【ミスティスラフ・チェルノフ監督「マリウポリの20日間」】ウクライナ侵攻直後、命がけの記録
静岡新聞教育文化部が200字でお届けする「県内アートさんぽ」。今回は、清水町のシネプラザサントムーンで6月20日まで上映中のミスティスラフ・チェルノフ監督「マリウポリの20日間」。監督、脚本、製作、撮影としてクレジットされているのは、2022年2月22日、ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて東部の港湾都市マリウポリに入ったAP通信のウクライナ人記者。ロシア軍に包囲された街に唯一残ったジャーナリストが、戦争の容赦ない実像を緊迫した映像で捉えた。2024年アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞受賞。
空爆の衝撃波で街灯が揺れる。窓の外には車体に「Z」のロシア軍戦車。砲がゆっくりこちらに向けられる。我々が「情報」として受け取っている戦争の実相を、肌に粟立つような恐怖を携えて伝える映像の数々。多くの映画を見たが、体がここまで熱くなったのは初めてだ。マリウポリの行政職員が空き地に深さ2㍍ほどの「溝」を掘り、遺体を次々投げ込む場面が衝撃的。「こうするしかない」を無数に生み出す戦争の罪深さを思い知った。(は)