国政選挙でなぜあまり原発政策は語られない?
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時30分~17時、火~金曜日15時30分~17時35分)、7月16日の放送に調査報道記者の日野行介が出演。参議院選挙における、各党の原発政策について解説した。
長野智子「今回の参院選では(原発政策を)取り上げているメディアもあまりないですね」
日野行介「そもそも原発政策に関する議論って、国政選挙では毎回、低調なんです。過去に原発が争点になった選挙って地方選挙なんですよ。知事選、住民投票など。ある意味、1つの原発の新増設や再稼働の可否といった、個別の是非を問うもので。原発政策って国策の最たるものなのに、国策自体が問われたことがほぼない」
長野「なるほど」
日野「福島原発事故のあともそうです。原発政策をどうするか、という骨太な議論が行われなかった。なぜかといえば、あまりにも複雑で巨大で、辻褄合わせで大変ぐらいのレベルの複雑さ、というのが1つ。あと1つ、原発の時間軸が長いので、短期間で具体的な成果が見込めない。有権者にアピールしにくい。『票にならない』という言い方した人もいます。するとなかなか、政治家たちもここに力を入れる必要ないか、と思ってしまう」
長野「『アップデート』で毎回、日野さんは『矛盾のミルフィーユ』みたいな文言で語れるぐらいの矛盾、理不尽などを話されます。たとえば真正面から各党が議論したら、収拾がつかなくなるぐらい、きちんと辻褄合わせができないんでしょうね」
日野「結局、なんでそれができないのか。本来なら脱原発を訴えている野党はそこに踏み込むべきなんです。なぜ踏み込めないのかといえば、役所が情報を隠してしまっている。大事な情報、制作プロセスを隠して独占している。野党の、現状の原発政策に批判的な政治家に対してしっかりとした情報が渡っていない」
長野「役所って経産省ですか?」
日野「経産省だけじゃないです。原発政策に関してはいろいろな省庁が絡んでいるので。本来は情報公開請求というかたちで、出すように詰めなきゃいけないんですけど。『出せ』と言えるノウハウもないから情報も外に出てこない」
長野「なるほど」
日野「その結果、どうなるかといえば政治家、スタッフも、網羅してわかっている人がいないから、いつも水掛け論が展開されている。毎度のパターンです。国政選挙の度にむなしくなるけど私、一応、各政党の公約集、マニフェストに目を通します。福島原発の後処理も含め。何か引っかかる文言、水掛け論から一歩出ているものがないかな、と思うんです」
長野「うん、うん」
日野「実際にはほとんどなくて。各政党を見ると、役所のつくった方針や計画の文章をそのまま引用しているケース。これは推進側といっていいでしょうね。原発に対して批判的な党も党のテーゼやスローガンをそのまま載せている。何が問題かというと、具体的に議論するつもりはない、と言っているんです」
長野「(推進側と批判側)両方とも現状維持、ということですね」
日野「国会議員の大事な仕事って、公約を実現すること以前に、実現に向けて国会の場で具体的な議論を起こすことだと思うんです。それをやるつもりはない、と言っているのに等しいんですね」