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恋する海のギャング<ウツボ>の繁殖行動の不思議 オスがメスを海面近くまでエスコート?

サカナト

ウツボ(提供:PhotoAC)

海の岩陰を覗くと、にょろりとした体に鋭い歯。ちょっと怖い顔つきの「ウツボ」に出会うことがあります。

「海のギャング」と呼ばれることもある彼らですが、普段の暮らしぶりや、ふと訪れる恋の季節の様子には“意外な驚き”に満ちているんです。

ちょっと近寄りがたいけど、知ると面白い、ディープなウツボの世界を覗いてみましょう。

なぜ「海のギャング」? ウツボの強さのヒミツ

ウツボといえば、やはりあの鋭い歯と、岩陰から獲物(魚やタコ)に飛びかかる獰猛なイメージ。毒々しい体の模様も相まって、「ギャング」と呼ばれるのもなんだか頷けます。

一度噛みついたら離さない狩りの様子は迫力満点です。

生息域に天敵と呼べる存在はおらず、縄張りでは王様のような存在。ダイビングでも観察できる魚で、ダイバーがうっかり手を出して噛まれてしまうこともあるんだとか。

のたうつウツボ(提供:PhotoAC)

そんなちょっと怖いウツボですが、普段は岩陰などを縄張りにして、単独で静かに暮らすことが多いと言われています。

繁殖期には縄張り意識が弱まる?

年に一度、夏頃にやってくる繁殖期には、彼らの行動に変化が起きます。強い縄張り意識が少しだけ弱まり、パートナーを探す求愛行動を始めるのです。

ペアになったウツボは、1か月近く共に過ごすそう。ペア以外のオスがメスにちょっかいを出してくると、メスを守るために勇敢に追い払います。

相手の選び方は、ウツボの種類によっても少し違うようですが、見た目や大きさで相手を選んだり、オスがメスの隠れ家を訪ねてアピールしたりする、といった行動が観察されています。

無事にカップルが成立すると、二匹は一緒になって体を触れ合わせるように泳いだり、お互いに向かい合って口を大きく開けたりと、仲睦まじい姿も見せるようです。

驚きの産卵スタイル

ニセゴイシウツボ(提供:PhotoAC)

そして、ここからがウツボの繁殖において、一番驚く場面です。

普段は海底近くにいる彼らが、産卵の時になると、なんとカップルで水面近くまで上がってきます。

さらに驚くのが、その上がり方。オスがメスの口のあたりを軽くくわえて、まるでエスコートするように水面まで引っ張っていくように泳ぐことがあるんだとか。

水面近くに到達すると、2匹は体を巻きつけ合うようにしながら、メスが数万個もの卵を、オスが精子を放出。受精は体の外で行われる体外受精です。

そして産卵が終わると、カップルは別々に海底へと戻っていきます。

いまだ謎多き<ウツボの世界>

ウツボは、なぜわざわざ水面近くで産卵するのか。なぜオスはメスを口でくわえていくのか。実は、ウツボの生態にはまだ解明されていない謎がたくさんあります。

水面で受精・産卵を行うことで、卵や生まれたばかりの稚魚が海流に乗ってより広い範囲へと旅立つことができるのではないかとか、オスがメスをくわえるのは産卵のタイミングを合わせたり受精の確率を上げたりするためではないかとか、さまざまな仮説が立てられています。

そう、ウツボは怖いだけではなく、不思議と驚きに満ちているのです。次に水族館などで見かけたら、その「ギャング」のイメージの奥にある、ユニークな暮らしぶりに想いを馳せてみましょう。

(サカナトライター:おっしー)

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