MCUシリーズ、最初の一歩をここから合流するのもアリ『ファンタステック4:ファースト・ステップ』
7月25日(金)から日米同時公開されたマーベル・シネマティック・ユニバース(以後「MCU」と記載)最新作『ファンタステック4:ファースト・ステップ』。日本では夏休み興行で強豪作品が多い中、動員ランキングトップ3入り外国映画No.1に、北米では2週連続首位を獲得しています。本作は2005年以降にも実写映画していますがそれらとは一線を画し、MCU単独作品として始動しました。副題の「ファースト・ステップ」が意味するものとは?? SASARU movieでは、キャプテン・ポップコーンこと矢武兄輔が『ファンタステック4:ファースト・ステップ』を解説します。
[登場するヒーロー]
①リード・リチャーズ/ミスター・ファンタスティック(ペドロ・パスカル)は、身体がゴムのように伸縮自在となる能力と卓越した知性と発明の才能を持つ、チームのリーダー。
②リードの妻であるスー・ストーム/インビジブル・ウーマン(ヴァネッサ・カービー)は、身体を透明化する能力。
③スーの弟、ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチ(ジョセフ・クイン)は、全身を炎に包み、高速で空を飛ぶことができる。
④リードの親友ベン・グリム/ザ・シング(エボン・モス=バクラック)は、岩のような強固な身体と怪力を持つ。
(text|矢武兄輔[キャプテン・ポップコーン])
ファースト・ステップ「作品の立ち位置」
副題の「ファースト・ステップ」が意味するものは複数に解釈できます。
まずは、製作のマーベル・スタジオにとって「最初のファミリー」であること。これまでも血縁関係、法的拘束力のない“ファミリー=チーム”のヒーローの活躍は「アベンジャーズ」や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ(14〜23)でも見受けられましたね。一方、『ブラック・パンサー』シリーズ(18〜)のように家族が支えているヒーローもいました。しかし、これらの“ファミリー”とは画し、『ファンタステック4:ファースト・ステップ』で私たちが感じるものは、壮大な宇宙やテクノロジーを相手にしながら、身近で家庭的なヒーローなこと。自分たちに近いキャラクター性や日常的な環境、悩みなどが描かれることで共感しやすいキャラクターとなっています。そして、予告編でも明らかにされているスーの妊娠。このめでたい新しい家族の誕生が今作のキーになり、今後のMCUの世界線に影響を与えるかもしれません。
ちなみに原作の「ファンタスティック・フォー」が創刊されたのは1961年。その頃のマーベル・コミックスの人気は細々としていましたが、本作が大ヒットしたことで、その後の「スパイダーマン」や「アイアンマン」などを創出に繋がったと言われています。つまり、内外いろいろな意味で最初の一歩な作品なのです。
ファースト・ステップ「観やすさ」と「マルチバース」
『ファンタステック4:ファースト・ステップ』は壮大なMCUシリーズ通算37作目の映画だそうです。これまでのシリーズは、必ず他のタイトルのヒーローが登場し、枝分かれのように何かしらの過去作の内容や事件がリンクしていました。もちろん、単体でも楽しむことはできるのですが、シリーズを全履修している方へのサプライズや伏線も存在します。物語が広大になったことで、シリーズを離脱、あるいは合流を躊躇している方がいるはずです。
しかし、本作は、本当に、これまでのMCUシリーズを観ていなくても1つの物語として独立、成立しているので、これからのMCU「最初の一歩」にするには丁度いいです。なぜなら、今作の世界では、彼ら4人は既にヒーローとして活躍している時間からスタートしているからです。スーパーヒーローまでの成り立ちについては、本編冒頭で“チーム結成4周年記念の特番番組”としてワイドショー演出で集約。その分、家庭的な話やアクションパートが増え、“早速”ヒーロー映画として構成され、満足できる作品となっています。
では、観やすい理由ですがMCUの多くはアース616【神聖時間軸=つまり『アベンジャーズ』シリーズ(12〜19)などMCUシリーズの基本軸であり時間軸】で描かれています。しかし今作は60年代が舞台かつアース828(本編冒頭ですぐ明かされる)の話なので別の宇宙(→地球)です。つまり、これまで映画で観てきた、私たちが知っているキャプテン・アメリカやブラックパンサーが存在しない世界(のはず)です。なので、これまでのMCUシリーズで描かれてきたキャラクターと出来事は干渉してきません。
ちなみにこれから公開される『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』(26年12月18日)には今作の「ファンタスティック4」が登場するとのことなので、どちらかがマルチバース(複数の宇宙の存在を仮定した理論物理学の説)で合流するのでしょう。
レトロフィーチャーされた世界観
『ファンタステック4:ファースト・ステップ』で惚れ惚れするのはなんといっても、レトロフィーチャーされた1960年代のニューヨークです。コンピューターなどの工学デザインや部屋の内装など、レトロでカワイイけれど、どこか先進的な見た目です。もちろん、リードのような天才科学者がいる世界なので、我々の世界よりも少し技術が進歩しています。モノレールや空飛ぶ車、ワイヤレスな通信機器です。これらは60年代に制作された日本のアニメーションや特撮作品で描かれていた“希望の近未来”の社会や技術とリンクする部分もあり、親近感が湧く方もいるでしょう。まだ人類がテクノロジーの進歩によって、前向きで未来志向かつ楽観的だった時代の作品の空気感、そんな宇宙や科学へのロマンを視覚的に楽しませてくれます。ちなみに、マット・シャクマン監督はなるべく実写の撮影に拘ったとのこと。例えば、宇宙船の外観などは実際にミニチュアを制作して撮影(劇場パンフレット参照)。VFXの技術が画期的に進歩する中でも、ミニチュア撮影はリアルさと質感が生み出されるとのことで、いにしえから受け継がれる「特撮魂」を感じます。
ゆかりのヴィランは?? そしてネタバレとやや考察?
今回、中心となるヴィランは、終焉を伝えにくるシルバーサーファーと、惑星を喰らう宇宙神と呼ばれるギャラクタス。あれ「ドクター・ドゥーム」の姿がない。
前述に記した通り「ドクター・ドゥーム」は次回のアベンジャーズの副題にもなっていて、トニー・スターク/アイアンマン役のロバート・ダウニー・ジュニアが演じることは大々的に発表されています。「ファンタスティック・フォー」にとって、ドゥームは常に宿敵であり、過去3作の「ファンタスティック・フォー」でもメインヴィランでした。既に報じられていますが、『ファンタステック4:ファースト・ステップ』のミッドクレジットシーンにドゥームが登場しています。過去作と比べ、顔も出ずにワンカットの出演。もちろん、この先の作品でメインヴィランになるのは周知されているので、登場しても“???”にはならないですが、そのシチュエーションと立場が気になります。一応、今作の「ファンタスティック4」誕生から8年後のシーンで登場します。これまでは、実写化されたドクター・ドゥームは「実業家、自信家、科学者として優秀、事業家、スーが好き」というような設定があります。そこで筆者がIMAX®2回目を鑑賞中に気づいてしまったのですが、なんとなくピンと来ませんか? リードとスーのキャラクター的位置や役割が「アイアンマン」シリーズ(アース616/08〜19)で描かれてきたのスターク家と重なります・・・。もしや?!
今回の一歩は、『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』(26)に大きく影響しそうな予感! まだシリーズ未見の方、アース828の『ファンタステック4:ファースト・ステップ』から参加してはどうでしょうか?!
『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』の基本情報
宇宙ミッション中の事故で特殊能力を得た4人のヒーロー・チームは、その力と正義感で人々を救い、“ファンタスティック4”と呼ばれている。
世界中で愛され、強い絆で結ばれた彼ら“家族”には、間もなく“新たな命” も加わろうとしていた。
しかし、チームリーダーで天才科学者リードのある行動がきっかけで、惑星を食い尽くす規格外の敵”宇宙神ギャラクタス”の脅威が地球に迫る!
滅亡へのカウントダウンが進む中、一人の人間としての葛藤を抱えながらも、彼らはヒーローとして立ち向かう。
いま、全人類の運命は、この4人に託された──。
■公開日
2025年7月25日(金)
■監督
マット・シャクマン(『ワンダヴィジョン』)
■キャスト
ペドロ・パスカル(『マンダロリアン』、『キングスマン:ゴールデン・サークル』)
ヴァネッサ・カービー(「ミッション:インポッシブル」シリーズ、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』)
ジョセフ・クイン(『ストレンジャー・シングス 未知の世界』、『グラディエーターII英雄を呼ぶ声』)
エボン・モス=バクラック(『パニッシャー』、『一流シェフのファミリーレストラン』)
■公式サイト
https://marvel.disney.co.jp/movie/fantastic4