多頭飼育の猫たちは『ご飯トラブル』が多い?起こり得る3つの問題と対処法
1.横取りされる
多頭飼育でよくあるのが、食いしん坊の猫がほかの子のご飯を横取りしてしまう問題です。とくに食事に執着が強い猫は、ほかの猫の皿にも平気で顔を突っ込んでしまいます。一方で性格が控えめな猫は、自分のご飯を奪われても抵抗できず、十分に食べられないままになってしまうことも。
また猫によって食べ方にも違いがあります。出されたご飯を一気に食べる子もいれば、ちょこちょこ食べたい子もいます。このような場合は、一気食いの子がちょこちょこ食べの子のご飯を食べてしまうことが多いでしょう。
これが毎日続くと、特定の猫だけが太ったり、逆に痩せすぎたりと健康面に悪影響が出てくる可能性があります。
2.食事量を把握しにくい
多頭飼育では、誰がどれだけ食べたのかを正確に把握するのが難しくなる場合も多いでしょう。それぞれの食器で与えても、上述のように横取りをする猫がいると、実際に食べた量がわからなくなってしまいます。
フードをまとめて置いておくと、食欲旺盛な猫がたくさん食べ、ほかの猫はほとんど食べられない…ということもないとは言えません。
必要以上に食べれば肥満の原因になりますし、食べる量が少なければ、栄養失調になる可能性もあります。とくに肥満は糖尿病や関節炎などのリスクも高まり、生活の質を著しく低下させることにもつながります。
日々の食事量は健康のバロメーターです。個々の摂取量をしっかり管理できるように工夫しましょう。
3.健康管理が難しい
猫の健康状態は、食欲や食べ方にも如実にあらわれます。しかし多頭飼育では、それぞれの猫の食べた量を把握するのが難しく、体調の変化に気づきにくくなります。
たとえば、いつもより食べるスピードが遅い、残すようになった、といった小さな変化を見逃してしまう可能性があるでしょう。食欲不振は病気の初期症状としてあらわれることも多いため、それぞれの食事を管理ができていないと重大な病気に気づくのが遅れてしまう可能性が否定できません。
また持病がある猫に療法食を与えなければならない場合もあるでしょう。病気の猫がほかの猫のご飯を食べると、病気の悪化や治療の妨げになってしまう可能性があるため注意が必要です。
健康な猫が療法食を食べてしまう場合も、健康を損なう可能性があるため注意しなければいけません。
ご飯トラブルの対処法
多頭飼育におけるご飯トラブルを防ぐには、まずは猫ごとに食事場所を分けることを検討しましょう。療法食が必要な猫がいる場合は配慮が必要です。
たとえばケージ内で与えるようにする、別々の部屋で与えるようにするなどです。物理的に距離を取ることで、横取りや干渉を減らせます。
またちょこちょこ食べをする猫には、置き餌をするのではなく、時間を決めて頻回与えるようにすると良いでしょう。特に肥満傾向の猫がいる場合、食べ残しを食べられないよう、こまめに片付けるようにしましょう。
猫の性格や関係性を考慮しつつ、それぞれに合った食事スタイルを工夫することで、トラブルの予防につながります。
もう一つ重要なことは、食事の計量と猫の体重測定です。
「何のフード」を「何g」あげることで、猫が「何kg」になっているかを毎月記録し、理想体重を維持できているか確認しましょう。理想体重からの増減が大きい場合は、食事の内容や量、与え方を再考しなければなりません。
まとめ
多頭飼育の猫たちは、一見仲良く見えても、食事の場面では案外トラブルが起こりやすいものです。「横取り」「食事量の把握が困難」「健康管理が難しい」など、ご飯をめぐる問題は飼い主さんの目が行き届きにくい多頭環境だからこそ発生しやすくなります。
日常的に猫たちの様子をしっかり観察し、必要に応じて個別に対応することで、ストレスの少ない食事環境を整えることができるでしょう。
猫たちが安心して食べられる時間を確保することは、健康維持にも直結します。工夫と配慮で、みんなが満足できるご飯タイムを目指しましょう。
(獣医師監修:唐野智美)