【見下ろす街並みは霧の中】雨模様の『須磨浦山上遊園』へ出かけた話 神戸市
ロープウェイやカーレーターを乗り継ぎ、狙うは展望台からの絶景!見どころ満載の『須磨浦山上遊園』(神戸市須磨区)を、記者はたった1時間で降りることになった。それは梅雨入り前のある日のことー。
いきなりだが言い訳させていただきたい。その日は確かに雨予報で、朝から雨が降っていた。記者も一度は訪問をあきらめたのだ。
だが、昼には濡れた地面に陽が差し始めた。「いや、行けるぞ」記者はどうしても梅雨入り前に足を運びたかったのである。
しっとりとした空気が体にまとわりつくものの暑さもなく、須磨浦公園駅へ着く頃にはすっかり良いお天気に。判断は間違っていなかった、記者はこの時確信していた。
ロープウェイ、カーレーターの往復券と展望台への入場料がセットになった「Bコース」のチケットを購入し、ロープウェイへ乗車。軽快な音楽と共に、須磨の街がどんどん小さくなっていく。
「どんどん霧が濃くなっているねー」同乗していた女性がつぶやいた一言がすべてを物語ることになるのだが、それは後ほど。
3分ほど乗車し、鉢伏山上駅へ到着。ここで1つ目の事件が発生。係員が申し訳なさそうな顔をしながらロープウェイに駆け寄ってきた。というのも鉢伏山と旗振山を結ぶ「観光リフト」が強風で休止になったらしい。乗客からは落胆の声が漏れる。
だが乗車予定だったカーレーターは問題なく動いており、記者はすんなり乗車することができた。リニューアルしたと聞いていたが”抜群”の乗り心地に変化はない。
体に力が入るものの、あっという間に回転展望閣へ到着した。
施設は1階にゲームコーナー、2階に喫茶店、3階にお目当ての展望台がある。さっそく展望台へと上ってみることにしたのだが、ここで2つ目の事件が発生。
そう、濃い霧に囲まれて何も見えないのである。いくら市街地の天気が良くなったとはいえ、ここは山の上なのだー。
時刻は14時前。「展望台に上がるタイムリミットの16時20分まで、まだ粘ってみる価値はあるのではないかー」
考えを巡らせた末、一旦2階の喫茶店『コスモス』にお邪魔することに。
この喫茶店は床が回る形式になっており、座っているだけでぐるっと景色を楽しむことができる。おすすめだという「ピザトースト」をいただきながら、一向に変わらない景色を眺めた。さすがに、この天候の悪さを認めなければならない時が来たようだった。
一縷の望みをかけてもう一度展望台へ向かうが、目の前に広がる景色に変化はなかった。熱々とろりなピザトーストだけを味わい、この日は無念にも街へ舞い戻ることにした。
ここまで読んでくれた人は「この人はこの日唯一の客だったに違いない」と思ったかもしれない。しかし、実際にはかなりの人が思い思いの時間を過ごしていた。
昔ながらのゲームを楽しむ人や、喫茶店でクリームソーダを飲む人。霧に囲まれた景色を「雲海のようだ」と楽しんで撮影する人。天気がいいに越したことはないだろうが、ここはそんな都合さえも吹き飛ばしてしまう魅力にあふれた場所なのだ。
帰りのロープウェイも問題なく動いており、記者がおりようと思ったタイミングでやってきたロープウェイには、これまたかなりの人が乗車していた。「みんな天候気にしてないじゃん」と思いながら、深い霧を抜け記者は街へとおりた。
さすがにロープウェイが止まれば元も子もないが、そもそも動いていない場合はもちろん、「すでに上ってきたものの、天候が悪化しロープウェイが動かせなくなる可能性が出てきた」場合もしっかりアナウンスを行ってくれるので心配はない。
多少天候が悪くても安心して遊べる理由は、長年この地が観光スポットとして愛される信頼の証。あの霧深い展望台からの景色は、かえって貴重な風景として心に焼き付いたのだった。
場所
須磨浦山上遊園
(神戸市須磨区一ノ谷町5-3-2)
時間
10:00~17:00(最終入場は16:30)
※展望台は16:20まで