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小学生たちが「さかなクン探究隊」で【海洋プラスチックごみ問題】を研究! 「待ったなし」の実態を東京海洋大学教授が解説

コクリコ

さかなクンと一緒に、海の未来のことを考えるプロジェクト「さかなクン探究隊」が2024年9月より活動をスタート!東京海洋大学の全面サポートの元、11人の小学生探究隊員が自分でテーマを決め、半年間探究していきます。第4回の活動の様子をレポートします。

【画像 17枚大公開!】ミズウオの解剖シーンほか 小学生たちが「さかなクン探究隊」で【海洋プラスチックごみ問題】を研究 

2024年9月に結成されたさかなクン探究隊。こどもたちが、隊長であるさかなクンと一緒に海やお魚、そして海洋環境のことを調べて、考えて、深めていくプロジェクトです。体験型ワークショップの3回目は、前回のビーチクリーン体験をふまえて海洋ごみ問題を深掘り! 「海の生物とプラスチックごみ」をテーマに東京海洋大学の内田圭一教授がさまざまな角度からナビゲートしてくださいました。

海洋プラスチックごみ問題は50年以上前から問題視されていた!

内田先生は、大学練習船の航海士として勤務していたときに、船や海鳥、漂流物など船の上から見かけたさまざまなものを地図上に記録していました。そのときに、ごみが多い海域と少ない海域があることに気づき、これを深掘りすると面白そうだと感じて、本格的に漂流ごみの調査をスタートすることになったそうです。授業は、先生と子どもたちとの対話式で進められました。

海洋ごみ研究の第一人者である東京海洋大学の内田圭一教授。

内田教授……海洋プラスチックごみやマイクロプラスチックが海洋環境や生態系に影響をおよぼす可能性が問題になったのはいつごろからか知ってるかな?

隊員……わたしたちが生まれたころから?

内田教授……最近の問題だと思われがちだけど、じつは、いまから50年以上前の1972年には、アメリカで海洋におけるプラスチック汚染を問題視する論文が発表されていたんだ。1970年代には、いろいろな海洋生物の体内からプラスチックごみが発見されていたことがわかっているよ。では、なぜ今、プラスチックごみはこんなに注目を集めているんだろう?

隊員……生きものがプラスチックごみのせいで、死んだり苦しんでいる写真をたくさん見かけるようになったから?

内田教授……そうだね。網やビニールなど大きな漂流ゴミが、生きものに巻きついている写真は衝撃的だよね。あとは、海に流出したプラスチックごみが、紫外線や波の影響で破壊され、小さなマイクロプラスチックになってしまうんだけど、そうすると、魚や貝などが、プランクトンと間違えて誤飲する可能性が高くなるよね。

2016年に、東京農工大学の高田秀重教授の研究グループが、東京湾で採取されたカタクチイワシ64個体のうち49個体の消化管からマイクロプラスチックが検出されたという調査結果を発表したんだ。それと同時に、検出されたマイクロプラスチックのうち、7.3%はマイクロビーズだったということがわかったんだ。

隊員……1次マイクロプラスチックだ!

由比ヶ浜でのビーチクリーンのときに回収したもの。右がレジンペレットなど1次マイクロプラスチック。左が破損したプラスチックのかけらや不燃ごみ。

内田教授……そう、よく覚えていたね。この前のビーチクリーンのときに、マイクロプラスチックには2種類あるという話をしたけれど、1次マイクロプラスチックとは、歯磨き粉や洗顔料などのスクラブ剤やレジンペレットなど、生産された段階で5ミリ以下のプラスチックのことだね。

2016年のカタクチイワシの報告は、私たちがふだん口にするものから、マイクロプラスチックが検出されたということで、大きな話題となったんだ。

隊員……マイクロプラスチックを食べた魚や貝を食べたら、私たちの体の中にマイクロプラスチックが取り込まれているということになるね。

海洋プラスチックはなぜ問題?

内田教授……さらに、2018年には、世界の塩ブランドの9割以上のサンプルからマイクロプラスチックがみつかった、という調査結果が発表されたんだ(※)。

カタクチイワシや塩という、私たちの食卓になじみの深い食品からマイクロプラスチックが検出されたことで、この頃から、多くの人が海洋ごみやマイクロプラスチックを自分にとって本当に身近な問題だと実感するようになり、注目を集めるようになったんだ。

(※)Ji-Su Kim et al.(2018)「Global Pattern of Microplastics (MPs) in Commercial FoodGrade Salts: Sea Salt as an Indicator of Seawater MP Pollution」Environmental Science & Technology.DOI: 10.1021/acs.est.8b04180.

隊員……身のまわりにはプラスチックがあふれているから、なんかこわいね。

内田教授……本当に細かいレベルの話をすると、ペットボトルのふたをあけるだけで、プラスチックの粒子がとぶし、スナックの袋をあけるときも粒子はとんでいるんだ。でもこれはあんまり気にしなくていいよ。WHO(世界保健機関)によると、プラスチック自体の粒子はほぼ体内で吸収されることなく排出されるため、現状の検出レベルでは健康被害があるわけではないとされているので。

では、なぜ海洋プラスチックについては、こんなに注目されているんだろう?

隊員……魚が食べたものがさらに人の体に入るから?

内田教授……プラスチックはさまざまな添加剤が入っていて、そのなかには有害なものがある。海に放出されたプラスチックは、劣化してバラバラになっていくよね。そうするうちに、有害物質が凝縮したり、環境中にある汚染物質を吸着したりするんだ。プラスチックは化学物質を吸着しやすいという性質があるから。

つまり、マイクロプラスチックが汚染物質の運び屋となって海を漂うことになり、それを生きものが体内に取り込む。そうすると食物連鎖を通して生態系のより上位の生きものへ汚染物質や有害物質が濃縮され、蓄積されていく。これを“生物濃縮”というんだ。

隊員……プラスチックのせいで、魚が食べられなくなったりするの?

内田教授……現状は、そこまでプラスチックだけを敵視することはないよ。プランクトン自体が、もともと自然環境中で曝露して取り込んでいる汚染物質が、生物濃縮して私たちの体内に取り込まれているんだけど、そちらの影響のほうが、マイクロプラスチック経由で人間が汚染物質を取りこむ量や影響よりも大きい、と今のところは言われているんだ。

ただし、なんの対策もせずにマイクロプラスチックの量がどんどんふえつづけると、そのうちプランクトン経由よりも、プラスチック経由で汚染物質を取り込む量がふえてしまうということになるよね。そして、この前のビーチクリーンで実感したと思うんだけど、環境中に放出されて、マイクロ化してしまったプラスチックは、回収することはほぼ不可能だよね? だからこそ、私たちが今すぐにできることは、出るごみをふやさないことなんだ。

日本近海の海底で刺し網で回収されたプラスチックごみをみんなで観察。内田教授「どこで採集されたものかわかるかな?」

各国のマイクロビーズ対策、海洋ごみの種類、世界の海域のなかで漂流ごみの多い海域とその理由、海洋ごみの回収法などさまざまな角度から、内田教授の講義は続きました。海洋プラスチックごみがなぜ問題なのか、そして今自分たちができることを隊員それぞれがより深く考えるきっかけになりました。

おまちかねの深海魚、ミズウオの解剖!

MOVE「深海の生きもの」P47より

Check!ミズウオとは?

ミズウオは、体長約1〜2メートルで水深900〜1400メートルの海域にすむ深海魚です。主食は頭足類や魚類ですが、えり好みせずに、なんでも食べる魚としてしられています。また、ミズウオの胃からは、丸のみされたばかりのきれいな深海魚が出てくることがあり、ときには新種が見つかることもあります。(出典/「MOVE 深海の生きもの」P47)

内田先生によると、ミズウオは海の中で出合った餌と思われるものは、プラスチックもふくめなんでも食べてしまうそう。そのため、世界中の研究者がミズウオを用いて、その海域の汚染状況の指標としているということです。

隊員たちは前のめりで解剖タイムスタート!

日本近海のミズウオの胃からは、丸のみにした小魚、木の葉のほかに、アルミ袋やひも、ゴム、(お弁当などに入れる)バランなどが見つかりました。

一方、インド洋でとれたミズウオの胃の中には食べた小魚の目玉が残っていたくらいで、プラスチック等のごみは発見されませんでした。海流の影響で、海洋ごみが集まりやすい海域があることを実感。隊員たちは、内田先生の講義をとおして、世界中の海はつながっているから、どこか特定の国だけがプラスチックごみの対策をがんばっても効果がうすくて、世界中の国々、人々が一緒に取り組むべき課題であることを再認識できたようです。

臨場感たっぷり! 操船シミュレータに挑戦

操船シミュレータを体験!

座学と解剖が終わっても、まだまだワークショップは続きます。大学で学生さんたちが実習や訓練の際に使用している操船シミュレータを体験させていただきました。最新&本格的な機器を搭載したシミュレータでの体験は臨場感たっぷり! 隊員たちはみんなで役割分担をしながら、声をかけあい、交代で操船にトライ。

また、生態系に配慮した漁業の研究をされている東京海洋大学の塩出大輔教授が、大型回流水槽で漁具の説明をしてくださいました。大学の実験装置のスケールに隊員たちはこれまた大興奮でした。

体験型ワークショップ3回目も、たくさんの刺激や視界の広がりを感じられる活動だったようです。次回の探究隊プログラムは12月中旬を予定。さかなクンと一緒に「低利用魚」について学びながらさまざまな体験をする予定です。

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