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やすのり先生のキーワード解説(3) おしるし/破水/陣痛<前編>

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やすのり先生のキーワード解説(3) おしるし/破水/陣痛<前編>

新しい命が誕生するまでの道のりは、不思議なことばかり。特にはじめて出産をされる方にとっては、どのようにお産がすすんでいくのか、何が起きるのか、わからないことや不安なことが多いことでしょう。
そこで今回は、慶應義塾大学医学部名誉教授の吉村泰典先生に、分娩までに経験するであろう3つのことをお聞きしました。前編は、おしるしと破水についてお話いただきます。

「おしるし」を経験するのは7~8割

まず、「おしるし」から説明しましょう。簡単に言うと、血の混じった粘液性のおりもののこと。人によって、出血と感じたり、ドロッとしたものの中に血が混じっていると感じたり、感じ方はさまざまです。

これがなぜ出てくるかというと、赤ちゃんの頭が下がってきたときに、子宮の収縮が起こるから。そして、赤ちゃんを包んでいた卵膜とのずれができて、卵膜がはがれる。このときに出血し、産前で増えている粘液と一緒に出てくるのです。

でも、これはお産の絶対的な兆候ではありません。7~8割の方はおしるしを経験しますが、なくても問題ないのです。

おしるしだと思っていたものが、そうでなかった場合のほうが問題です。前置胎盤や常位胎盤早期剥離といった妊娠合併症で起こる出血と区別しましょう。判断の目安は、「出血が多いか」「強い痛みを伴うか」。おしるしの場合は、出血もそれほど多くなく、痛みもなく出てきます。

はじめてのお産だと、おしるしがあるとあわててしまう人もいるかもしれません。けれど、すぐに分娩ということにはなりません。不安な場合は病院に連絡するのがよいでしょう。

「破水」はいよいよ分娩が近いというサイン

今回の2つ目のキーワード、「破水」が起こったら病院に行かなくてはいけません。破水とは、卵膜が破れて羊水が出てくること。卵膜は3層からなっていて、いちばん内側にあるものを「羊膜」といいます。これが、外から菌が入らないように赤ちゃんを守っているんです。だから、破水してしまうとまだ免疫が不完全な赤ちゃんに、外界からもたらされるさまざまな感染症のリスクがあります。そのため、産科の現場では、破水が起こったら48時間以内にお産をしてもらえるように準備をします。

最も理想的なのは、子宮口が全開大(約10cm)になったときに破水が起こること。子宮口が7~8cmで破水するのも正常範囲内。陣痛が次第に間隔を置かずにやってくる過程で破水する場合もありますし、分娩台の上に上がってからということもあります。

陣痛が来る前に起こるものを「前期破水」といいます。これは、だいたい5~10%の割合で起こるので、特段珍しいケースともいえないかもしれません。妊娠37週以降で起こるものです。ただ、子宮内感染と早産につながる可能性があるので、すぐに病院に行くことが求められます。

実は37週未満で起こる破水もあります。これを「早産期前期破水」と呼んでいますが、その場合はすぐ病院に行く必要があります。まだ胎児は小さいですから、お母さんのからだから出て、生きていけるのかどうかということが問題になります。現代の考え方としては、たとえば32週で破水してしまったら、そのあとに陣痛がくることが多いので、自然に任せる形で分娩できるようアプローチします。

これは未熟児治療の進化の賜物。今は「インタクト・サバイバル」、つまり後遺症なく成長できる可能性が非常に高くなっており、日本の周産期医療は世界トップレベルと言われています。

ときどき、「破水と尿の違いがわからないかもしれない」と心配される妊婦さんがいらっしゃいますが、破水のときは、さーっと流れるような感じで液体が出るのでおそらくわかると思います。色は無色透明から乳白色。アンモニア臭のようなにおいもありません。

次回は、陣痛をご説明しましょう。

前編はおしるし、破水についてお話いただきました。後編では「陣痛」について、わかりやすく解説していただきます。

※本記事は、2015年4月15日に公開したものを、読者のみなさまに正しい情報をお届けし、特にはじめてのお産を迎えられる方に安心していただけるよう内容を見直し、2025年7月11日に記事内容を更新いたしました。

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