「発達に何かある」2歳目前で自ら電話相談、早期療育を受けた結果は?娘が自閉症と診断されるまで
監修:新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2歳目前、保健所へ発達相談の電話をした
娘が2歳になる目前、発達に何かあると確信した私は、保健所へ発達相談の電話をかけました。数日後、家に保健師さんが来て、娘の様子を詳しく確認してくれました(もともと1歳半健診で要観察になっていたのでそこまでの流れはスムーズでした)。
保健師さんに娘の今までのことや発達で不安なことを伝えたところ、市でやっている「親子教室」をすすめられました。ですが話をよく聞いてみると、親子教室へ半年通ったあと、さらに支援が必要なお子さんに対しては、発達支援センターでの約3ヶ月間の療育プログラムをすすめるということでした。
わが家は転勤族で5ヶ月後に引っ越しすることが決まっていました。そのため、私は親子教室を飛ばして、発達支援センターへすぐに通えないか聞いてみました。娘の様子を見ていた保健師さんは、少し考えたあとに「お母さんにならお伝えしても大丈夫そうなので……」と前置きしてから「しぇーちゃんは、発達支援センターに通うことをおすすめします」と言って、発達支援センターのパンフレットをくれました。
これ以上モヤモヤする期間を過ごしたくなかったので、保健師さんが柔軟に対応してくれたことには感謝しかありません。
いよいよ発達支援センターへ
私は翌日、保健師さんに教えていただいたとおり、さっそく発達支援センターに電話をかけました。発達支援センターでは、未就園児を対象にした親子通所の発達支援プログラムを提供しているとのことでした。週に1回2時間、全12回で構成されていて、最後の12回目は発達検査を受けた上で、医師が診察をするとのことでした。
緊張と期待を込めて参加した初回は、娘の多動が大爆発し、とにかく室内を追いかけ回した日でした。親子で一緒に運動をするのですが、娘はたくさんの刺激に興奮して声を上げ、私のことは全く視界に入りません。ほかのお子さんが遊ぶおもちゃすべてに興味を示し、おやつの時間も少ししか座らず(偏食で食べない)、終わった時には親子で汗だくでした。ほかのお子さんもそれぞれ発達に不安な部分があるからこそ、ここに通っているのだと理解してはいましたが、正直なところ、娘はその中でもとんでもなく突出していると思いました。
唯一の救いは、ここでは娘の大変さを誰もが分かってくれているということでした。先生方もフォローをしてくれるし、ほかのお母さん方も見守ってくれている気がしました。私は誰よりも激しく動き回る娘を追いかけながらも「ここで療育を受けたら、娘に何かいい変化があるかもしれない」という希望を捨てず通い続けました。
発達支援センターでの娘の成長
それからも、発達支援センターではいろんな経験をさせてもらいました。初めは興奮して走り回っているだけだった娘ですが、だんだんと先生の指示が聞こえるようになり、ダンスなどにも参加するようになりました。そして、そんな娘の変化を先生方やほかの保護者の方が一緒に喜んでくれ、今まで孤独だった育児が変わりました。その日その日をなんとか過ごすのではなく、今日は家で娘と絵カードをやってみようとか、療育でやった体遊びをしてみようとか、娘との時間を意識した生活に変わったと思います。
そして、発達支援センターの最後の療育の日、絵本の活動の時間に椅子に座ったことがない娘がしっかりと座って聞いていました。
発達検査を受けた娘。医師から結果の説明を受ける
そしてプログラムの最終日、娘は発達検査を受けました。検査が終わると医師から結果の説明と合わせて診察がありました。先生は療育中の娘の多動や目の合いづらさなどが気になるとのことでしたが、まだ2歳なので、現時点で診断するかどうかはあくまで保護者の希望を優先しますと言われました。引っ越し先で療育に通うためには受給者証が必要だったため(引っ越し先の自治体では、受給者証発行には医師の診断書が必要でした)、そのことを伝えると、その場でASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。
結果的に、2歳目前で自ら発達相談の電話をかけたことで、その後の早期療育や発達検査、診断へとつなげることができました。
今回はわが家の娘が2歳4ヶ月という比較的早い段階で診断を受けた経緯を書きましたが、お子さんの発達に悩んでいらっしゃる方の参考になれば幸いです。
執筆/マミヤ
(監修:新美先生より)
2歳前に発達に何かあると感じ、積極的に動いて早期療育・診断に結びついたエピソードを聞かせていただきありがとうございます。発達障害の概念自体、ここ10数年で急速に広まってきたため、保護者の方の認識は非常に幅広くまちまちです。地域のシステムとしては、あまりそういうことを感じていない保護者の方が戸惑わないように、ゆっくり、段階的に、マイルドに療育などにつなげていくような仕組みになっているところが多いかもしれません。なのでマミヤさんのように、すでに自ら発達に関する情報を求められて、お子さんに必要なことはなんでも早めに受けたい知りたいという場合は、記事にあったように積極的にこちら側の思いを伝えていくのは良かったと思いました。
発達支援センターのように、お子さんのさまざまな特性に対応してもらえる場があると、余計な気をつかわず親も子も安心して、さまざまな経験を積むことができますよね。また発達検査や診断を受けることで、よりお子さんに適した情報や支援にたどり着くメリットも大きいと思います。そのあたりが詳しく伝わるエピソードを聞かせていただき、ありがとうございました。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。