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【静岡市美術館の「珠玉の東京富士美術館コレクション 西洋絵画の400年」展】どこを見ているのか

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けする“1分で読める”アート&カルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区の静岡市美術館で7月26日に開幕した「珠玉の東京富士美術館コレクション 西洋絵画の400年」から。東京都八王子市の東京富士美術館が所蔵する80点余の西洋絵画を展示。
ルネサンス期以降に描かれた、ギリシャ・ローマ神話やキリスト教の聖書に範を取った歴史画を見ていると、人物の視線が妙に気になってくる。本展で言えば、ベルナルド・ストロッツィ「アブドロミノに奪われた王位を返還するアレクサンドロス大王」だ。

王冠を持った大王の使者。それを前にしたアブドロミノののぞき込むような顔つき。陰影と機微に満ちた男たちの右下で、紅顔の少年がこちらを見ている。都市の城門の鍵をささげ持つ巻き髪の彼は、小首をかしげるようにして鑑賞者を見つめる。

彼の笑みの意味するところは判然としない。ただ、ドラマチックな場面に少しだけ「弛緩」した雰囲気を持ち込んでいる。歴史上の逸話が、「お隣の家で生じたいいこと」に見えてくる。(は)

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■静岡市美術館
住所:静岡市葵区紺屋町17-1葵タワー3階
開館:午前10時~午後7時(月曜休館)
料金(当日):一般1400円、大高生・70歳以上1000円、中学生以下無料
会期:9月23日まで

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