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娘に合うと思った保育園を3ヶ月で転園!?ことの顛末と母の自戒

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娘に合うと思った保育園を3ヶ月で転園!?ことの顛末と母の自戒

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

長女とは別の保育園へ

以前にも記事にさせていただいたとおり、次女の入園先を長女と同じ公立のC園にするか?活発な次女に合っていそうな私立のD園にするか?で迷っていた私。C園もとても良い園なので悩んだのですが、最終的に第一希望はD園にしました。それは「それぞれに合う環境を選んであげたい」という親心からだったのですが……。

結論からいうと、次女は今、転園して長女と同じC園に通っています。
今回は、親の思う「わが子に合っていそう」と実際の「園生活に馴染めるか」は全く別なのだと痛感したお話です。

「優等生」だった4月、「問題児」に変身した5月

次女のあずさは、D園に通う日をそれはもう楽しみにしていました。

あずさは2歳になりたての頃に「①癇癪の強さ」「②物怖じしなさ」について長女(知的な遅れを伴うASD/自閉スペクトラム症)の療育先から指摘を受け、療育に通ってきました。その甲斐あってか①②の点は解消されていき、療育の先生方から「あずさちゃんなら保育園もへっちゃらでしょう」と太鼓判を押されてD園の門をくぐりました。

実際、入園後しばらくは楽しそうに過ごしており、D園の先生方からも「しっかり者ですね」と言われていたのですが……。
様子が変わったのは5月からです。登園を渋るようになり、こんな言葉を聞くようになりました。

D園の先生に話を聞くと、「理解しているのに指示を聞かなくなった」「執着が強い」などの困りごとが増えたそうで、さぞ先生方の手を煩わせているのだろうと危機感を覚えました。

大きくなる送迎時の負担

入室に時間がかかるようになり、困ったことが2つありました。

1つは、付き添ってくれている長女のまゆみが待ちあぐねてウロウロするようになってしまったこと。
「まゆみも落ち着いてきたし、一緒に待つくらい余裕よね」と思っていたのが、【探索心に火の点いたまゆみが制止を重ねられてパニックを起こす前にあずさを説得して送り出すチキンレース】が週4で開催されることになりました。

これがもし園庭から送迎するスタイルの園なら、遊ぶまゆみを見守りながらあずさをなだめることもできたかもしれません。しかしD園は建物に入って廊下で送迎するスタイル。分かっていて、問題ないと思ってここを選んだのは私です。
まゆみを先にC園へ預けようにも、先生の加配が必要なまゆみは登園時間が8:45~と決まっており、反対にあずさのD園は8:50までの入室が原則だったため登園順を逆にすることもできません。

もう1つの困りごとは、D園の子ども達がまゆみを囃し立てるようになったことです。
階段に寝そべったりクラスに潜り込んだりするまゆみを面白がって、「まゆみぃ!」と声を上げるようになりました。私がそう言って止めていたのを、園児達が悪気なくマネしてしまったのです。あっマズイ!とすぐに改めましたが、もう後の祭りでした。

これはまゆみにとってもあずさにとってもつらかったと思います。まゆみは不安からか送迎時に抱っこでの移動を求めるようになりました。私の声掛けの悪さでほかの子ども達に人をからかう経験をさせてしまったことを猛省しながら、荷物を絡ませた片腕で20kgのまゆみを抱き上げ、もう片手であずさと手をつないで駐車場から入口までの50mをヨロヨロ歩く日々が続きました。

個人面談に呼ばれた6月

6月半ば、担任の先生に呼ばれて面談に伺いました。
あずさの聞かん坊エピソードがじゃんじゃん出て、「これを書いてほしい」と最後に出されたのは特別支援対象児の認定申請書。

まゆみの時にも書いたので加配のための書類だと思ったのですが、先生に確認すると「今年はすでに年度初めから増員されているので、新たな加配はないものと……」とのこと。じゃあ補助金が出るのかな?と思ったのですが、あずさの問題行動は視覚支援などのグッズで解決する類のものではないので、認定申請書を書きつつも「これを書いたところで改善しないのでは」と心配になりました。

あずさの状況は療育先に逐次共有していたので、この時もすぐに報告すると、保育士さんと心理士さんは「特別支援対象児!?そこまで!?」という反応……。そう、あずさは療育先では相変わらず良い子で通っており、保育園・療育先・家庭でそれぞれ見せている顔がまったく違うのでした。

本人の気持ちは

この頃のあずさは「D園たのしくない」「いきたくない」と言うばかり。
理由を聞いても黙ってしまうので、本心を聞きたくて「何を言ってもママは怒らないし悲しまないから、あずちゃんの気持ちを聞かせてほしいな」とお願いしました。すると……

との言葉が。それ先生も同じこと言ってたで……と苦笑しそうになりながら、「そうかぁ、言うこと聞いてくれへんのはツライよなぁ」と頭を撫でると、「おともだちいらない。あずちゃん、ひとりでいい」と涙ぐんでいて、あずさなりにつらい思いをしているのが伝わりました。
それまではD園の先生方に対する申し訳なさが大きかったのですが、これがきっかけで転園を視野に入れるようになりました。しかし、転園先で同じようなことになる可能性もあるので慎重に考えなくてはいけません。

あれこれ探りながらの転園

保育園・療育先・家庭で言動が変わる理由を考えた時に、おそらくD園の環境や雰囲気があずさには合わないのだろうと思いました。
あずさのクラスは30人近い大所帯なので、山登りや泥んこ遊びなどのアクティビティがいくら魅力的でも、それを楽しむ以前に騒がしさがしんどいのかもしれません。協働場面が多く、一斉指示が多いこともあずさには苦痛になっている可能性があります。また、わざと先生を困らせる行動は、多人数の中で自分だけを見てほしいという注目行動や、どこまで許されるかを測っている試し行動のような気がしました。

保育所等訪問支援の制度を使ってD園と連携を取ってもらうことも療育先に提案しましたが、問題の根が「大人数が合わない」という部分にあるならそこを変えるのは難しく、療育先からも「転園を選択肢に入れているなら訪問支援はできない。転園先でうまくいかなかった時にやりましょう」と断りがあり、覚悟を決めてD園に在園するか、転園するかの二択になりました。

さらに、療育先からは「あずさちゃんは保育園より、いっそ厳しめの幼稚園に入れてみては?」と私立幼稚園への転園も勧められましたが、私の考えではむしろ自由にいさせてくれる方針の園が合うように思えており、転園先の候補で療育先と意見が分かれたことにも悩みました。結局、経済面や通園距離からしても背伸びすることになるので幼稚園は選択肢から外すことにしましたが……。

日を置かず、市の保育担当課から特別支援対象児の認定申請に関する聞き取りの電話がありました。問題解決のために役所の人の力も借りようと思い、あずさの状況を説明した後で以下の点を相談してみました。

(1)実は転園を考えている
(2)近隣の園の空き状況が知りたい
(3)転園すると特別支援対象児の認定申請が宙ぶらりんになるが、市や園に迷惑がかかることがあるか

(3)については問題ないそうで、(1)(2)についても職員の方からさまざまなアドバイスをもらえました。
そして、まゆみが通うC園はもう定員に達していると聞いていたものの、ダメ元でC園の園長先生に相談してみると「まゆみちゃんのお迎えの時によく来るからあずさちゃんがどんな子かも分かってるし、一人ならギリギリ受け入れられますよ」と言っていただき、有難さに涙しながらC園への転園を決めました。

その後のあずさ

転園後すぐは、新担任の先生から「聞いていた話と違って、何でもやってくれる良い子です」と言われていたあずさですが、1ヶ月ほどすると「様子見」が終わったのか、大方の予想通り自分のカラーを出すようになってきました。けれどC園のほうが少人数かつ保育中の自由度が高いためか、あまり嫌がらず通ってくれています。

強調しますが、D園も決して悪い園ではありませんでした。いろんなことを考えて悩んだ末に決めた園選びでしたが、説明会や見学だけでは分からなかった部分があずさ(とまゆみ)に合わなかったのだと思います。親が良かれと思ったことでも状況に合わせて時には方向転換することも大事なのだと思いました。

今回の転園騒ぎを機に、ずっと問題を絞り切れていなかったあずさの発達の弱さについて詳しく知りたくなり、正式に発達検査を受けることにもなりました。結果は今後に活かしていければと思います。

転園したことであずさは落ち着きを取り戻し、まゆみもあずさが一緒の園になってうれしそうにしていて、それぞれにとって良い結果になったのではないかと思います。受け入れていただいたC園の園長先生には本当に感謝しています。

執筆/にれ

(監修:室伏先生より)
にれさん、転園までの詳しい経緯を共有いただき、ありがとうございました。お子さんは不快な気持ちがあっても、何が嫌なのかを認識したり、言語化したりすることが難しいことも多いですよね。癇癪や泣くことが増えたり、行き渋りをしたり、ということを通して、一生懸命SOSを発信してくれている時には、園の先生と相談してできる範囲で環境調整をすることももちろん大事なことですが、転園も重要な手段だと思います。あずさちゃんも、おつらい気持ちを、一生懸命にれさんに訴えてくれたのですね。転園は勇気のいる決断だったことと思いますが、あずさちゃん、まゆみちゃん、そしてご両親にとって、よい方向に進んで本当によかったですね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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