進学塾には全く意味がない。カリス 東大AI博士が考える「本当に将来に役立つ習い事」とは
韓国で生まれ育ち、16歳にしてたった半年の受験勉強で東大に合格したカリス 東大AI博士さん。今回はカリスさんに、未就学児の保護者から人気が高い習い事を認知能力/非認知能力、将来役立つか/役立たないかの2つの軸で分析してもらいました。カリスさんが最もおすすめする習い事とは?
韓国で生まれ育ち、16歳にしてたった半年の受験勉強で東大に合格したカリス 東大AI博士さん。今回はカリスさんに、未就学児の保護者から人気が高い習い事を認知能力/非認知能力、将来役立つか/役立たないかの2つの軸で分析してもらいました。カリスさんが最もおすすめする習い事とは?
習い事は何歳から始めている?
今回、KIDSNA STYLEでは「子どもの習い事を何歳から始めた?」というアンケート調査を行いました。その結果、最も多かったのが「3~4歳」の48.2%、次いで「1~2歳」の21.6%と、約7割の子どもが4歳までに習い事を始めていることがわかりました。
また、習い事の1カ月の費用は、「5,001~10,000円」が44.3%と最も多く、続いて「10,001~20,000円」が30%の結果となりました。
多くの保護者にとって興味関心が高い子どもの習い事ですが、実際、将来にどれほど役立っているのでしょうか。韓国で生まれ育ち、16歳にしてたった半年の受験勉強で東大に合格した東大AI博士・カリスさんに、認知能力/非認知能力、将来役立つか/役立たないか、2つの軸で色々な習い事を分析してもらいました。
スポーツは体力だけでなく、交友関係も広げる
水泳
水泳は、水の流れをつかんだり、色々な泳法を覚えたりするので、記憶力を育てるという意味合いで学力に少し繋がるような気がします。また、身体的に全身に負荷がかかる運動なので、体力づくりにもよさそうですね。水泳は人気の習い事ランキングでは常に上位に入っているようですが、スクールの多さから始めやすいというのも理由の一つだと思います。普段我々は陸で生きているので、「水中」が子どもに与える非日常感も人気の理由かもしれませんね。
サッカー・野球
サッカーや野球は、もちろん身体を動かす習い事としてもよいですが、大人になったときに共通の話題を持てる、つまり交友関係を広げるという意味で、最高の習い事だと思います。サッカー・野球好きはどこにでもいるので、例えば上司や取引先など目上の人だったり、一見共通点が少ないような相手など、誰とでも仲良くなれる「プラチナチケット」のようなものだと思います。
もちろん観戦が趣味というだけでも話のネタにはなりますが、身をもって経験していたら一段上の理解ができるので、さらに盛り上がれます。また、サッカーや野球は戦略が重要なスポーツなので、身体だけでなく頭脳も鍛えられるという意味でもおすすめです。
ダンス・体操
全身を動かすことやセンスを身につけるという面ではよさそうです。ただ、戦略を必要としたり、順番を緻密に覚えたりするものではなく、「習うより慣れろ」スタイルで身体がリズムに乗れるようになったり、柔軟性を身につけたりして上手になっていくものだと思うので、非認知能力寄りのイメージですね。
また、好きな人はすごく好きだと思いますが、まったく興味がない人も多いので、コミュニケーションツールとしてもサッカーや野球に比べるとやや劣るように思います。そもそもダンスや体操は身体のピーク的に20代前半くらいまでの印象なので、将来に繋がるかというとちょっと難しいと判断しました。
将来役にしか立たない、意外な習い事
ピアノ
ピアノは楽譜はあるものの、その中では自分なりの解釈や感性を用いて演奏をするので、学力というよりは非認知能力が育まれると思います。また指先を器用に使うので脳の発達にもよいと言われています。ただ、使う部分が指だけなので、脳の発達の面では、全身を使うスポーツのほうがよさそうだと個人的には考えています。
また、ピアノなどの楽器演奏は大人になっても続ける人が多く、サッカー・野球と同様に共通の話題になりやすいという点で、将来に役立つように思います。ピアノをやっていると品性が身につく(少なくとも周囲からそう思われる)というメリットもありそうですね。
絵画
芸術という意味ではピアノと似ていますが、ピアノに比べて絵画はいつでもどこでもできるのがメリットだと思います。また、他の分野への応用が効きやすいので、色々な職業にも繋がるかなと。
例えば、職業としてデザイナーにならずとも、マーケティングやブランディングにもデザイン思考は役立ちます。そういった面を踏まえると、ピアノよりも絵画のほうがより実践的な習い事ではないでしょうか。
演劇
自分は社会のなかでどんな役割を担っていて、誰とどうコミュニケーションをとって、何を目指していくのか。演劇はこのような社会の縮図を体験できるので、勉強になると思います。また、みんなで一緒に大きなことを成し遂げることで達成感を味わい、協調性を身につけることにも繋がるので、将来に役立つ習い事だと思います。
料理
すごくよいと思います。料理ほど実践的な習い事はないですね。人間は美味しいものを食べたいし、そもそも食べないと生きていけないので、料理は生きる力に直結すると思います。
また、食材や調味料・香辛料などの組み合わせを考えることは想像力にも繋がり、感性を育てます。一方で料理は、「水が300mlに対して塩が5gだと塩分濃度は~」といった化学的な捉え方もできるので、捉え方によっては頭脳も鍛えられます。
作るときに食べてもらう相手のことを想って作ったり、片付けもしないといけなかったり、思いやりも育てることができますね。AIが発達している現代においても、手料理のような人間ならではの温かみは、AIには真似しづらい部分なんじゃないかなと思います。
AI時代に進学塾は全く意味がない
進学塾
AI時代において進学塾は何の意味も持たないでしょう。そもそもこれからの時代、受験自体が無意味です。すでに全人類は受験勉強でAIに勝てません。また、今はまだ学歴が大事な時代ではありますが、AIやロボットがさらに普及して労働を担うようになり、ベーシックインカムが導入されて仕事が義務ではなくなる10~15年後には、学歴が求められることはなくなります。
これからの時代、正解が存在する明確な問題に対して高得点をたたき出すことより、自分でゲームのルールを決めて、自分で道を拓いていかないといけません。
生きるためにお金を稼がないといけない時代が終わり、自分のやりがいを見つけるために働く時代が訪れることは確定しているので、今の未就学児やこれから生まれてくる子どもが進学塾に通うのは時代遅れでしょう。
英会話
AIが進化して同時通訳/翻訳ができるようになりつつありますが、それでも英会話は教養として必須です。仕事で部分的に使う上では、同時通訳/翻訳機能があれば事足りるかもしれませんが、人と人とのコミュニケーションという意味では、やはり直接英会話ができないと信頼や親近感は得られません。
さらに、AIに英語の文章を書いてもらっても、それが本当に自分の表現したいものなのかを評価できなければ、相手に的外れなことを伝えてしまうことになります。AIを使う側になるのか、AIに使われる側になるのか。それは、自分に問題設定と解釈を行えるだけの判断力が付いているかどうか次第です。
プログラミング
僕自身、プログラミングを学ぶ過程で論理的思考力や物事を俯瞰して捉える能力が身についたと実感しています。確かに今はAIがプログラミングの多くを担ってくれていますが、さっきの英語の文章をAIに書かせるのと全く同じ話で、その根本的な仕組みを理解していなければ、AIを本当に使いこなすことは不可能です。
一方で、これはまさにAIが得意とする領域でもあるため、従来型のプログラマーやエンジニアはほとんど職を失うでしょう。そこで重要なのは、プログラミングスキルを他分野と組み合わせて新たな価値を生み出すことです。つまり、英語やプログラミングはそれ自体には価値がない「燃料」であり、他の価値に掛け算することで活きる、ジェネラリスト的な能力ということになります。
例えば、生物学(宇宙でも、何でもいいです)の専門知識を持つ人は多くいても、英語が堪能でプログラミングスキルもあり、複雑な生物学的データを適切に分析して海外で発表できる人材は希少です。これからの時代に求められるのは、幅広い知識と能力を持つジェネラリストでありながら、一つの分野では際立った専門性を発揮できる人材です。そのような多才かつ専門性を持つ人こそが、代替不可能な人材として活躍していくことになるでしょう。
習い事を選ぶ視点に「汎用性」を
最後に習い事だけではなく、生きる力を身につけるために幼少期からやっておいたほうがいいことを2つ紹介します。1つ目は、自然体験です。自然に触れることで、広い世界において自分はどれだけちっぽけな存在であるかを思い知り、植物や動物と関わり合って自分は存在しているのだと、自分を俯瞰できるようになります。
僕も自然が好きで、世界中の動物園や水族館を見て回りましたが、それによって人と少し違う感性が得られたと感じています。そもそも人生とは「思い出作り」なんです。自然体験を通じて思い出を作ることができれば、それだけでも人生が豊かになります。特に子どもの頃は、小さければ小さいほどあらゆる世界が自由で新鮮で、感動も大きい。たくさん感動しながら育った子どもは、必然的にクリエイティブな感性を持つようになるのではないでしょうか。
2つ目は読書です。僕の人生のほとんどは読書から学んだと言っても過言ではありません。僕が今こうやって色々な質問に早口で答えられるのは、読書によって知識や機転を身につけたから。
僕自身も本を書いたことも、YouTubeチャンネルを運営したこともあるので分かりますが、本を書くのはYouTube動画を出すより遥かに大変で、何度もあらゆる観点で思考を巡らせる必要があります。そんな良質な知識を様々な本から少しずつ自分に蓄えることで、立派なオリジナルが出来上がると思います。そんな追体験は、読書以外からは決して得られません。
だから5月3日に引退を発表した「投資の神様」バフェットも、引退表明で若者に読書を勧めたのです。AI時代だからこそ、人は自分の頭で考えて自分の心で感じる必要があります。その鍵は読書にしかないと、僕は断言します。
未就学児や小学生にやって欲しいことを総括すると、「汎用性がある習い事」に尽きると考えています。未就学児や小学生で、自分がやりたいことがはっきりと分かっている子はほとんどいません。だからこそ、将来の可能性を広げつつ、本当にやりたいことが見つかったときに、それに掛け算になるようなことをやらせておいたらいいのかなと。
自然体験・読書・料理。今日おすすめしたことが全部できる子どもだったら、将来やりたいことが見つかったときには、最強になれるのではないでしょうか。