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このおかし、なんだかおかしい。――「スイーツ」をテーマにしたダークでかわいいガシャポン®『VIRUSWEETS(ウイルスイーツ)』はどうやって生まれた? | 株式会社バンダイ ベンダー事業部インタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

いまSNSを中心に盛り上がってきている『VIRUSWEETS(以下、ウイルスイーツ)』というガシャポンオリジナルのシリーズをご存じですか?

クリームソーダやさくら餅などのスイーツに自我が芽生え始めたという設定の本作は、ジト目でけだるい表情なのに愛らしい表情、髪型から服装まで細かなこだわりが感じられるデザインと造形、ちょっと緩いキャラクター設定などに夢中になる人が続出。2025年5月に開設された公式Xが早くも1万フォロワーを突破するなど、ガシャポンオリジナルの新規IPとしては異例の人気を博しています。

2025年6月にはシリーズ第2弾となる「VIRUSWEETS figure collection ~甘味処~」がリリースされ、SNS上では即日ガシャポンを回す人や、可愛く飾る人などが多く見られました。

そこで本稿では、株式会社バンダイ ベンダー事業部の『ウイルスイーツ』の企画開発担当者にインタビューを敢行! 「甘さ×毒々しさ」というコンセプトの誕生からキャラクターへの落とし込み、クリア素材も使った造形や彩色へのこだわり、今後の夢など様々なお話を伺いました。

※「ガシャポン」は株式会社バンダイの登録商標です。

【写真】話題のガシャポン『VIRUSWEETS(ウイルスイーツ)』ができるまで【インタビュー】

「甘さ×毒々しさ」コンセプト誕生秘話

──「甘さ×毒々しさ」というコンセプトが可愛らしい『ウイルスイーツ』ですが、このキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか?

株式会社バンダイ ベンダー事業部 片岡 小百合(以下、片岡):ガシャポンのコアユーザー以外にも響くような新しいフィギュアシリーズを立ち上げたい、という想いから始まりました。見た目が可愛らしくて、既存のキャラクターに詳しくない人でも思わず手に取りたくなるようなものを作りたかったんです。

また、インテリアトイのように家に飾っても可愛くて違和感のない商品にしたいと考えていたので、ガシャポンのお店以外にもアパレルショップやインテリアショップなどを巡って「あまりフィギュアに興味がない層にも刺さるものは何か」を色々とリサーチしました。

そうして辿り着いた答えが「ただ可愛いだけでなく、少しエッジの効いた要素が含まれているものが良いのではないか」というものでした。「スイーツ」のように普遍的な可愛さを持つ要素に、エッジの効いた「毒々しさ」を掛け合わせるアイディアが出て、幾つかのパターンを検討した結果生まれたのが『ウイルスイーツ』です。

──最初から飾ることも想定していたから、お皿を模した台座が付属しているんですね。

片岡:「スイーツ」というコンセプトがあったので、それに合う形でデザインを進めさせていただきました。

──「スイーツ」以外には、どんなコンセプトの候補がありましたか?

片岡:普遍的なモチーフの案としては、例えば「小動物」などがあったと思います。エッジの効いた要素としては「骸骨」など幾つか案が出ていたので、それらをマトリクス形式で組み合わせて検討しました。

その中でスイーツと毒々しさの組み合わせが、商品化した時に最も魅力的になりそうだということで、途中からはその要素に絞り込んで様々なイラストレーターさんにキャラクター案を描いていただきました。そこで商品にしたら魅力的になりそうと感じたのが、あぼとまさんが描かれたウイルスイーツだったんです。

──あぼとまさんのデザインは本当に素敵だと思います。採用されなかったデザイン案にはどのようなものがありましたか?

片岡:「プリンの形をした頭に足が生えている」といった案もありました。

──それを踏まえて「甘さ×毒々しさ」というコンセプトを、どうやってキャラクターに落とし込んでいったのでしょうか? キャラクターや造形面でのこだわりを教えてください。

片岡:スイーツがモチーフなので、それぞれのスイーツの質感をどうやって表現するかという点にこだわりました。例えばクリームソーダやクリームソーダサイダーであれば、髪の毛のパーツをクリア成形にしたことでクリームソーダのシュワシュワ感というか、美味しそうな感じを演出しています。

他にも、かしわ餅やさくら餅はグラデーション塗装を用いることで、まるでお餅から透けるあんこのような質感を表現しています。パーツによって艶のある質感にするものもあれば、マットに塗るものもあり、きちんとスイーツらしさを表現できるように塗り方や素材の透明感にもこだわっています。

──たしかにあんみつの髪飾りがパール塗装になっていたりと細かなこだわりが凄いですね。ほかにも注目してほしいポイントがあれば教えてください。

片岡:表情ですね。ちょっとジト目にすることで、感情を表に出さない、意思のない表情になるようにこだわっています。目の彩色もかなり細かく色分けされているので、そこにも注目していただけたら嬉しいです。

あとは背中などの見えにくい部分もこだわることで、どこから見ても可愛いというコンセプトを体現できているのではないかと思っています。襟足の色、クリアパーツと塗装の組み合わせ、かしわ餅やさくら餅であればクリア素材からあんこが透けて見えるようにするなど、細部まで見ていただくと様々な発見があると思います。

また、髪にはトレンドのインナーカラーを取り入れたり、分け目のジグザグや前髪のニュアンスなどの細かい部分まで本当にこだわりが詰まっています。

『ウイルスイーツ』のラインナップについて

──第1弾のクリームソーダやコーヒーゼリーといった6種類のキャラクターは、どういった流れでこのラインナップになったのでしょうか?

片岡:『ウイルスイーツ』のプロジェクト自体は、あぼとまさんをはじめ色々なイラストレーターさんにプリン×毒々しさをモチーフにしたキャラクターを描いていただくところから始まっています。最初にプリンのデザインから始まったので、そこから「喫茶店」をテーマにしてあぼとまさんに他のスイーツもデザインしていただく流れになりました。

──ファンとしては第3弾以降の展開を楽しみにしています。喫茶店、甘味処(和スイーツ)とシリーズが続いていますが、これから登場させてみたいスイーツはありますか?

片岡:ガシャポンの発売時期に合わせた季節のスイーツですかね。あとは海外の方にも人気のあるコンテンツなので、世界各国の有名スイーツなどもウイルスイーツにできたら良いなと考えています。

──キャラクター設定も可愛らしくて好きなのですが、スイーツのイメージに合わせて性格を考えているのでしょうか、それともそこはあまり気にせずにキャラクターとして別個に考えていますか?

片岡:多少はスイーツのイメージから紐づく部分もありますが、どちらかと言えばウイルスイーツらしい世界観を意識して設定しています。

──キャラクターページや4コマ漫画などで「〇〇が好き」みたいに関係性が描かれているので、いつか公式で関係図を作っていただけたら嬉しいです。

海外も意識したプロモーション展開

──この『ウイルスイーツ』を社内にお披露目した時はどんな反応がありましたか?

片岡:プロモーションチームからは「絶対にヒットする!」という嬉しい反応をもらいました。また、多くのスタッフが直感的に「海外でもヒットするかも」と感じていたようです。スイーツのような普遍的なモチーフは国が違っても誰もがイメージしやすく、とても親しみやすいのが良かったのかなと思います。

実物を見て触っていただくと、質感やクオリティをここまで出来るんだという驚きもあり、国内外で展開できるオリジナル・コンテンツだと感じてもらえたようです。そういった社内の反応もあって、海外でも国内同様にプロモーションをしようという運びになりました。

──海外への意識もあるから、SNSで発信する際に日本語と英語の2つの画像を添付していたんですね。

片岡:おかげさまで、ありがたいことに海外の方々にもご好評いただいています。

──国内外からの反応で印象に残っているものがあったら教えてください。

片岡:想定していた以上にご購入してくださっているというのもありますが、男性の購入が我々の想像よりもかなり多かったのが印象的です。これは日本だけでなく海外でも同様の傾向ですね。

また、『ウイルスイーツ』の公式Xからも様々なイメージカットや物撮り写真を発信していますが、ファンの方々も可愛らしく撮影してSNSに投稿してくださったり、集めたカードと一緒にディスプレイしてくださったりするのを拝見しています。それらは私たちもプロモーションの参考にさせていただいています。

──公式で撮影していたバンダイのポーチに入っている写真も可愛かったです。

片岡:ありがとうございます。(笑)。

──公式Xのフォロワーが1万人突破まで間近ですが(取材当時)、人気や認知が広まっていることを感じる瞬間はありますか?

片岡:ありがたいことに2025年5月に開設した公式Xのフォロワーが7月に1万人を突破いたしました。思っていた以上にSNSのフォロワー数が急速に伸びていてびっくりしています!

感謝の気持ちをこめてフォロワー1万人突破キャンペーンを実施中です。特設サイトで「VIRUSWEETS figure collection ~甘味処~」のスペシャル夏休みイラストの待ち受け画像をダウンロードいただけます。期間は2025年8月18日(月)までですのでぜひご覧ください!

──新規IPの立ち上げということで、プロモーションの方針や戦略はどのように考えられていますか?

片岡:今回のプロジェクトでは、海外も視野に入れてワールドワイドにプロモーション展開することを強く意識しています。店頭展示も国内外でほぼ同じものを用意したり、日本語だけでなく英語表記の説明を用意したり色々と工夫しています。

── 一部店舗限定でしたが「購入キャンペーン」や「店頭アンケートキャンペーン」でオリジナルカードグッズがもらえるといった販促施策からも、かなり力を入れているコンテンツということが伺えます。

片岡:『ウイルスイーツ』に関しては私たち自身が情報発信と販売の両方を手掛ける必要がありますので、もっとお客様にシリーズについて知っていただけるような商品以外のタッチポイントを作るようにしています。

──その一環だと思いますが、バンダイ本社の入り口が『ウイルスイーツ』仕様に飾られたのにも驚きました。

片岡:ガシャポンオリジナルの新規IPですが、偶然通りがかったインバウンドのお客様も写真を撮ってくださっていて嬉しかったです。
Xのヘッダー用にあぼとまさんに描いていただいたイラストが、ちょうどガラスにみんなで顔を押し付けているようなイラストだったこともあって使わせていただきました。

あと、あぼとまさんも見に来てくださったんです(笑)。

※現在は終了しております。

『ウイルスイーツ』の夢と展望

──キャッチコピーの「このおかし、なんだかおかしい。」も秀逸ですが、どのように生まれたのでしょうか?

片岡:『ウイルスイーツ』のコンセプトが直感的かつシンプルに伝わる文章を考えました。本当にシンプルにまとめていて、全てひらがなで書かれているのも特徴ですね。キャラクターデザインができてからキャッチコピーが決まったので、本当にピッタリなものが降ってきたような感じです。

ちなみに英語版のキャッチフレーズは「Sweet treats with a strange twist」というように「Sweet」と「treats」で韻を踏んだり、ちょっとした遊び心も入れているんです。

──今後の夢もお伺いしたいのですが、ガシャポン以外で展開してみたいことはありますか?

片岡:夢にはなりますが、ガシャポンのようなカプセルトイ自体がまだ知られていない国もあるので、そういった国や地域に向けてイベントやポップアップストアなどでプロモーションもやっていきたいです。展示用でも良いので1000%とかにサイズアップしたウイルススイーツたちを展示してみたいですね。

あとは、SNSきっかけで知ってくださる方がたくさんいるので、その人たちを一同に集めてお祭りをみたいなことをやってみたいです。ファンの皆さんのリアルな声を聞くというのはチームとしても夢ですね。

──『ウイルスイーツ』の更なる展開にも期待しています! それでは最後にウイルスイーツのファンの皆様に向けてメッセージをお願いします。

片岡:すでに楽しんでくださっている方々がたくさんいらっしゃると思いますが、今後も皆様のご期待に添えるような可愛いウイルスイーツたちを生み出していきたいと思っています。

『ウイルスイーツ』をきっかけにガシャポンやカプセルトイを知ってもらい、最終的にはガシャポン自体を代表するようなコンテンツになってくれたら嬉しいと思っているので、今後の展開にもどうぞご期待ください。

取材・記事:岩崎航太、編集:太田友基、写真:二城利月

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