全米から選抜された若き精鋭たちが初来日 ソリストはヴァイオリンのレイ・チェン
アメリカを代表するコンサートホール、カーネギーホールは毎年夏に全米から才能ある若い音楽家(16~19歳)をオーディションで選抜し、ナショナル・ユース・オーケストラ(NYO―USA)を結成している。2025年夏、その才気あふれる精鋭たちによるオーケストラが初の日本公演を行う。今年の指揮者は、巨匠ジャナンドレア・ノセダ。ワシントン・ナショナル交響楽団音楽監督やチューリッヒ歌劇場音楽総監督などを務め、世界の主要なオペラハウスやオーケストラで引っ張りだこのノセダがNYO-USAの指揮を引き受けたのだから、このユースオーケストラの実力は想像に難くない。
「随分前からカーネギーホールのディレクターよりお話をいただいていましたが、なかなか時間が取れませんでした。今回は日本ツアーもあると聞き、私のスケジュールの都合も合いましたので承諾しました。指揮者仲間からもすごくいいオーケストラだと聞いていて、今から楽しみです」とノセダは語る。
NHK交響楽団の定期演奏会にもしばしば登場しており、日本でもおなじみのノセダ。実はライフワークとして、毎年必ず若い音楽家の指導に携わっている。
「私は次世代の音楽家の育成を重要な仕事だと考えており、昨年はEUユースオーケストラとともにヨーロッパツアーをしました。ほかにも、ジョージアで開催されるツィナンダリ音楽祭でユースオーケストラの音楽監督を務めています。ですので、毎シーズン少なくとも2つのユースオーケストラを指揮します。さらに、25年1月末にはワシントンで若い指揮者を対象にしたワークショップも実施しました。若い音楽家と向き合う時には、私のこれまでの経験や人生で得た教訓も伝えるようにしています。彼らにとってこうした話を聞くことが、音楽家としての基礎を形作ることになると思うからです。彼らからはエネルギーや音楽をする喜びが伝わってくるので、私もすごくいい経験となっています」
今回のコンサートでは、ヴァイオリンのレイ・チェンがメンデルスゾーンの協奏曲を弾く。「これまでに何度かレイ・チェンとの共演の話はあったのですが、今回初めて実現します。すごく期待しています。メンデルスゾーンの協奏曲は作曲家の晩年の作品であり、美しいだけでなく円熟味を帯びています。若いオーケストラ、若いソリストが、円熟味を帯びた協奏曲を演奏するというのは良いコンビネーションではないでしょうか」
後半のプログラムはラフマニノフの交響曲第2番。1997年から約10年間、マリインスキー劇場で首席客演指揮者を務めたノセダにとって、ラフマニノフは特別だという。「ラフマニノフの音楽は私の血潮となっています。交響曲第2番は感情と構造が見事に統合された作品なので、日本のお客様にも喜んでいただけると思います」と熱く語る。
ノセダの初来日は2000年、マリインスキー劇場の日本公演だった。「この間に日本で素晴らしいファンとの出会いがありました。ザ・シンフォニーホールでも2回演奏しましたが、素晴らしいホールです。毎年日本へ行きたいと思っているほど、私は日本が大好きです。今回のコンサート、ぜひ私に会いに来てください」。全米の才能が結集するNYO-USAのエネルギッシュなサウンドと、彼らを導く名匠ノセダのコラボレーションに期待したい。
文=出水奈美