メタルスッテのツツイカゲームに挑戦【三重・エヌテックマリン】エサ巻きスッテに好反応
衰えない人気を誇るメタルスッテのツツイカゲーム。ケンサキイカやスルメイカ、ヤリイカを狙うゲーム性に富んだ釣りだが、読者の皆さんは夏の日本海で楽しむイメージが強いと思う。だが寒さ厳しい冬でも楽しめるのが、三重県の熊野灘沿岸だ。北西の季節風に強いので出船率が高く、イカも非常に濃い。今回は三重県・紀北町引本浦のエヌテックマリンに乗船。このメタルスッテで狙うツツイカゲームについて実釣記を交えながら解説してみたい。
初釣りにおすすめのメタルスッテ
今回釣行したのは正月3が日の1月3日。APCの橋本広基さんからお誘いいただき、2025年の初釣りとあいなった。今年は奇跡の9連休ということで、翌日も休みで体への負担も少ない。橋本さんもこの日が初釣り。
初釣りは釣り人にとって、その年の釣りを占う大事な釣りだ。当然大滑りは避けたいところ。だがこの熊野灘のメタルスッテ、ボウズの可能性は非常に低い。日ムラはあるが、完全試合になることはまずない。そう、初釣りにもうってつけなのだ。
今季の概況
さて、今年の熊野灘のメタルスッテの状況だが、ひとまず例年通りといっていいだろう。このエリアでアカイカと呼ばれるケンサキイカは順調。加えて毎年釣果が聞かれる大型のスルメイカが、例年以上に好調だ。
だが懸念は高水温。エヌテックマリンの中井船長に聞くと、尾鷲湾口でまだ19度もあるという。10年ほど前には安定して釣れていたヤリイカは、ここ数年不調続き。釣れても単発が多く、このままでは今年も期待は薄そうだ。
だが代わって今年は大型のスルメイカが好調。胴長30cm前後のビッグサイズがメインで、その強烈な引きが魅力だ。おいしいアカイカ(ケンサキイカ)もペットボトルサイズの良型交じりで、まずまずのようだ。
ポイント
ポイントは尾鷲湾口エリア。水深は30〜40mで、瀬周りにアンカーを入れて釣ることが多い。場所によっては根掛かりもするので、探見丸などで底の形状を把握し、ゴツゴツしているようならボトムタッチには細心の注意を払いたい。
タックル
タックルは、日本海で使うものとほぼ同じと考えていい。使うスッテは重くても30号。通常は15〜20号がメインとなるので、最大で30号を背負えるロッドを選びたい。リールはカウンター付きのベイトリール。
ラインはPEライン0.6号にリーダーがフロロカーボンライン2.5号。これに枝ス1本、もしくは2本の通常のメタルスッテ仕掛けをセットする。
スッテ
スッテは15〜20号をメインに、10号、12号、25号、30号を少しあればいい。カラーはここ最近の傾向では、赤緑が圧倒的に強いらしい。だがこれは日によって変わるので、赤白や赤黄、黒白など、好みでそろえておこう。
枝スの先に付けるドロッパーは、浮きスッテタイプとエギタイプがある。どちらがいいとは言えないが、個人的には浮きスッテが好み。エギは若干だが自重があるため、ステイ時間が長いと沈下してしまう。
浮きスッテやエギスッテは、ふわふわと潮に漂ってくれるのでロングステイに使える。浮きスッテやエギスッテなら80mm前後、エギなら1.8〜2号を使う。
イカの性格
今釣れているスルメイカは、ツツイカの中で最もどう猛な性格。獲物を見つけたらものすごい勢いで飛んできて、一気に抱きかかえて鋭いカラストンビで貪り食らう。したがってスッテに加えるアクションも、ジギングのように激しい動きを好む傾向にあり、ジャークしている途中でひったくっていくこともある。
アカイカはスルメより小型で、比較的おとなしい性格。激しいアクションを嫌い、おとなしめの動きの後のステイやフォールで抱いてくることが多い。またスルメはアカイカも捕食する。同じイケスに入れていると、いつの間にかアカイカが無残に姿になっていることも多い。そう、アカイカにとって、スルメは天敵でもあるのだ。
よってあまりにスルメが多いと、アカイカはボトムべったりに張り着いて浮いてこないこともある。
開始直後は沈黙
さて午後4時に出船。この日は橋本さん一行のチャーター便で、乗船者は8人だ。中には取材で何度かご一緒させていただいた、三重テレビのフィッシングポイントのナビゲーターである萩原香さんの姿もあった。
ゆっくりと30分ほど走って、尾鷲湾口のポイントに到着。慎重に場所を見極めていた中井船長が船を止めてアンカーを投入。船が落ち着いたところで開始の合図が出た。といってもまだ周囲は薄明るい。皆さんのんびり準備を進めていく。
橋本さんをはじめ、ほとんどの人がメタルスッテの他にバチコンアジングの準備もしている。ここ最近はアジも好調のようで、40cm近い良型交じりで、いい日には入れ食いになることもあるようだ。前日も時合いは短かったものの、アジラッシュがあったとのこと。
まずはバチコンで探りを入れていくが、最近のアジは時合いがはっきりしているようで誰にもアタリはない。ほどなく集魚灯が点灯されると、1人、また1人とメタルスッテに切り替えていく。
だが、誰にもアタリはない。周囲が闇に包まれてもロッドが曲がる様子はない。アレ?おかしい……と思ったが、中井船長は余裕の表情。6時になろうかという時、最初にサオを曲げたのはやはりこの人、萩原さんだ。
スルメイカ登場
「30mできました!」とのことで、ロッドはひん曲がって豪快なジェット噴射が繰り返される。どうやらスルメイカのようだ。リーダーを持って抜き上げたのは、胴長30cm近い黒光りするでっかいスルメイカ。カゴに落としても身をくねらせて抵抗する。
そしてここからそれまでの沈黙がウソのようなラッシュ突入。あちこちで豪快にロッドが絞り込まれ、次々スルメイカが上がる。サイズはどれもデカい。このデカいスルメがダブルで掛かって、悲鳴を上げる人も。
ここで注意点。この時期のスルメはサイズがいいので、抜き上げ時にロッドを立て過ぎないようにしたい。ダブルだとその重さもなかなかで、ロッドを立て過ぎると破損につながる。腕をひじで曲げて持ち上げ、ロッドが水平に近い状態を意識して抜き上げよう。
またスルメのカラストンビ(クチバシ)は鋭く、かまれたら大ケガになりかねない。手でつかむようなことはせず、そっとスッテを返してカゴに落とそう。
ビッグアオリ登場
さて水面にはイワシなどのベイトの他、その下にはベイトを追うサバの姿も見えた。ここで中井船長も初めてというミラクル。スッテにサバがアタックし丸のみ→そのサバにアオリイカが襲いかかる→サバのエラから出たスッテのカンナがアオリイカの触腕にヒット。
こんなウソのようなホントの出来事が、目の前で起こってしまいコレには船中大盛り上がり。しかも上がったアオリイカはキロアップの良型だった。こんなことがあるから釣りは面白い。
アカイカも良型
だがここまでアカイカは船中で1匹が姿を見せたのみ。皆さん高活性のスルメに夢中で、アカイカは二の次になっていたようだ。ここで中井船長に釣り分けについて聞くと、やはりレンジを探り分けるのが一番とのことだった。
ざっくりとだが、アカイカはボトム付近、スルメは中層から上層。そして前述もしたが、アクションの違い。アカイカは激しいアクションについていけないことが多いので、ステイを長めにしてアクションもおとなしめを心がけるのがいい。
そんななかこの釣行の幹事の橋本さんが、ペットボトルサイズのアカイカをキャッチ。続けて萩原さんも良型のアカイカを抜き上げる。
メタルスッテ女王が爆釣
だがこの日のアカイカはスルメが元気すぎたせいか、やや活性は低かったように思う。やがて9時を回ると、スルメの勢いも徐々に落ちてきてまったりとした空気が流れ始めた。
皆さん休憩したりバチコンをしたりと、先ほどまでのラッシュとは打って変わってのんびりした様子。だがそんななかでも1人サオを曲げ続ける人が……。そう、萩原さんだ。私は萩原さんの隣でサオを出していたのだが、こちらが1匹釣る間に5匹ほど立て続けに釣り上げている。誰もが「時合い終わったね〜」なんて話しているが、1人時合い継続中といった感じなのだ。
さらにバチコンに切り替え、良型アジ、表層では大サバも連発。1人で釣りまくって、当然のようにサオ頭。真剣に釣り続けていた橋本さんですら、2番手に甘んじるほどの釣りっぷりだった。
頻繁にアクションを入れよう
あまりに釣りまくるので萩原さんにコツを聞いてみた。するとやはり頻繁にアクションを入れること、そしてステイは短めに、とのことだった。
見ていると任意のレンジまでスッテを落とした後、ジギングのように激しく2〜3回シャクってステイ。ステイは2〜4秒といったところか。
さらにはリールを巻かずに、激しく2回、3回シャクってすっと落とす。同じレンジでもシャクリ幅の分、しっかりスッテを動かしてスルメの目を引くのだ。
アタリは止めてすぐ出ることが多い。これで乗らなかったら、その場でシェイク。たまらず抱き直してくることも多く、これで乗せ損ねたイカを何度も掛け直していた。
エサ巻きスッテ
他に奥の手として萩原さんが教えてくれたのがエサ巻きスッテだ。特にスルメイカには有効で、専用のスッテに鶏のササミやキビナゴを巻き付ける。ササミは専用のパウダーや漬け込み液でしっかり締めて、エサ持ちを良くすることが大事だ。キビナゴよりもササミの方が、エサ持ちはさらに良い。
ベイトのいるレンジを集中攻撃
またベイト反応の出るレンジを攻めることも大事だと教えてくれた。特に15m前後の浅いレンジで濃い反応が出た時は、素早くレンジを合わせて3連発。こんな観察眼も大事になってくる。
この日は20〜30mでアタリが出ることが多かったが、萩原さんもこの範囲でスッテを頻繁に往復させることで、多くのアタリを引き出していた。
そして午後11時に終了。アカイカはやや少なめだったが、皆さんボリューム満点のスルメイカの釣果に大満足。
この尾鷲湾口のメタルスッテゲーム、これから最盛期を迎える。高水温でヤリイカは期待できないかもしれないが、おいしいアカイカに強烈パワーのスルメイカは安定して狙えそうだ。寒さも吹き飛ばすほどの熱いメタルスッテゲーム、初釣りがまだの人はぜひチャレンジしてほしい。
<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>
この記事は『週刊つりニュース中部版』2025年1月17日号に掲載された記事を再編集したものになります。