美味しい曖昧[ライブレポート]圧巻のパフォーマンスでアイドルとしての存在証明を見事に見せた東名阪ワンマンツアーファイナル「美味しい曖昧の音楽で、みんなの日常を支えます」
美味しい曖昧が、11月9日(土)に渋谷・duo MUSIC EXCHANGEにて東名阪ワンマンツアー<マジカルアプリコット>ファイナル公演を開催した。
凡やよい、幽花はるか、切兎うずめ、双詩科なのはの4名は、表現力豊かなパフォーマンスで多彩なサウンドを聴かせる美味しい曖昧の楽曲の世界観を見事に表現。フロアいっぱいに詰めかけた観客も熱量のあるレスポンスをステージに送り、熱狂の空間を作り上げていた。
4人が強い想いをこめたステージングで美味しい曖昧というアイドルの存在証明を見せ、輝く未来に向けての新たな一歩を踏み出した同公演の模様をお伝えしよう。
ダンサブルなトラックが鳴り出し、舞台袖からメンバーによる気合い入れの掛け声が聴こえた。そして、SE「ma ma ma」に合わせて凛々しい面持ちで4人が登場。
リズムに乗ってフロアのクラップが大きく高鳴る中、4人が歌声を合わせる。切兎うずめがオーディエンスの熱をさらに煽るように“オイ!オイ!”と扇動すると、その声は何倍にも膨れ上がった。「マジカルリズム」でライブはスタートした。
美味しい曖昧の東名阪ワンマンツアー<マジカルアプリコット>が11月9日(土)、渋谷duo MUSIC EXCHANGEでファイナルを迎えた。
彩負屋ねむりは活動休止中、うずめは膝の治療によりステージ上手固定の着座でのパフォーマンスという変則的なパフォーマンスとなったが、4人は堂々たるパフォーマンスでツアーを締め括った。
「マジカルリズム」をリズミカルに終えると、うずめが“ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!”とさらにフロアを煽っていく。
“みんなー! ツアーファイナル楽しみにしてきましたかー? 私もです! じゃあ、みんなのこと幸せに……させるよ”
双詩科なのはの言葉から、すっぽ抜けていくようなリズムと耳馴染みはよいが難解なメロディが病みつきになる「角砂糖とセイロン」へ。小気味よいリズムと歯切れのよいギターのカッティング、複雑に絡むバンドアンサンブルのオケを縫うように紡がれる4人のボーカリゼーションが心地よい。これぞ美味しい曖昧の大きな魅力だ。ゴージャスなホーンセクションがファンクに高鳴る「生意気ねチェリー」では大人な色気を放ちながら、ステージを所狭しに闊歩しながら魅せていく。着座のうずめも上半身を大きく使い、全力で楽曲世界を体現する。そうした彼女に寄り添う3人。変則的だからこそできるパフォーマンスを最大限に活かしている。
“リズムキープを完璧なものしたい”と、凡やよいが誘うオーディエンスとのコール&レスポンスならぬ、リズム&レスポンスから突入した「あまあま」、そして「ユングちゃん」と続けざまに攻めていく。
ムーディなインターバルBGMを挟み、「dreamy dreamy」へ。やよいと幽花はるかの巧妙なハモりが優しく響き、柔らかなステージングで魅了する。この日は4〜5曲ごとに60秒ほどのインターバルを挟んで進行していった。セクションごとの世界観を演出するBGMがライブ運びに絶大な効果を生んでいた。
燦々とした「ユーグレナはわかんない」、メルヘンライクなリズムの「パレパレ」と、アイドルらしいハッピーなポップ性を撒き散らかす、……と思えば、「毒針」では赤と緑に染まったステージ上を妖しく美しく舞い踊り、クールにキメる「氷に鏤め水に描く」と、グループとしての振り幅で圧倒するセクションだった。
そして、2回目のインターバルを挟んだ3セクション目は異国情緒ゾーンというべきもの。ダンサブルに決めたステージングにオーディエンスは酔いしれた。
「Qton」はどこかアラビアンな雰囲気を醸しながら、はるかの眩いオーラを筆頭に妖艶に魅せ、「ダンスダンスダンス」はあでやかさとテクニカルな側面がクロスオーバーしていく4人のダンスパフォーマンスで圧倒。そのまま滑稽なリズムに乗って「ナブルナブルナブル」へ傾れ込み、コミカルかつスキルフルなステージングがカオティックな展開へと誘う。さらにたたみ掛けるように「好きだよ。」を叩き込んだ。エッジの効いたカッティングギターとうずめのロックな太い声がさらに会場の熱気をこれでもかというほど高め、やよいとはるかがしなやかにポップ性を昇華する。最後はなのはのアイドルらしい決め台詞《好きだよ》がキュートに響き、フロアから歓声が巻き起こった。
やよいの優しい歌声から始まった「「詰」と「昧」」。ゆったりとしたサウンドと柔らかい歌声、ストーリー性のあるパフォーマンスが先ほどまでとは一味違うライブ空間を作っていく。優しい中に強さをありありと感じた「N.A.」。“欲張りだからみんなの声まだまだ聞きたいんだけど、いいかな”、うずめの問いかけにオーディエンスも全力の掛け声で応えた「Life is Short」は急性な楽曲展開をなぞりながら《誰かの夢にならなくちゃ》とアイドルとしての本懐を歌に乗せていく。続く「サイカイノユメ」は、そうした美味しい曖昧としての自分たちの裏側にある弱さや葛藤といった気持ちをゆったりとしたメロディに重ねる。聴き手の情緒を弄るように。
“美味しい曖昧の音楽で、みんなの日常を支えます”
やよいの言葉から「AIMAI」で締め括ったこのセクションは、4人が美味しい曖昧である理由を歌とパフォーマンスで証明した大きなハイライトであった。
最後のインターバルを挟んで陽気な「サプリメ」からの最終セクション。“もうすぐファイナル終わっちゃうけど、終わりって始まりだから!”と、うずめが高らかに言い放ち、美味しい曖昧らしい一筋縄ではいかないポップチューンを矢継ぎ早に投下。ラップ風の掛け合いが楽しい祝祭感に溢れた「LATER ALLIGATOR」、4人のストレートなせめぎ合いにオーディエンスも声と身体いっぱいで応えた「ナチュラルアレルギー」へと、昂揚感とハッピーな雰囲気が会場を包み込んでいく。
“忘れられない日を更新できてたら嬉しいです”
“これからも楽しいことがしたいです!”
各メンバーが想いの丈をぶつけながらのラストナンバーは「ステフリ!」。軽快なビートに乗って、ステージの4人もフロアのオーディエンスも手を挙げ、声を上げ、一心不乱に踊ってジャンプした。
“美味しい曖昧って、唯一無二だと思います。今まで関わってくれたすべての人たちが私たちを唯一無二にしてくれました!”
アウトロでやよいが口にしたことは、美味しい曖昧というグループを表す言葉そのものだった。そのことをありありと魅せつけたツアーファイナルだった。
“……だからこれからもよろしくお願いします”
と、最後の最後に楽曲の尺に収まり切らなかった(!?)、やよいのひとことが笑いを誘い、会場を和ませた。そんな茶目っけも美味しい曖昧の大きな魅力なのだ。
美味しい曖昧<マジカルアプリコット>
2024年11月9日(土)
渋谷・duo MUSIC EXCHANGE
SE.ma ma ma
1. マジカルリズム
2. 角砂糖とセイロン
3. 生意気ねチェリー
4. あまあま
5. ユングちゃん
6. dreamy dreamy
7. ユーグレナはわかんない
8. パレパレ
9. 毒針
10. 氷に鏤め水に描く
11. Qton
12. ダンスダンスダンス
13. ナブルナブルナブル
14. 好きだよ。
15. 「詰」と「昧」
16. N.A.
17. Life is Short
18. サイカイノユメ
19. AIMAI
20. サプリメ
21. LATER ALLIGATOR
22. ナチュラルアレルギー
23. ステフリ!
END SE. チアノゼ