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【静岡市立芹沢銈介美術館の「四季を染める 芹沢銈介の春夏秋冬」展】 四季をテーマに「えりすぐり」60点。布文字の「春夏秋冬」は必見

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市駿河区の静岡市立芹沢銈介美術館4月1日に開幕した「四季を染める 芹沢銈介の春夏秋冬」展を題材に。

染色家芹沢銈介(静岡市出身)の作品から、四季をテーマにしたものを集めた。芹沢といえば、そもそも日本の四季を強く意識させる作風と認識していたので、企画展の趣旨自体はオーソドックス。ただ、出品された60点は「えりすぐり」という言葉がぴったりだった。

個人的にはまず、第1室の「草花文二曲屏風」に目を奪われた。びょうぶの2面に赤い丸が50、藍色の丸が50。市松模様のように交互に配置されている。赤の丸には幾何学模様、藍の丸には花や草。素朴さと絢爛が同居している。藍の丸の植物が何か、考えてみるのも楽しい。アサガオ、ウメ、ツユクサ、ボタン、ユリ、キク、テッセン…。キャプションに書かれていた「模様曼荼羅」という言葉にうなづけるものがあった。

第2室では藍色の競演が楽しい。「漁具文のれん」は、闇に包まれた海のような静かな佇まいの青。漁具のガラス玉の青がきらめいて見える。対角に置かれた「波に帆掛船文のれん」はもっと黒々とした青。波や帆が抽象化され、上下で対になるようなスタイリッシュなカーブを描く。

「夏の字」は清涼な青、白く染め抜いた「夏」の字の周囲にはツユクサだろうか、タイだろうか、魚や草が装飾的に配置される。「南瓜と唐辛子文のれん」は仕立てのいいビンテージジーンズのような青。すれたような風合いがみやびな印象を与える。赤が基調の唐辛子が身をよじらせているようなS字型をしていて、静的なモチーフに動きを生んでいる。

第3室の「布文字春夏秋冬二曲屏風」も必見だ。朝鮮半島の文字絵や梵字をヒントにした、一枚の布をくねらせるように描いた「春」「夏」「秋」「冬」。芹沢のデザインセンスが凝縮されている。春は横棒三本…と空中に指を走らせたが、書き順通りにはいかない。それはそうだろう。

1文字ずつたどって驚いた。「冬」は唯一、書き順そのままである。布の動きが指の動きと一致する。画数が少ないとは言え、これは感動的である。芹沢も同じ気持ちだったに違いない。

(は)

<DATA>
■静岡市立芹沢銈介美術館「四季を染める 芹沢銈介の春夏秋冬」
住所:静岡市駿河区登呂5ー10-5 
開館:午前9時~午後4時半
休館日:毎週月曜(5月5日開館)、4月30日、5月7日
観覧料(当日):一般420円、高校・大学生260円、 小中学生100円 、未就学児無料
会期:6月15日(日)まで

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