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介護業界の生産性向上って?生産性向上の定義や意義をわかりやすく解説!~導入編~

ささえるラボ

介護業界の生産性向上って?生産性向上の定義や意義をわかりやすく解説!~導入編~

*この記事のポイント*
・生産性向上とは「介護の価値を高めるための業務改善」
・生産性向上を行う理由は「人材不足でも介護業務の質を高め続けるため」
・生産性向上を成功するために「今までの当たり前を考え直しましょう」

最近よく耳にする「生産性向上」って何?

執筆者/専門家

伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

みなさん「生産性向上」という言葉を最近やたらと耳にしませんか?
しかし、耳にはするけど「何のことかわからない」または「そもそも特に興味もない」という方がほとんどではないでしょうか?
でもこれからの介護業界、生産性向上とは切ってもきれない関係性となりそうです。
今回は「生産性向上って何?」をみなさんと紐解いていきたいと思います。

生産性向上とは介護の価値を高めるための業務改善

◆そもそも「生産性」とは?

「生産性」とは、モノやサービスなどの価値をどれだけ少ない労力や資源の投入によって効率的に生み出しているかという指標であると厚生労働省 山形労働局のホームページでは定義されています。※

何か工場で使う言葉のようで、私たち介護業界は関係ないじゃないかという意見が聞こえてきそうです。そのため厚生労働省では、「介護分野における生産性向上」について別途、下記の通り定義しています。
出典:厚生労働省 山形労働局生産性の向上

◆介護分野における生産性向上

厚生労働省は、介護業界の生産性向上について
「人口減少の中、介護職は限られた人数で専門性の高い介護サービスを提供しなければなりません。職員が介護業務に集中でき、いきいきと働くことのできる環境を作るため、日ごろの業務改善(すなわち生産性向上)は重要です。」
というように生産性向上を「業務改善」であると定義しています。

また、このガイドラインでは業務改善=「介護の価値を高めること」とも定義しています。
みなさんからすると介護の生産性向上と直接的に言われるより、介護の価値を高めるための業務改善と記したほうがイメージが湧きやすいですかね。

◆業務改善と業務効率化をしっかり区別したうえで生産性向上について考えましょう!

業務改善とは、時代や社会状況の変化にあわせて業務をあらため、よくすることと解釈できます。
「業務改善は全く必要がありません!」という介護事業所さんはないでしょう?そもそもそんな事業所さんがあるとすれば逆に心配です。

また、「業務改善」に似た言葉で「業務効率化」があります。
みなさん、「業務改善」と「業務効率化」の二つの言葉を混同して使用していませんか?ここでその違いを押さえておきましょう。

結論から言うと、業務効率化は業務改善の一手段です。業務改善すなわち生産性向上とは、介護の価値を高めるために職員一人あたりのアウトプットの質と量を増加させることも意味します。

つまり、今後更に深刻化する人材不足のなかで、介護の質を確保し、向上させていくことが介護現場の課題(生産性向上)であり、その手段として業務効率化があるという位置関係になります。

生産性向上はなぜ必要?

人材不足でも介護の質を上げていくために生産性向上は必要!

では、なぜ介護分野において、生産性向上という言葉が必要になったのでしょうか?
それは、今後さらに深刻化する人材不足が理由です。厚生労働省は、2025年度には約243万人、2040年度には約280万人の介護職員が必要になると推計しています。このことから2040年度には今の介護職員数のままだと、約65万人の不足となると考えられます。(令和4年度の介護職員数は約215万人)※

つまり、ざっくりまとめると、「人がいないんだから今までのような業務はできませんよ。業務改善すなわち生産性向上に介護業界みんなで取り組み、今までと同数の人材がいなくても業務を行えるよう取り組まないともう間に合いませんよ。でも効率化ばかりに目がいって介護の質は落とさないでね。むしろこんな状況でも介護の質を上げていける方法を考えましょうよ。」ということになります。
出典:厚生労働省第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について
出典:厚生労働省介護職員数の推移

出典:https://mynavi-kaigo.jp/media

そもそも生産性向上って何をすればよいの?

ここまでの読み進めた人は、「なんとなく取り組まなければならないのはわかったけど、実際何をどうすればいいの?」と思い始めていると思います。
ここで日常生活に身近な業界等での生産性向上事例(人材不足に対して何をとりくんだの?)を見てみましょう。◆身近な事例◆
1.コンビニエンスストアの生産性向上
2.飲食店の生産性向上
3.企業などにおける会議の生産性向上

1.コンビニエンスストアの生産性向上

経済産業省が2019年におこなった調査では約64%のコンビニエンスストアが人手不足であると回答しています。少し古いデータであるため、近年ではさらに人手不足感が高くなっていると考えられます。※
とあるコンビニでは人手不足で24時間運営できないと店長と本社で揉めていたニュースがありましたね。また、店員のほとんどが外国人留学生だったなんて経験はありませんか?

そのようなコンビニエンスストアで行われている生産性向上は、「無人レジ」です。

レジはコンビニの核といえる場所です。なぜなら売り上げであるお金やデータを扱うからです。
その核であるレジ係ですが、人材不足により人が担当できなくなった。または、これから担当できなくなるなど。そこで導入されたのが「無人レジ」です。

あるコンビ二では自分でバーコードリーダーを持ち、商品のバーコードを読み取り、お金を払う。盗難などのリスクを考えれば到底考えられない、でも取り組まなければコンビニは成り立たない時代となったのです。
出典:経済産業省1.従業員アンケート調査の概要

2.飲食店の生産性向上

帝国データバンクが2023年に行った調査によると飲食店正社員は61.3%が不足(非正社員は85.2%が不足)との調査結果でした。みなさんも飲食店に入った際、求人のポスターがいつも貼ってあるのをみたことがあるのではないでしょうか?※

そのような状況である飲食店の生産性向上は、「注文、支払いの無人化」です。

最近の一部の飲食店は、空いている席に座ると目の前にタッチパネルがあったり、QRコードをスマートフォンで読み取ったりして注文することが当たり前となっています。
これも以前は、店員さんが、ボールペンと注文票を持って注文をとりにきていたと思います。私も居酒屋でアルバイトをしていた経験ありますが、接客係がいないなんて考えられませんでした。最近はキッチンにしか店員さんがいない飲食店も珍しくありませんよね。
出典:帝国データバンク人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)(https://www.tdb-di.com/special-planning-survey/sp20230502.php)

3.会議の生産性向上

これは、みなさんすぐ想像つくかと思いますが、言わずと知れたオンライン会議です。

どこが生産性向上になったのか?それは、移動時間でしょう。
対面の会議しかなければ、会場まで移動しなければなりません。一方でオンライン会議では自宅からの参加も可能です。これにより国内はもちろん国外とも会議ができるようになりました。

私は、インドやベトナムと会議をしています。対面であれば移動時間が6~10時間かかります。この時間が短縮できていることは生産性向上であると言えるでしょう。

3つの生産性向上からわかること

◆今までの当たり前を考え直している

3つの生産性向上事例を見てきましたが、これらに共通することはなんでしょうか?

それは、「今までこうだったけど、本当にこれでいいのか?他に方法があるのではないか?」
という考えを起点としているということです。
つまり、今までの当たり前を疑っているんです。これを「クリティキカルシンキング=批判的思考」と言います。

私たちは変わりたくないという意識を常にもっています。
たとえば、仕事で新しい環境に変化した際は、緊張でストレスを感じたりしますよね。また、上司が代わり、業務も今までのやり方と変わる際は抵抗感をもつこともあるでしょう。
それらの要因は、変わりたくないのに変化が求められる環境に身が置かれたからです。変わろうと思ってもなかなか変われないのは、人間が「習慣の生き物」だからという考え方があります。
一説によると、毎日の行動の約40%が習慣によるものといわれています。

つまり、習慣化した業務を変えるためには、まずは、意識的に前提を疑うところからスタートすることが大切であり、意識しないと前提は疑えないということです。
「クリティカルシンキング=批判的思考」、よかったら調べてみてください。たくさん書籍が出ていますよ。

最後に:生産性向上とは何かを理解したうえで実際に取り組んでいきましょう!

さて、「生産性向上とは何?」というテーマを他業界の例も含めて紐解いてきましたがいかがでしたでしょうか?

なんとなくぼんやりしていた生産性向上について意図やどんなものかは見えてきたのではないかと思います。しかし、次は「具体的に何をすればいいの?」という声が聞こえてきますね。

それは次回「実践編」に続きます。

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