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欧州食材のパイオニア・アルカンからの提案vol.15 イタリア式本格生パスタの美味しい調理法 23年12月号

料理王国

欧州食材のパイオニア・アルカンからの提案vol.15 イタリア式本格生パスタの美味しい調理法 23年12月号

「イタリア現地の味」と多くのシェフから支持されているプリマ・パスタの生パスタ。今回は、さまざまなジャンルのシェフに愛される生パスタの秘密と美味しい食べ方を、プリマ・パスタの工藤保夫社長に教わった。

「バックパッカーでイタリアを訪れたときに食べた生パスタが忘れられなくて、30歳でパスタ専門の製麺所を始めました」と話すのは「プリマ・パスタ」の代表取締役社長、工藤保夫さんだ。「もともと30歳までは、いろんな仕事をやってみようと思っていました。その中で自分が『これだ!』と思う仕事をみつけ、30歳で起業しようと決めていた。それが生パスタ作りでした」。「しかも、私はイタリアのほとんどのレストランが採用している、生地を折り返しながらコシをつけていく製法で作ろうと決めていました。でも、当時、日本にこの製法で生パスタを作っているところはなく、イタリアで修業してきたシェフやイタリア人シェフなどに話を聞いて試作し、感想を聞いてまた作り直すといった作業を繰り返していました」と工藤さん。機械も、蕎麦やうどんを作るメカを自ら改良して作った。
「見よう見まねで試行錯誤を繰り返し、3年目に入ったあたりから、ようやく量産体制に入ることができました」と工藤さんは創業当時を振り返る。

プリマ・パスタの工場で製造されたばかりの生パスタ。

小麦粉と卵をさっくりと混ぜ合わせ、練らずに圧力をかけながらシート状にまとめるのが、現地の味を再現する秘訣の1つ。

それから20年。無添加にこだわり、1000種類以上のパスタを打ってきた経験とノウハウをもとにして作った「プリマ・パスタ」の「手打ち式圧延パスタ」は、今や、国内外の一流レストランやホテルを中心に、累計400店舗以上と取引されるほどになった。「その間に廃業された同業は、少なくありませんでした。私は本場イタリアの食感を表現することを諦めずに続けてきたのがよかったのかな、と思っています」。

プリマ・パスタが採用しているのが、生地を薄くのばしながら折り重ねる製法。生パスタ特有の歯切れのよさとコシが生まれる。

2019年7月には、イタリア中部のアブルッツォ州のレストランとパスタメーカーを見学するために渡伊。「Ristorante La Bilancia」と現地のパスティフィーチョ(製麺所)を訪ねた。
「『Ristorante La Bilancia』はホテル内に併設されたレストランで、ランチ後の仕込み時に訪問しました。イタリアではパスタの仕込みは基本的にマンマの仕事。ここでも、5kg、約60人分の量をマンマが作っていましたね」。一方のパスティフィーチョは、街中のこじんまりとしたパスタ製麺所で、馴染みの客が常に3〜4人、店内で待っているような状況だった。
「昼どきに訪れたせいか、注文らしき電話がひっきりなしにかかってきていました。あの見学で、乾麺の製造時にクラックが入らないコツや、地元の人達に愛される手作りのパスタ作りを知ることができて、とてもよい経験になりました。あの経験がきっかけで、ウチでもアブルッツォ州の伝統的なパスタ、キタッラやラビオリも作るようになったんです」と工藤さん。とくにラビオリに関しては、あれだけの具を詰めたものを乾燥させるのは不可能、と工藤さんは言う。
「冷凍でも、検疫の都合で輸入は困難だと思います。冷凍解凍販売はできそうな気がするので、アブルッツォを知ってもらう意味も込めて、チャレンジしたいと思っています」と工藤さんは笑顔を見せる。

「Ristorante La Bilancia」のキッチンでパスタの仕込みをするマンマ。

粉と卵をさっくりと混ぜ合わせたら、何度かマシンにかけて、圧力をかけて固め延ばしていく。

イタリアでは店でも家でも自分たちでパスタを作る。「パスタはアイデンティティ」と工藤さん。

製麺所のスタッフと記念撮影。

具をたっぷり詰め込んだ製麺所のラビオリ。

無造作に置かれたトルテリーニ。

また、10月18日(水)には株式会社アルカンのキッチン「ターブルドート」で、工藤さんがスピーカーを務める「生パスタ勉強会」も開催された。実体験をもとにした工藤さんのお話は、どれも説得力があって興味深く、参加者達もメモを取りながら熱心に耳を傾けていた。

左から、イタリア産小麦のトンナレッリ、イタリア産小麦のタリアテッレ、国産製造小麦のトンナレッリ、国産製造小麦のタリアテッレ。国産製造小麦も、今はイタリア産小麦に引けを取らないほど良質で、パスタ向きのものも多いそうだ。

上左から、トマトを練り込んだタリアテッレ、ビーツを練り込んだタリアテッレ、イカスミを練り込んだタリオリーニ。下左から、ホウレンソウを練り込んだタリオリーニ、卵がたっぷり入ったタリアテッレ。

上段左から国産全粒粉、国産セモリナ粉、イタリア産セモリナ粉(二度挽き)、下段左から国産セモリナ粉(二度挽き)、イタリア産00粉2種。
産地や種類によって色や粒子の細かさが違う小麦粉。「イタリアの小麦は、大まかに言うと、南の方がハーブのニュアンスがあり、中・北部はもっと優しい印象です。ハーブのニュアンスならば魚介に合わせたいですね」と小麦の地域性を話す工藤さん。イタリアと日本の小麦粉はグルテン形成や挽き方などに違いがあるが、近ごろは国産小麦でもパスタに合うものが作れるようになり、地域性も出てきた。「地方の小麦を使ったパスタに合う、その土地の食材を使ったソースを、その土地のシェフが考える。地元の生産者を応援する企画をぜひやってみたい」と工藤さんは語る。

なかでも参加者達の注目を集めたのは、「なぜボロネーゼはタリアテッレで食べると美味しいのか」というテーマだ。幅広く平たいタリアテッレと、細いスパゲッティに、同じボロネーゼをからめてみる。見た目では、スパゲティのほうが具とうまく絡まっているように見える。そして実食。しばらくすると、参加者達の顔に「あれ!?」という表情が浮かんでくる。参加者を見守る工藤さんの顔には、納得の笑みが広がる。
「どうですか? 細いスパゲッティのほうはボロネーゼがよくからまっていますよね。でも、パスタよりもボロネーゼの食感や味が勝っているような気がしませんか。一方、麺の幅が広く噛みごたえのあるタリアテッレのほうは、エッジの効いた歯切れのよさと適度な歯ごたえがあって、ソースの美味しさを引き立ててくれます。パスタに歯ごたえがあるので、ソースもしっかり噛みしめることもできます。よく噛んでいるうちにタリアテッレとボロネーゼの味わいを一緒に楽しめる。ボローニャでは、ボロネーゼはタリアテッレで食べるのが定番。『プリプリ』『モチモチ』とも違う、『ブリブリ』っとした食感で、最高のボロネーゼを演出してくれます」。一方で細麺は、麺を噛みしめるというよりは、素材の歯ごたえや口の中に運んだ時の香りを楽しむのに適しています。そのため、スパゲッティはペペロンチーノのような軽いソースが向いている。卵入りの細麺、タヤリンはトリュフとの相性が最高だというのも納得です」と工藤さん。

左がタリアテッレのボロネーゼで、右がスパゲッティのボロネーゼ。右のほうが具とスパゲッティがよく絡んでいるが、ボロネーゼと相性がよいのは左のタリアテッレだ。パスタに噛み応えがあるので、具材やソースをしっかり噛みしめることになる。タリアテッレは、ボロネーゼのようなラグー系のソースやクリーム系のソースと相性がよい。「ボローニャ地方では、ボロネーゼはタリアテッレで食べる。パスタは地域によって様々な形状がありますが、郷土の食材を美味しく食べるためだと思うと面白いですよね」と工藤さん。

ほかにも参加者達は、「生パスタと乾麺」「日本の生パスタとイタリアの生パスタ」「日本で一般的な押し出し式生パスタと圧延式生パスタ」などの食べ比べを行い、違いを実感。それぞれの麺に合ったソースを選ぶことの重要性に、改めて気づかされたようだ。実際、シェフからのオーダーのなかには、「このソースに合うパスタをつくってください」という声も多いそうだ。
「ただ、最近は日本の農家さんも勉強熱心な方が多く、パスタに向く良質な小麦を栽培してくださるところが増えてきました。私はそうした生産者さんたちとコラボして、日本のローカルイタリアンの新たな世界を生み出していけたらと思っています」。

工藤 保夫
プリマ・パスタ代表取締役社長

1973年、東京生まれ。イタリアで食べた生パスタの美味しさに魅せられ、2003年に千葉県市原市に「株式会社プリマ・パスタ」を創業。手探りで始めたパスタ作りという未知なる挑戦だったが、次第にシェフ達の信頼を勝ち取り、現在では1日30~40種類のパスタを作る。

text: Shoko Yamauchi Photo: Tomoko Osada

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