パリ市、映画制作現場での性差別・ハラスメント撲滅へ 新規定を導入
「性差別防止」への取り組みが撮影許可の取得条件に
2024年10月、パリ市は映画制作における性差別や性ハラスメントの根絶を目指し、新たな規定を発表した。今後は、パリ市内で撮影を希望するすべての制作会社に、現場での性差別および性ハラスメント防止に関する具体的な取り組みが義務付けられる。2025年1月から施行予定。
この規定に基づき、パリでの撮影許可を取得する映画制作会社は、主に以下の条件を満たした上で署名をする必要がある。
スタッフへの研修プログラムの導入
制作会社には、性差別や性暴力を防ぐ取り組みとして、現場スタッフへの研修プログラムが導入される。プログラムでは撮影スタッフだけでなく、マネージャーなどチーム全体の意識向上が求められる。
撮影現場のジェンダーバランスに配慮
撮影現場では、ジェンダーの多様性を尊重しながら、性差別をなくすよう努力しなければならない。これにより、撮影現場での女性・マイノリティの積極的な登用と、男女平等を促進する効果が期待できる。
性的シーンにおける保護措置
性的なシーンの撮影時には、出演者やスタッフが安心して作業できるよう徹底したケアが求められる。
世界的な映像ロケ地としてできること
パリ市は年間のべ約7,000日分の撮影許可証を発行しているが、新規定はひとまず映画製作のみに適用されるという。また、撮影クルーが10人未満で午前11時前の撮影の場合は対象外となる。
しかし将来的には、広告やテレビドラマ、ミュージックビデオなどの撮影現場にも広がる可能性がある。
今回の規定が導入された背景には、映画業界における長年の性差別や性ハラスメント問題が存在する。とくに2017年に世界で広がった「#MeToo」運動を機に、映画やテレビの制作現場での性暴力問題を指摘する声も高まっていた。
撮影現場では、一時的に多くのスタッフが集まるため「性ハラスメントの温床になりやすい」と言われている。パリ市は新規定の導入により、撮影現場における安全性の向上と、性差別・性ハラスメント撲滅に向けたモデルケースになることを目指す。
フランスの首都パリは、国内外の映画産業において常に重要な役割を果たしてきた。撮影ロケ地としての需要が高まっているいま、こうしてパリ市が発信することに大きな意味があるだろう。
※参考
Paris makes film shoot permits conditional on measures to fight sexism|Le Monde
No sexism allowed on Paris film sets, new charter requires|euro news
Paris imposes a charter against sexist and sexual violence on film sets|ENTREVUE.fr