人工光だけで植物を生産できる?植物工場とは?【LED LIGHT 室内栽培基本BOOK】
人工光だけを使って作物を量産する植物工場とは?
完全に生育環境をコントロールできる植物工場
植物工場は自然の気象条件に左右されずに、完全制御された環境下で作物を栽培する施設で、完全人工光型、太陽光併用型、太陽光利用型などの種類があります。
完全人工光型植物工場では、LED などの人工光源のみを使用し、工場内では、温度、湿度、光の強度、スペクトル、二酸化炭素濃度などが精密に管理されているため、一年中安定して高品質な作物を生産することができます。
これに対し、太陽光併用型では自然光と人工光を組み合わせることで、エネルギーコストを抑えつつ効率的な栽培を目的としています。また、太陽光利用型植物工場は、温室を使用して自然光を最大限に活用しつつ、一部の環境要素を人工的に制御するというものです。
植物工場のメリットは、安定して高品質な作物を生産できるという点だけではありません。その中でも特に重要なのは、病害虫のリスクが低減されるということ。
完全に密閉された空間で、しかも水耕栽培ということであれば、害虫リスクは大幅に軽減できます。それゆえに農薬を使わずに済むため、無農薬という付加価値を生み出すことができるのです。
さらに、完全人工光型は都市のビルや地下空間に設置されることが多く、都市部での食料生産が可能となり、消費地との距離がほとんどなくなるため、輸送コストと環境負荷の削減にも大きく貢献することになります。
これから期待が広がる植物工場の課題
植物工場の技術は、これまでの土壌依存を減らし、農薬の使用を抑えることで、持続可能な農業を支える役割も果たします。都市農業の推進や災害時の食料供給の安定化、さらには農業技術の研究開発の場としても利用されており、今後の展開にますます注目が集まっていくはずです。
ただ一方で、植物工場は高額な初期投資が必要であり、設備の維持管理や運営にも高度な技術が求められるため、その普及には経済的および技術的な課題があります。
特に、完全人工光型植物工場はエネルギーコストが高いため、LED ライトのエネルギー効率が高くなってきたとはいえ、安定的な運営のためには、さらなるエネルギー効率の向上やコスト削減が必要です。これらの課題解決が今後の展開において重要な鍵となるでしょう。
植物工場と畑の違い
【出典】『LED LIGHT 室内栽培基本BOOK』著:日本文芸社(編集)