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【必読】ナイアンティックは「ポケモンGO」をこう作っている / ビジュアル面から迫る特別インタビュー

ロケットニュース24

やあ、ポケモンGOトレーナーのみんな! いきなりだけどまずはお詫びから。みんな、すまん! 実はこの記事でお伝えするインタビューは、昨年11月に開催された「ワイルドエリア福岡」で取材したものだ。

あれから2カ月? 3カ月近くも執筆出来なかった理由は後述するとして、この記事では「ポケモンGOの作り方」について、ビジュアル面から迫っていきたいと思う。ズバリ、必読DA!

・謝罪

まずは簡潔に言い訳を述べておくと、公開に時間がかかった理由は「インタビュー内容が思いのほか難しかったから」である。もちろん親切丁寧にお答えいただいたのだが、私自身の理解が追い付かない内容も少なからずあった。

インタビュー後、同席した亀沢は「で、なんの話だったの?」とチンプンカンプン。それでも多くのトレーナーにご理解いただけるよう、お兄さんなりに嚙み砕く作業に時間がかかってしまった。本当すません!

・ポケモンGOの作り方

さて、今回インタビューに応じてくれたのは、どちらもナイアンティック社の、

シニアアートディレクター「行弘 進(ゆくひろ すすむ)」氏と、

シニアスタッフUXデザイナー「石塚 尚之(いしつか なおゆき)」氏のご両名。

行弘氏は福岡県出身とのことで、ワイルドエリアの開催には「それは本当にありがたいですよ~」と感慨深げ。“AR番長”の異名で知られる石塚氏と私は面識がありつつも、正直何をしている人なのかはイマイチわかっていなかった。

そんなお二人を通じて「ポケモンGOの作り方」と言おうか「ポケモンGOができるまで」と言おうか。そこに迫るのが本インタビューの趣旨である。それでは以下でご覧いただこう。

・みんなで考える

──お忙しい中、お時間いただきありがとうございます!

石塚「いえいえ、こちらこそありがとうございます」

行弘「よろしくお願いします」

──本日の趣旨なんですが、ポケモンGOというゲームがどう作られているのか? それをビジュアル面、デザイン面からお聞かせいただければと思っています。

行弘「はい」

石塚「了解です」

──まずはお二人のお仕事上での関係を教えていただけますか? 例えば石塚さんが発案して、行弘さんに振るみたいな流れがあるのでしょうか?

石塚「あまり順番は決めないように心がけています。みんなで一緒に “こんなものを作りたいね” と考えるのが基本ですね」

──ふむふむ。

石塚「僕らの物を作りスタイルとしては、例えば新しい遊び方を考えるとしましょう」

──はい。

石塚「そのときは、デザイナーもアーティストもゲームのルールを考える人も、それからマーケーティングも含めて、みんなで“こんなものがあったらいいね”とディスカッションすることから始まります」

・ルートの場合

──へぇ~! ちょっとルートで例えてもらってもいいでしょうか?

石塚「まず “ルートがあったらおもしろそうだね” という議論から始めて……」

行弘「ルートに可能性がありそうなら、そこからはもう試行錯誤ですよね(笑)。トレーナーにとってどれだけ楽しくなるのか? 本当に良さそうなら、まずはプロトタイプを作ります」

──ふむふむ。

行弘「それを実際にプレイしてみて“思ってたのと違う……”なんてことはしょっちゅうありますけど」

──それでボツになっちゃう企画とかあるんですか?

行弘「ありますよ。粘って粘って何度もやり直して形になるものもありますし、その際、大幅にリリースの時期がずれることもありますね」

──ルートも相当前から開発されていたと聞いたことがあります。

行弘「そうですね。本来はコロナ前のリリースを目標にしていました」

──ふむふむ。じゃあ本格的にルートを搭載しようとなったとき、お二方はどんな動きになるんですか?

石塚「そこは僕が先行することが多いですね。僕の仕事はルートがどうしたら楽しくなるのか? 満足度を感じてもらえるか? もっとやりたいと思ってもらえるか? その辺りの設計に携わっているので」

──なるほど。

石塚「その中で、こういうアイテムが必要です、こういう見た目や世界観が欲しいですということを行弘に相談する感じですね」

行弘「逆に石塚からボンヤリと “こういう機能があったらトレーナーがワクワクするんじゃないか?” という感じの相談をされることもあります」

──その際、行弘さんが気を付けていることはありますか?

行弘「やはりスマホの画面上に収めなくてはならないので、ここまでならできる、ここまでやっちゃうと他に良くない影響が出てしまう等の判断はしてます」

──ふむふむ。

行弘「あと、デザインはPCでするんですが、PC上でよく見えてもスマホだとダメなんてことは多々あります」

──確かにありそう。

行弘「それもスマホで確認すればOKではなく、例えば屋外の太陽がギラギラした環境でもハッキリ見えるか? 等は気をつけてますね。ポケモンGOは外で遊んで欲しいゲームなので」

・ローディング画面のデザイン

──なるほど~。行弘さんはアートディレクターさんですよね?

行弘「そうです。そして石塚がユーザーエクスペリエンスです」

石塚「行弘のチームはローディング画面も担当しているんですよ」

──あ! ローディング画面と言えば2024年の夏のラプラスのヤツがとても良かったですね!!

行弘「それは嬉しい。あれは僕の中でもホームランでしたね(笑)。ただローディング画面もローディング画面で難しいというか、奥深いんですよ」

──そうなんですね。

行弘「3カ月おきに様々なテーマがあって、どのポケモンを入れるのか? 前と被ってないか? その他にも色々と注意点があるんです」

──ローディング画面といえば、さり気なくシーズンのヒントが隠されていることもありますよね?

行弘「ありますね。毎回では無いんですが、入れられるときは入れたいと思ってます。影だけ出す、とかね」

──僕はGOバトルリーグが始まった際の、エレキブルのローディング画面が印象的です。エレキブルなんだ!? というところも含めて。

行弘「あれは、ああいう構図でああいうワザを見せたい気持ちがあって、背景の暗さとエレキブルの黄色がピッタリ来たんです」

──なるほど~。ちなみにローディング画面が切り替わるたび、SNSで評判を収集されたりはしますか?

行弘「私はしないですけど、アーティストはしていると思いますね。ラプラスを担当したアーティストも褒めてもらえて喜びますよ(笑)」

・ユーザーエクスペリエンスって?

──やだ嬉しい。で、僕は石塚さんとは何度かお話させていただいているんですが、正直ユーザーエクスペリエンスが何なのか全然わかっていません。

行弘「わかりづらいですよね(笑)。そうだな、例えば私がデザイン性の高いめちゃめちゃカッコいいアイテムを作ったとしましょう」

──はい。

行弘「それを実際に当てはめてみて “カッコいいけどトレーナーが違和感を得ないか?” とか “バランスは取れているのか?” などを総合的に判断するのがユーザーエクスペリエンスの仕事になります」

──わかりやすい。石塚さんはそういう仕事をしてたんですね~。

石塚「はい(笑)。例えばですね、アーティストの方たちがすごくカッコいいアイテムやアイコンを作ってくれたとしますよね?」

──はい。

石塚「それをトレーナーが100回見たとき、300回見たとき、1000回見たときどう感じるのか? そこを考えるのが僕の仕事なんですね」

──えーーーー! めっちゃ大変そう!! ちょっと具体的に教えてもらっていいですか?

石塚「そうですね……タマゴでお話しましょう。初めてタマゴが割れたときはみなさんとても注目してくれると思いますが、慣れてくると “じれったいな”と感じることはありませんか?」

──あります!

石塚「それを緊張感を保ちつつ、ユーザーが面倒に感じない最適なスピードや演出を考えるのが僕の仕事です」

行弘「あのタマゴの揺れと、ビジュアルや演出も含め、本当にベストタイミングってあるんですよ」

──なるほどーーー。なんかすごい手間がかかってるんですね。

行弘「デザイナーとしてカッコいい演出をしたい気持ちもあるんですが、それが長すぎてもダメですし。逆にシンプルすぎてゲーム性が無くなるのもダメなんですよ。それをユーザーエクスペリエンスと考えて形にしていくんです」

・協業作業

石塚「ポケストップもそうですね。僕らはこの世界が主役であって欲しいので、フォトディスクの画像に目が行って欲しいんです」

──ふむふむ。

石塚「その時、すごくデザイン性の高いポケストップだと、どうもそっちに目が行ってしまう。その時はもうちょっと抑えめのデザインにしてもらえませんか? などとお願いしたりしてますね」

──ハァ~! でも、デザイナーとしては “こっちの方が絶対にいいんだけどなー!” みたいなことってありますよね?

行弘「あります、全然あります(笑)。ただ最終的にはトレーナーのみなさんが喜んでくれるかですよね。その辺りは石塚を信頼してます」

──最近で言うと、ロケーションカードが出たときのエフェクトも超いいですよね! あの “シャッキーーーン!”ってやつです。

石塚「それも背景が実装されたとき、トレーナーに “ただ背景が付いてる” と思われたらダメだと思ったんです。僕らとしては “この場で捕まえた” ということを印象付けたいんです」

──はい。

石塚「その瞬間をトレーナーにどう興奮してもらえるか、行弘さんに “考えてもらえませんか?” とお願いしたことがあります。長すぎると邪魔ですし、短くて背景が早く見えすぎてもダメだと」

──超無茶ブリ!

石塚「しかも、最終的には背景を最も強く覚えていて欲しいんです」

──ワガママ!!

行弘「石塚のイメージが固まっているときはなるべくそれに忠実に、そうでないときは意見を出し合いながら進めていく感じですね」

──採用されないトレスが溜まりませんか?

行弘「いや、デザイナーもゲームデザイナーも、各自に膨大なアイディアがあるんですよ。ただそれを全部追加してたら、何が何だかわからなくなっちゃいますよね」

──確かに。

行弘「その意見をいいとこ取りして、ゲームをより面白くしていく。なおかつ既存のポケモンGOの遊び方を壊さないようにするのが石塚の仕事なんです。ポケモンGOの1番の良さはシンプルさですから」

・シンプル

石塚「シンプルさは本当に大事にしていて、例えばゲームも基本的にはボタンを見ず、感覚的にスマホを触ればゲームが進むような設計を心掛けています」

──え! でも言われてみれば確かにそうかも……。

石塚「メインボタンは8年間ほぼ変えてません。実は1度アップデートしてるんですが、それも気付かない程度かと思います。やはり僕らとしては、外の世界に目を向けて欲しいので」

──そうだったんだ……。

石塚「ただ、例えばレイドを退出する際のボタンは真ん中に配置していません。左上にありますよね? それは無意識ではなく、意識して退出して欲しいからです」

──確かに気付いたらレイドから出ちゃってたってことはないですもんね。

石塚「気付かれにくいとは思うんですが、その辺りの設計には気を付けてますね」

・ポケモンGO流のデザイン

──見た目という話だと、行弘さんがパワースポットやマックス粒子のデザインも担当されているんですか?

行弘「それは私ですね。ポケモンGOには、マップ上で何が目立たなくてはいけないかの優先順位があるんです。まず1番目立って欲しいのがポケモンです」

──はい。

行弘「次にジムですね。ジムは制限時間があるので、目立たないとトレーナーが見逃してしまう可能性がありますから。その辺りの優先順位を考えるのも石塚の仕事です」

──ふむふむ。

行弘「その中でパワースポットの優先順位があって、それに伴ったデザインをしたんですが……」

──ですが?

行弘「当然、パワースポットにはパワースポットの世界観がポケモン社さんにあるんです。原作だと洞窟というか古代的というのか、そういう要素が強いデザインなんです」

──なるほど。

行弘「一方でマップ上のポケモンGOの世界観は、ちょっとした近未来感やテクノロジーを感じてもらえるようなデザインなんですね。そこに古代的なパワースポットを落とし込むのは難しかったですね」

──へぇ~。

行弘「最初は結構カッコいいデザイン案を出したんですが、あっさり却下されました(笑)」

・ゲット画面の風景について

──じゃあ、例えばポケモンのゲット画面で風景が付くようになりましたよね。あれも行弘さんのチームなんですか?

行弘「まさにそうです。あれも組み合わせが膨大にあるので、今でもブラッシュアップは続けています。川と山のような組み合わせに加えて、雪や夕暮れといった要素も加わるので」

──大変! たまに地方に出かけると「こんな風景あったんだ!?」って驚くことがあります。

行弘「それは本当にありがたいですね……! ちなみに風景については単刀直入にどうですか?」

──そうですね……正直、実装当初は重くなったりなんだりがあったので「余計なことしなくていいのに」と思ったこともありました。

行弘「はい」

──ただ、いま風景が無くなったら殺風景というか、非常に味気なく感じるでしょうね。そういう意味ではポケモンGOの進化の1つだと捉えています。

行弘「それは良かったです。風景もさらにバリエーションを増やしていきたいですね」

──無くてもゲームの進行には影響がないワケですから、ある意味で贅沢な機能ですよね。

行弘「ちょっとした遊び心も加えていて、例えば砂浜は東京の海だと手前に草が生えていたり、南国だとトロピカルな砂浜になってるんですよ」

──あ、確かにお台場の砂浜には草が生えてたかも。

行弘「砂浜は贅沢に3種類もデザインがあるんですが、例えばトレーナーがハワイに行ったとき “あ、いつもの砂浜と違う” などと感じてもらえたら嬉しいですね」

──へぇ~!

行弘「あと、今年のハロウィンの風景は自分でも良く出来てるじゃんと思いながらプレイしてました(笑)」

──ハロウィン良かったですね! ハロウィン感メッチャありました。あとはホリデーが恒例ですが、それ以外にやってみたい風景はあったりしますか?

行弘「そうですね……イベントではないんですが、例えば富士山の近くに行くと富士山が見えたり、エッフェル塔の近くではエッフェル塔が見えたりしたら面白いなとは思ってます」

──そりゃいいですね。

行弘「全部は無理でもランドマークがあるところは挑戦してみたい気持ちはあります。その場所を訪れた価値が生まれたらいいですね」

──例えば福岡のイベントなら福岡っぽいものが写り込んでてもいいですよね。

行弘「それは石塚が前から言っているんですが、ご当地っぽい要素はこれから先可能性があるかもしれません」

石塚「僕は1週間のうち1番楽しみなのが行弘とのミーティングなんですよ(笑)。色々なアイディアをシェアさせてもらってます」

・やっぱりシンプル

──とはいえ、シンプルさ第一なのでなかなか全部を採用するわけにはいかないですもんね?

行弘「そこは本当にバランスですね。ポケモンGOは子供からお年寄りまでプレイしていただいているゲームなので。そのバランスが保たれているのは、石塚を始めとするユーザーエクスペリエンスチームのおかげなんです」

──石塚さん、めっちゃエラいんですね。てっきりただのAR番長かと思ってました。

石塚「いやいや、エラくないです。ただ8年経って様々なメニューが増えてきてますよね。なので、尚更シンプルさは大事にしたいと思っています」

──例えば御社の中で共有されていることはあったりするんですか?

石塚「そうですね……。例えば新しいアイディアやデザインが上がってきたりしますよね? そんなときは“これは3年後、5年後を見据えて考えましたか?”とは伝えています」

──えーーーー! 俺の上司だったらすごくヤダーーーー!!

石塚「いやいや(笑)。例えば、この機能を追加するとして、将来的に大きな機能になっていったら、他のこの部分が見えづらくなっちゃうよね? という感じですかね」

──小姑みたーーーい!

行弘「これが重要なんですよ。何でもかんでも追加しても、結局プレイしづらくなってしまうのはトレーナーですから。しかもせっかく時間をかけるなら、将来的に展開していけるものがいいですよね」

──確かに。

行弘「本当にみんなアイディアはあるんです。ただそれを長期的な視点で考えて、時には衝突しながらも取捨選択するのが石塚や石塚のチームなんです」

──石塚さん、武士みたいですね。

石塚「いやー。だって例えばクローズボタンをみなさん1日100回押しているとしましょう。トレーナー数を考えたら1000万回、1億回になるかもしれません」

──はい。

石塚「その1億回のストレスを考えたら、僕が言うとき言わなきゃいけないと思うんですよね」

行弘「石塚は厳しいときはかなり厳しいんですよ(笑)」

──Xに可愛いARの投稿をしてるだけじゃないんですね。

行弘「石塚は両方ある感じですかね」

──いや、なんとなく雰囲気は理解できました。8年前と比較して様々な機能が追加されましたが、それでもポケモンGOはシンプルなゲームだと思っています。

石塚「ありがとうございます。やはり先ほど行弘が言ったように、サンジュンさんのようなガチ勢の方もいれば、とてもカジュアルにプレイされる方もいらっしゃるので」

──それでも進化していると思えるのは、たゆまぬ地道な積み重ねなんですねぇ。大変勉強になりました。

・慎重かつ慎重に

想像以上のボリュームになってしまったが、雰囲気は感じ取っていただけただろうか? かいつまんで言えば、ポケモンGOは目先の派手さを取るのではなく、数年後を見据えつつ慎重に慎重に進化しているようだ。

また、あえて表記はしなかったが、アメリカの会社ゆえ「ナオさん」「ススムさん」とお互いに呼び合っていた2人だが、きっと意見をぶつけ合うこともあるのだろう。どちらも別の意味で「ポケモンGOガチ勢」であることは間違いない。

そして何度も出てきたように、ポケモンGOはシンプルなゲームである。一般的にシンプルなゲームは飽きられてしまいがちだが、私も含めそうなっていないのがすごいところ。

それにはポケモン自体の魅力もさることながら、ナイアンティック社のたゆまぬ努力があるのだろう。何かと辛口な意見が寄せられることが多いが、個人的にはやはりすごい企業だと思っている。

とにもかくにも、ようやくこの記事を公開出来て私としても一安心。今後も機会があればナイアンティック社へのインタビューを試みる所存だ。それではトレーナー諸君の健闘を祈る!

参考リンク:ポケモンGO公式サイト
執筆:P.K.サンジュン
Photo:c 2016-2024 Niantic. c 2024 Pokemon. c 1995-2024 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
ScreenShot:ポケモンGO (iOS)

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