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ポール・ウェラー【ファン歴40年のライブレポート】変わり続けることを怖れちゃいけない

Re:minder

2024年02月03日 ポール・ウェラー来日公演東京初日( EX シアター六本木)

ポール・ウェラー東京公演、開場時間15分前の熱気


オールスタンディングのライブ、何時に会場入りするか、どの位置で観るか、みなさんも毎回悩むのではないだろうか。50歳を過ぎてからというもの、正直、スタンディングのライブはなかなかの苦行。開場から開演までの長い待ち時間はしんどいし、モッシュに巻き込まれるのは御免。最近は開演時間ギリギリに行って、人が少なめの後方で壁や仕切りに寄りかかりながら観るのが通例となっている。

だが、6年ぶりのポール・ウェラー来日である。私のファン歴は40年を越える。整理番号は30番台。待ち時間がー、娘(リア・ウェラー)の前座がー、膝がー、腰がーとか、ぼやいている場合ではない。開場時間に入場して、前方で盛り上がらないでどうする。

東京公演1日目の2月3日、午後4時45分にライブ会場の六本木EXシアターに到着。2階のエントランス前はすでにたくさんの人。200人近いのでは。白髪や髪の薄い人が目につき、中高年が多いことがひと目でわかる。この日の気温は1ケタ。じんと冷えた空気が頬をなでる。だが、ここには目に見えない熱気が漂っている。

午後5時数分前、きっちり整理番号順に入場し、ステージと客席フロアのある地下3階までダッシュで駆け下りた。途中、若者に抜かされたり、ロッカーにコートやマフラーを仕舞うのに手間取ったりしながら、どうにかステージ前、下手寄りの最前に陣取った。

オープニングアクトは娘のリア・ウェラー、なんと孫も登場?


オープニングアクトがあるので、肝心のポール・ウェラー登場は午後7時頃か。だが、5時台のフロアには続々と人が詰めかけてくる。5時半頃にふと振り返ると、人人人。かなりびっしりである。チケットは売り切れたので、満員になることはわかっていたが、こんなに早く多くの観客が入場するとは。さながら、中高年UKロックファンの同窓会だ。

午後6時、オープニングアクトのリア・ウェラーがバンドメンバーと登場。母親(ディー・C・リー)に似た歌声はなかなか魅力的で、ソウル、ジャズ、R&Bを融合したらしい曲も素敵なのだが、どうしても “早くポール・ウェラー登場しないかなぁ” と思ってしまう。

リアのお腹は大きく、臨月なのではないか。バンドメンバーは、カホン(パーカッションの一種)がリアの日本人夫、キーボードがポールの次男。そうそう、開演前には2歳くらいの幼児が2〜3度ステージ横からひょこっと出てきた。あの子はリアの長男、つまりポールおじいちゃんの初孫だろう。相変わらずファミリー仲が良いことで、ちょっと微笑ましくもあり、苦々しくもあり。そう、ポール・ウェラーははっきり言って親バカなのだ(ポール・ウェラーは親バカなのか? 子煩悩ミュージシャンに物申す!参照)。

スタカン、ジャム時代の曲より、最新アルバムの曲がカッコいい


ⓒRobin Clewley

午後7時、ついにポール・ウェラーとバンドメンバーが登場。1曲目の「Rip The Pages Up」がカッコよすぎる! 2008年にリリースしたアルバム『22ドリームス』のデラックスエディション盤にしか入っていないレア曲なのだが、観客のテンションを上げるのにぴったり。

デニムジャケットを着たウェラーは、昔と変わらないすっきり体型。銀色の髪はいかにもツヤツヤで、光を受けて輝いている。テレキャスターをかき鳴らすその姿に、私の胸はときめく。親バカでもいい、おじいちゃんでもいい、やっぱりカッコいい私のヒーロー。

バンドは、ギターはウェラーファンにはおなじみのスティーブ・クラドック、その他はベース、キーボード、ツインドラム、ホーン(サックスやフルート)の6人編成。このホーンがいい仕事をしているというか、グルーヴ感のあるバンドの演奏に華やかさをプラスしている。

セットリストは、スタイルカウンシルから4曲、ジャムから1曲(2日目は2曲)、その他はソロになってからの曲。スタカン、ジャムの曲はそりゃ盛り上がるが、むしろ「Fat Pop」「On Sunset」等、最近のアルバムの曲がものすごくいい。「今年の5月にニューアルバムをリリースする」とMCで語り、創作欲は衰え知らずのようだ。ポール・ウェラーというと、“渋い” “いぶし銀” “大御所” などと言われがちなこの頃だが、この人は今も “Change” しながら新しい音を探し続けているということを実感した。

“俺は変わり続ける男” 高らかに宣言するポール・ウェラー


印象的だったのが、「Lovely audience!」とウェラーが私たちを何度もほめてくれたこと。たしかソロ初期の頃、”日本の観客はノリが悪い” “おとなしい” とお冠になり、楽屋のゴミ箱を蹴っ飛ばしたこともあったはず。私たち、これでも盛り上がっているし、何よりあなたの曲に聴き入っているんですよ、と言いたかった。それが、こんなにほめられるようになるとは。

そうそう、観客のみなさん、ノリがいいだけでなく、マナーもよかった。2日目は、横顔でなく正面からウェラーを観たいと中央寄りにいったのだが、押されたり、ぶつかられたりみたいなことは一切ない。入場時の位置をちゃんと守りながら盛り上がる。ウェラー同様、ファンも円熟しているのか、ライブに行き慣れているからこそ、互いの迷惑になることはしないのだろう。

東京1日目のラスト曲は、「The Changingman」。2日目のラスト曲、ジャム時代の「Town Called Malice」も大盛り上がりだったが、“俺は変わり続ける男”と高らかに宣言するような「The Changingman」に胸が熱くなり、泣けてきてしまった。

私たち日本の中高年も、膝がー、腰がーとかぼやいている場合じゃない。変わり続けることを怖れちゃいけないと、65歳のウェラーから教わった気がする。上気した顔にキラキラと少年少女のように輝く私たちの瞳、ポール・ウェラーもきっと見てくれたよね。

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