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会費も参加も募らない町内会。令和に町内会を立ち上げた発起人が考えるこれからの地域コミュニティとは?【宮城県仙台市】

ローカリティ!

シティタワーあすとレジデンシャル町内会発起人の相澤寛人(あいざわひろと)さん

毎月の会費や持ち回りの役員業務、会議やイベントへの出席など、町内会にデメリットを感じる人が多くなっています。そんな中、会費ゼロ、個人情報取得なし、参加強制なしの町内会があります。宮城県仙台市のマンション住人で組織する「シティタワーあすとレジデンシャル町内会」です。同町内会を立ち上げた発起人の相澤寛人(あいざわ ひろと)さんは、強制しない、ゆるやかにつながることがこれからの町内会運営に必要だと話します。

加入者を募らず、町内会費を無料に

「シティタワーあすとレジデンシャル」は世帯数391の大きなマンションで、子育て世代が多く入居しています。このマンションの保守管理を行う管理組合とは別に、コミュニティ活動を行うのが町内会です。会費は無料。町内会の加入世帯数に応じて市からもらえる奨励金を主な財源として活動しています。

「私自身、毎月たった数百円でも町内会費を払うことに抵抗感があったんです」と、正直な気持ちを漏らす相澤さん。町内会費を無料にするためにどうしたらいいかと考えている中で、仙台市が示す「町内会活動の手引」中にある「明確な非加入の意思表示をした方以外は、加入の意思があるものとします」という一文に注目しました。

町内会立ち上げにあたり、相澤さんは「加入を希望する人」ではなく、「希望しない人」に意思表示をしてもらうことにしました。これにより、特に意思表示をしなかった無関心層も加入扱いとし、市の奨励金を多く得ることで、会費無料を実現しています。

町内会が企画したクリスマスイベントの様子

個人情報の取得なしで、実は成り立つ町内会運営?

町内会運営において課題となりやすい個人情報の取り扱い。同町内会では、そうした課題が出ないように住民の個人情報は取得せず、イベントをやるときは部屋番号だけで申し込みを受け付けているそうです。住民にアプローチするには部屋番号さえわかっていればなんとかなると相澤さん。運営の省力化を図るとともに、若い人も参加しやすいコミュニティのあり方を模索しています。

「これまで町内会運営を頑張ってこられた皆さんは、従来のやり方にどうやったら若い人を巻き込めるかというのを一生懸命考えています。でも、そもそも若い人が参加しづらいやり方になっているのではないかと私は思っていて、ここでは今のニーズに合わせたやり方にしていきたいと思っています」

クリスマスイベントでは、近隣の音楽教室が主催するオーケストラが演奏を行った
フードトラックも出店。地域資源とマンション住人をつなぐことも町内会の役割だと、町内会発起人の相澤さん

つながりを求める人も、そうでない人も共存できる町内会

同町内会はこれまで、七夕やハロウィン、クリスマスなど、季節を感じることができるイベントを企画、運営。役員の他に、それぞれの取り組みごとに立候補者で実行委員会を組織しています。実行委員会には、つながりを求めて参加したという人や、イベント企画に興味を持った小学生も参加したそうです。「町内会に加入しているみなさんには強制もしませんし、絶対に参加してくださいということも言いません」。相澤さんは、強制しない代わりに、住民が「やってみたい」「参加してみたい」と思えるような、ターゲットを意識した企画をすることが重要だといいます。

このように、住民の自主性を尊重した運営を行う同町内会ですが、マンションは転勤や住み替えも多いため、コミュニティ活動に積極的な人ばかりではありません。そうした人たちに対しては、コミュニティの活性化がマンションの資産価値向上につながることをアピールし、活動の意義を訴えています。つながりを求める人もそうでない人も、それぞれのニーズに合わせて共存し、恩恵を受けられる。そんな柔軟な運営が、これからの町内会には必要なのかもしれません。

ターゲットを明確にして、その人達に楽しんでもらえるかを意識しながら企画を行っている

濃いつながりからゆるいつながりへ。これからの地域コミュニティとは?

「ここはマンションなので、何かあったときには隣の人よりも1階の管理人さんのところへ助けを求めるというのが、実際の感覚かなと思うんです」。相澤さんは、マンションにおけるご近所の感覚をこのように話します。気密性の高い集合住宅では、隣の住人のことさえよく分からないことがあります。そんな中でコミュニティが果たす役割とは何でしょうか?

「マンション全体として緩やかにつながっている感があればいいのかなと思っています」と相澤さん。イベントで顔を合わせた人とは、普段すれ違ったときにあいさつがしやすくなるそうです。顔見知りがいる中に自分も住んでいる、その程度の緩やかなつながりでも、よりどころとなる安心感があるといいます。

かつての地域コミュニティは、冠婚葬祭の手伝いや金銭の援助など、さまざまな場面で住民のニーズに応えるインフラであり、それは濃密な人間関係によって支えられていました。しかし現在、多様なニーズに応えるのはそれぞれの専門家です。地域コミュニティの役割も変化し、より気軽で緩やかなつながりこそが求められているのかもしれません。

相沢由介

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