るみたいな感じ。ミルクを飲まないとか、薬を嫌がるとか、あと下痢が一番大変ですね。あと私も寝不足になるのが大変」
ネコの保護活動に取り組む『ねこたまご』のボランティアスタッフは、約100人。
15人が“乳飲み子ボランティア”として、離乳期を迎えるまでの約1か月間、毎日24時間、小さな命と向き合うことになります。
玉田さんの手を離れると、次は、離乳期の預かりボランティアへ引き継がれます。
難しい生後間もない子ネコたちの対応
札幌市の動物愛護管理センター『あいまるさっぽろ』を取材した日、19匹のネコが収容されていました。
収容されているのは、多頭飼育崩壊の家から救出されたネコもいれば、さまざま事情から飼い切れなくなったと、飼い主やその家族らが、ここに連れてくることも…。
ただ、病気やけがで、回復が望めないと判断されない限り、以前のような殺処分は行われていません。
そうした中、対応が難しいのが、生後まもない子ネコたちです。
住宅の物置にネコが赤ちゃんを産んで、お母さんネコがどこかに行ってしまった…そんな連絡が入ることもあるといいます。
ネコの繁殖期は、春から秋にかけて。
一度に4匹から、多ければ8匹ほど産むとされます。
以前は、こうしたネコたちで施設があふれることもありました。
そして今も、不妊手術を受けさせず手に余したり、多頭飼育崩壊へ陥ったり…。
飼い主の無責任な対応の結果、収容されるケースも少なくありません。
しかし、人の手が24時間必要な対応は、自治体の施設では困難です。
そうしたときに助けを求めるのが保護活動に取り組む団体なのです。
たくさんの人の手で小さな命つなぐ
札幌市では『ねこたまご』と連携。
ほかの保護ネコの団体とも情報を共有し、小さな命を守っています。
生後まもない子ネコに特化して、保護活動を続けて14年目。
『ねこたまご』では、これまで2200匹を超えるネコを保護して、1900匹ほどが、新しい飼い主に巡り会えました。
新しい飼い主の候補もこの日、『ねこたまご』を訪れていました。
不妊手術やワクチンの接種、譲渡を受ける際の年齢制限のほか、引き取った後、一定期間、ネコの様子を報告するなど、飼い主になるためにはいくつもの約束事があります。
行き場を失うネコを少しでも減らしたい。その一心で、活動は続けられています。
『ねこたまご』の後藤志帆代表理事は「動物を迎えて、最後まで飼ってあげられるかどうかをきちんと考えてから、家族として迎える。これだけを徹底していただきたいと思っています」と力をこめます。
たくさんの人の手が結ばれ、ネコたちの小さな命をつないでいます。
ボランティアから見える動物を飼いきる責任
環境省の集計によると、全国各地の自治体では20年前の2005年度は、引き取ったネコ22万6702匹が殺処分されていました。
それが2023年度、6899匹にまで減っています。
こうした背景には、法律の改正が重ねられたこと。
そして『ねこたまご』のような保護団体と自治体の連携が深まっていることなどの理由があります。
札幌市では「殺処分ゼロ」ということですから「積極的に保護猫を引き取ろう」という意識も、たくさんの人に広がっているとみられます。
そして、子ネコと向きあうボランティアの方の取り組みをみていると、改めて動物を飼う事の大変さ、飼いきることの責任にも気づかされます。
当たり前のことですが、人の手を無くして生きられない小さな命を最後まで守っていく、その覚悟が必要です。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年6月27日)の情報に基づきます。