「男の子の親」が知っておくべき「男性器」の知識・病気【専門医の解説】
子どもの「男性器」に関する記事で反響があった記事5選を一気読み。「むく・むかない」問題から危険性の高い病気など、乳幼児期から思春期まで。専門医が教えるまとめ記事。
【画像➡】男児の男性器はむく?むかない? 構造・状態・機能を見る男児を育てる多くのママが、男児の性器の見守り方に不安や戸惑いを感じています。親として、子どもの成長に合わせて、男性器をどのようにケアすればよいのでしょうか。コクリコでは泌尿器科医の岡田百合香先生に、乳幼児期から思春期までの男性器の知識と病気についてくわしく取材。特に大きな反響があった記事をまとめました。
1)泌尿器科医が教える男児の「むく・むかない」
約7000人もの男性器を診察してきた泌尿器科医の岡田百合香先生。男性医師が多い泌尿器科医の中で、数少ない子育て経験を持つ泌尿器科医として保護者からの悩みに答えています。
岡田先生が開催する「ママのためのおちんちん講座」はキャンセル待ちが出るほど人気。「おちんちんをどう扱ったらいいのかわからない」と悩むママたちに、男性器の基本的な構造からわかりやすく解説しています。
そんなママたちから聞くもっとも多い悩みは、おちんちんを「むくのか・むかないのか」なのです。気になる答えは「無理に剝(は)がしてむく必要はない」です。
「成長によって包皮と亀頭の癒着は自然に剝(は)がれていきます。『包皮は本来、亀頭を保護する役割を持っている』と考えれば、まだ生殖年齢ではない子どもの亀頭が包皮に覆われているのは理にかなっているんです」と岡田先生。
「おちんちんはむけている状態が良い」という、間違った価値観が蔓延していることに岡田先生は警鐘を鳴らします。むいたほうが良いと主張する人の理由は大きくふたつあり、ひとつは清潔に保つため、もうひとつは真性包茎になるのを防ぐため。ただ、それも岡田先生によると、医学的根拠にとぼしいものです。
排尿や性行為に支障があるタイプの包茎でなければ、日常生活を送るうえで問題はありません。しかし、実際に多くの男性が、おちんちんの状態で、自己肯定感を著しく低下させている事実もある、と岡田先生。
「むけている=亀頭に包皮があるか否か」に振り回される風習からは、脱するべきです。女性が胸のサイズや形を気にするのも同じことといえるでしょう。
「身体のパーツは本当に人それぞれ。他人と比べて優劣をつけたり、不安をあおる社会や習慣とはおさらばしましょう」とのメッセージも。
顔・体に間違った良し悪しをつけたり、コンプレックスを持ったりしない。これは大人の私たちがまず取り入れつつ、子どもたちへも伝えていきたい大切な価値観です。
➡注目記事➡子どものおちんちんはむくべき!? 7000人の男性器を診たママ泌尿器科医が伝授
2)子どもの性器への興味と対処法
おちんちんをよく触る、性器で遊ぶ……。多くの親が心配する行動について、自然な好奇心の表れだと泌尿器科医・岡田百合香先生は指摘。
「プライベートゾーンだから人前では触らない」「清潔な手で触る」といった基本的なルールは大前提としながら、「触ることについては寛容になっていい」と言います。
岡田先生は、子育てしやすい国として有名なスウェーデンの園児たちが男女問わず、性器の名前を連呼しまくっていると聞いたことがあります。さらに大人たちはそれを注意せず、ただ見守っているだけなのだとか。
「大人の行為と子どもの行為とを過剰にリンクさせないことも大切。大人のほうが勝手におちんちんに対して抱いているタブー感を、子どもにも押し付けないようにすることが大事です」と岡田先生。大人が強く止めることで「おちんちん=汚い」とネガティブなイメージを持つ危険性もあると説明します。
➡注目記事➡「子どものおちんちん触りやシモネタは止めなくてOK!」泌尿器科医が教える注意すべき規準
3)怖い男児の病気「精巣捻転」
男児の性器の病気やトラブルについて、岡田百合香先生が特に注意を促すのが「精巣捻転」です。精巣にいく血管がねじれてしまう病気で、一刻も早く対処しないと、不妊などにつながるケースがあり、「非常に緊急性が高い病気」と説明。
発症年齢は、新生児期が10%、思春期(12~16歳がピーク)が65%と、子どもによくみられる疾患で、発症する時間帯は夜中~朝方に多くみられます。
「典型的な症状としては、急激な陰部の痛みです。突然血液が途絶える病気なので、痛みも突如現れます」(岡田先生)
腹痛や嘔吐を伴うこともあり、「お腹が痛い」と訴えることも少なくないため、胃腸炎などと間違われるケースも。年ごろの男児の場合、羞恥心で親に言いづらかったりするかもしれませんが、発症した場合、6時間以内に手術が必要ともいわれる病気のため、時間のロスはできる限り避けたい。
「いつもと様子が違うなと感じたら、『たまたま、もしくは金玉は痛くない?』と聞いてください」と岡田先生。精巣の左右差もポイントで、左右のどちらかが明らかに大きくなっていないか、精巣の位置に違いはないか、陰囊の皮膚が赤くなっていないかの確認も大切です。
夜間や休日でも、症状が出たら迷わず救急外来を受診するよう強く呼びかけています。受診の際には、受付スタッフや医療者に「精巣捻転かもしれない』」と伝えることが、遅れを防ぐ一手でもあります。
男児の親はしっかり頭に入れておきたいものです。
➡注目記事➡男の子の【精巣捻転】とは? 6時間以内に緊急手術をしないと「精巣・金玉・睾丸」が失われる危険性 泌尿器科医が詳しく解説
4)乳幼児期の「精巣トラブル」と対処法
乳幼児検診で発見されることが多い精巣の疾患も男児のママパパは覚えておきたいもの。「停留精巣」や「陰囊水腫(いんのうすいしゅ)」「鼠径(そけい)ヘルニア」など、乳幼児期特有の精巣トラブルを泌尿器科医・岡田百合香先生が解説してくれました。
停留精巣は、正常の陰囊内に精巣(金玉)がない状態で、出生後の乳児健診の際、触診で疑われることが多いです。男児の1~3%に発症するとされており、放置すると、将来の不妊症や精巣腫瘍のリスクを高めることにつながります。1歳前後~2歳ごろまでに手術治療が必要なケースも。
停留精巣と似た病気が、精巣が動きやすく陰囊内にあったりなかったりする「遊走精巣(移動性精巣)」です。入浴中や入浴直後、睡眠中など、子どもがリラックスした状態で精巣がちゃんと陰囊内にあるか、ときどきチェックしてみましょう。
出生までに閉じるべきお腹の穴が閉じなかったことで起こる疾患もあります。腹水が陰囊内にたまる病気が『陰囊水腫(いんのうすいしゅ)』です。痛みはないものの、陰囊の大きさの左右差で判明します。自然消失も期待できるため、2~3歳までは経過を見ますが、手術が必要な場合もあります。
陰囊水腫と同じメカニズムで発症するのが、「鼠径(そけい)ヘルニア」です。これは閉じるべきお腹の穴が残ったことで、そこから腸が飛び出してくる病気です。乳幼児期に多い疾患で、かかりつけの小児科医であれば判断できます。
また、意外と知られていませんが、事故で精巣がケガを負う危険性も忠告。実は飼い犬に陰茎や精巣を咬まれる事故は複数報告されているそうです。重要なのはこういった事例を保護者が知り、対策をすることです。
加えて、幼児期のころから、精巣について、「すごく大事な部分だよ。何かトラブルがあったら教えてね」と子どもへ繰り返し伝える必要性を説いています。
➡注目記事➡男の子の「精巣トラブル」 停留精巣・遊走精巣・陰囊水腫・鼠径ヘルニア…泌尿器科医が解説
5)思春期以降に多い精巣トラブルとセルフチェックの重要性
思春期になると、親が精巣のチェックをするのも難しく、子どもも恥ずかしさが加わってトラブルを親に伝えにくくなります。とはいえ、治療のタイミングを逃すわけにはいきません。
思春期以降に増える精巣の疾患について、岡田百合香先生が知っておきたい疾患の一つだというのは「ムンプス精巣炎」です。ムンプスとは流行性耳下腺炎、いわゆるおたふく風邪のこと。思春期以降におたふく風邪にかかると、約30%の割合で精巣炎も併発するといわれています。
症状は、急な発熱と、強い精巣の痛み。炎症は片方だけの精巣に起きる場合もあれば、両側の精巣に起きる場合もあります。
「ワクチンが未接種だったり、これまでおたふく風邪に罹ってない男性は、こういう疾患があることを頭に入れておきましょう。おたふく風邪に罹患した後、精巣に炎症が起こればすぐに相談してください」(岡田先生)。
もうひとつ、細菌感染による精巣の炎症で「精巣上体炎」があります。精巣上体というのは、精巣の上のほうにちょこんとかぶさっている臓器のこと。
思春期以降は性感染症、細菌感染が主な原因で、治療は基本的には対症療法で、細菌感染がある場合は抗菌薬を投与。適切な治療を受ければ、症状は1週間ほどで落ち着いてくる場合がほとんどです。
小児が精巣上体炎を起こす場合は原因不明のことも多く、繰り返す場合は、尿の通り道の先天異常などがないか検査が必要です。
また、陰囊(いんのう)にコブができる「精索静脈瘤」という病気もあります。なんと健康な人の20%もが認められる症状ですが、程度が軽いと気づかなかったり、症状がない場合も。
痛み・違和感が強い場合や不妊で悩んでいる場合には手術による治療を検討しますが、治療の時期や手術の有無は、個別の判断になることが多いと岡田先生。もし、子どものころにコブを発見したら、一度専門医にかかって診断してもらったあと、子どもにその事実を伝えておき、経過観察することが大事です。
➡注目記事➡思春期の子どもの「精巣・金玉・睾丸」はセルフチェックが重要! 泌尿器科医がわかりやすく解説
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岡田先生は「女性の乳がん自己検診のように、男性も精巣のセルフチェックを習慣づけることが大切」と言います。
セルフチェックとは、乳がんの触診と同じように、男性器を普段から触って異変がないか、精巣の左右の大きさが違ってないかなどを確認することです。子どもが幼いうちは親がチェックできますが、大きくなると本人に自ら行うように伝えていきましょう。
症状がなくとも日ごろから「定期的なチェックが大切だよ」「痛みとかあったらためらわず受診しようね」と平常心で繰り返し話しておくことが大切なのかもしれません。
思春期の羞恥心から受診が遅れることにならないよう、幼いうちから体の変化に敏感になる習慣づけ、男性器は重要な体の一部ゆえ照れずに大切にすること、そしてそれらをオープンに話せる親子関係を築いておきたいものです。
文/かたおか 由衣