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『ジョン・ウィック』ドラマ「ザ・コンチネンタル」、本家と「別物になった」とチャド・スタエルスキ監督 ─ 「我々の意見はあまり聞かれなかった」

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キアヌ・リーブス主演『ジョン・ウィック』シリーズからは、初のスピンオフ映画『バレリーナ:The World of John Wick』が飛び出そうとしている。その後には第5作やアニメ版の製作も控えており、『ジョン・ウィック』のユニバースは拡大の兆しを見せている。

最初のスピンオフとして2023年に登場していたのが「ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から」だ。で配信されたこのシリーズでは、1970年代を舞台に、ウィンストン・スコットがコンチネンタル・ホテルのニューヨーク支部支配人になるまでの前日譚が描かれた。

映画シリーズを一貫して手がけたチャド・スタエルスキは本シリーズに製作総指揮として参加しているが、実質的な関与はかなり控えめだった模様。スタエルスキは米にて、「ザ・コンチネンタル」の精神がいかに映画シリーズから離れたものになったかを振り返っている。

「キアヌと私は……、脇に追いやられたとは言いませんが、我々の意見も聞かれたものの、ほとんど取り入れられませんでした。スタジオは、我々はこういうことをやるんですと私を説得しようとしましたね。みなさん、自分たちには魔法のソースがあるんだと考えていました」。スタエルスキの言葉によれば、製作スタジオは独自のやり方で『ジョン・ウィック』の作風を再現できると自信を持っていたようだ。

しかし、作品製作とはそれほどシンプルなものではない。「バジル・イワニクの直感的プロデュース力、キアヌの奇抜なセリフ回し、そして私の頭にある、ウォン・カーウァイやアニメ、レオーネ、ベルナルド・ベルトゥッチ、アンドレイ・チャイコフスキーなどから得たビジュアルを取り除いてしまったら……、それでは同じものにはなりません」とスタエルスキは分析する。「彼らは、アナモフィックレンズを使い、奇妙なホテルを作り、奇妙なセリフを入れ、クライム・ドラマを取り入れることは簡単だと考えていました」。

『ジョン・ウィック』の醍醐味は、スタエルスキらによる職人技とも言える仕事によるものだ。「もしあなたが我々の製作プロセスを見たら、“こんなやり方で、10億ドルのシリーズをやっているの?”と言うでしょう。私は今もロンドンで次回作のロケハンをしているのですが、昨日だって良いロケ地を見つけて、それで第二幕をガラリと変えましたよ。全部書き直したんです」。経験と感性による直感的な判断の積み重ねこそが、唯一無二の作風を生み出す。

「私は素晴らしいキャストを見つけて、彼らの役を常にリライトしている。そのおかげで映画が良くなるし、有機的なものになる。絶えずアップデートしているんです。しかしスタジオというのは、自分たちが得るものにこだわり、予算の都合で脚本をロックしたがる。対して我々は、“小切手を書いてくれ、ゴールラインで会おう”という感じです。」

経済的なリスクと創造的なリスクには相入れない部分が大きく、フィルムメーカーとスタジオとで尊重するものが異なるのは仕方のないことだろう。ここでのスタエルスキの言葉は、作品を作品たらしめるエッセンスとは何なのか、それを守るためには何が必要なのか、ということを考えさせられるものだ。

シリーズ最新作『バレリーナ:The World of John Wick』は2025年8月22日、日本公開。チャド・スタエルスキは同作で製作を手がけ、キアヌ・リーブスも登場する。

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