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私立中に進んだ自閉症息子。往復4時間通学、教室でパニック…それでもウキウキ!?

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私立中に進んだ自閉症息子。往復4時間通学、教室でパニック…それでもウキウキ!?

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

息子の中学進学で、家族の生活が大変革!

中学校に通うようになって、まず困ったのは「学校が家から遠い」ということでした。

毎朝4時に起きて車で駅まで送り、そこから電車とスクールバスを乗り継いでもらうのですが、何しろ最寄駅からの電車が1時間に1本しかないので、ちょっと私か息子が寝過ごすともう遅刻です。

動かない体に鞭打って起きる息子も大変ですが、弁当を用意しなければいけない私はさらにその1時間前に起きなければなりません。

購買部でパンでも買えと言えれば少しは楽なのですが、なにしろ、タケルはまだ買い物をすることができないのです。

この頃、娘のいっちゃん(ASD・当時10歳)は、非24時間性睡眠覚醒症候群の診断前でしたが、不眠と過眠を繰り返していたので、私は1週間に2日は徹夜、眠れた日でも4時間ほどという過酷な日が続きました。

片道2時間の登下校よりつらいこととは…

それでも、朝晩の通学のことはまだ良いのです。
 
駅までの送迎は夫に代わってもらうこともできます。お弁当だって、いざとなれば駅で買って持たせてもいいのです。まあ息子は嫌がるので、本当に1学期に1回ぐらいしか使えない手ですが……。

私にとって一番の問題は……そうやって、やっと登校しても「迎えに来て」と電話がかかってくるときがある!
 
それも結構頻繁に!……ということなのです。

昔から音に敏感な息子

タケルは小さな頃から音に敏感で、不快な音に遭遇するとパニックを起こしたり、突然の大きな音に驚いて倒れてしまうようなこともあります。

また、一般的にはあまり問題にならないと思われるような小さな気温や、気圧の変化によって、「そんなに?」というほど体調を崩すこともしばしばでした。
 
中学生になってもその点は変わらず、授業中にパニックを起こして机に倒れ伏したり、急に「頭がイライラして音が大きく聞こえる!体調不良です!」と言って、勝手に教室から出ようとしたりということがありました。
 
学校の保健室は、タケルの通う中学棟ではなく高校棟にあったので、「中学生は行ってはならない」と思い込んでいたようで、何度先生や私が言っても絶対に行こうとはしませんでした。

そのため、タケルからSOSの電話がかかってくると、学校まで車で迎えに行くしかありません。
 
高速なら30分なんですよね。ええ、もちろんタダではありません……。

踊るように…学校を回遊するタケル

ある日、学校に用事があり、夫とタケルと一緒に職員室に向かって校舎の脇の道を歩いていた時のことです。

いつもフワフワと歩いているタケルですが、その時はいつもよりご機嫌だったようで、くるりくるりとステップを踏み踊るように歩いていました。
 
夫「何で踊るの?」

タケル「なんでもないけど踊りたい」

夫は「目のじゃまだ」とやめるように促しましたが、私は「まあまあ、今は人目がないからいいじゃない」「踊りたいときもあるよ」と言いました。
 
すると、タケルは「え?わたしいつもこんな感じよ?」と、心底意外だという顔で言うではありませんか。
 
こちらこそ意外過ぎて笑ってしまいました。

ウキウキ♪タケルのスクールライフ

家ではタケルはいろいろな面白いネタを披露して見せてくれていましたが、小学校ではそのようなおふざけは一切見せませんでした。
 
しかし、中学校では動画サイトなどで仕入れたネタを披露したり、おもしろ実験のようなことをやって友達に見せたりしていたようです。いつしか中学校はタケルにとって心を許せる場所になっていたのかもしれません。

自分の体調の変化に振り回されることがありつつも、学校で楽しく過ごすことができたタケル。当時の息子を支えてくれた学校の皆さんには本当に足を向けて寝られません。

私の時間と健康は音を立ててゴリゴリと削れていきましたが、小学校の時のように行き渋りをすることもなく、私が家で勉強を教えることもなくなった(何しろタケルの求めるレベルは高いので予習必須)ので、精神的には楽にはなりました。差し引きでも「楽」がちょっと勝っていたように思います。

思考する余裕もでき、娘が生まれて以来断っていた漫画の仕事を少しずつ再開するようにもなりました。

執筆/寺島ヒロ

(監修:初川先生より)
タケルくんの中学校生活にまつわるエピソードをありがとうございます。毎朝4時起きでないと遅刻になる生活……本人のみならず家族も含めて負担はかなり大きいと感じましたが、それでも行きたい中学校、受験してまで勝ち取った中学校なんだなということを、その背景を知ることで改めて感じました。
特性ゆえの過敏性やうまくヘルプが出せないことなどから登校できても早退するなど、コンディション調整に苦戦することもあったのですね。ただ、その一方で、同級生の前で“ネタ”を披露するなど、のびのび振舞えて、受け入れてもらえる環境もあったというのが何よりだなと感じます。
タケルくんの場合ほどではなくとも、お子さんが中学高校となるとお弁当必須の学校に進学することも多く、保護者のサポートはそうした面にもおよびますね(長距離通学だと何もかも早くなるので大変ですね。ヒロさんは「時間と健康」が「ゴリゴリ音を立てて削られて」いったとのこと……本当にお疲れ様でした!)。学習については保護者がサポートしきれなくなることも増えますし、そのほかのことも中学高校だと保護者が支えきれない面も多くあります。だからこそ、同級生や仲間、先生方とうまくやっていける環境というものがお子さん本人にとってとても支えになるだろうと感じます。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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