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地震発生時、小さな子ども2人を連れて避難するなら……準備しておくべきことは?|元自衛隊員が描く“こころの防災”#番外編②

Sitakke

Sitakke

今回は、元海上自衛隊のイラストレーターが描くマンガを通して、「“女性視点”での防災」を考えます。

(前編・後編のうち後編)

災害時の命と「こころ」を守るために

北海道在住のイラストレーター・ヤマモトクミコさん。

海上自衛隊に10年ほど勤めてから、出産を経て、イラストレーターになりました。

入隊1年目に東日本大震災の支援に従事。
護衛艦に乗り、炊き出し、救助者の支援、燃料や真水の提供、救助者や遺体の捜索など様々な支援にあたりました。

現場にいた女性隊員はわずか。「だからこそ“女性視点”での支援がとても大切だと感じた」といいます。

災害時、命と「こころ」を守るためにどんな準備が必要なのでしょうか。
漫画で防災の知恵を発信しているヤマモトさんに、防災用品を選ぶコツを聞きました。

(この記事は、TBS NES DIG『DIG防災』の内容を一部編集して再配信しています)

防災用品の準備は「状況の想定」が重要

ヤマモトさんによると、防災用品を準備するにあたって、大切なのは「災害時の状況を想定」することだといいます。
やみくもに防災用品を用意するのではなく、できるだけ“リアル”に、災害時の状況を想定した上で、必要なものを揃えることがポイントです。

・地震や台風といった災害の種類
・在宅中か、出先か
・家族や自分はどんな状況か
・電気・ガス・水道・スマートフォンはどこまで使えるか
など、実際に起こりそうな状況を想定しておくことで、何を準備すべきかが見えてきます。

「災害の種類」の想定には、自分が住んでいる地域のハザードマップがヒントになります。ハザードマップは、各自治体等のホームページで確認することができます。

今回はヤマモトさん自身の例として、以下の状況を想定しました。

【災害の種類】
震度5弱の地震、津波のおそれはない地域

【在宅中か、出先か】
在宅(ヤマモトさんは在宅ワーク中心のため)

【家族や自分の状況】
夫は外出中、子ども2人(1歳、4歳)は在宅。
自宅から子ども2人を連れて避難。避難所で夫と合流する

【電気・ガス・水道・スマートフォン】
電気・ガスは使用不可、水道とスマートフォンは使用可能

この想定に基づくと、ヤマモトさんは子ども1人を抱っこし、もう1人の手をつないで避難することになります。すると、その状態でも持てるサイズ・重さの防災リュックを備えるべきだと考えられます。

防災リュックの中身は?

ヤマモトさんは、リュック内に入れておくといい防災用品について、今回の想定状況を例に挙げながら、次のように提案します。

<食料・飲料>
・水筒
・おやつ袋
・お弁当用カトラリー
・レトルト非常食3人分

寒さの厳しい北海道では、避難所の冷え込みが想定されるため、水筒は保温できるタイプを用意。「避難所でお湯がもらえたり、在宅避難でもお湯を沸かしたとき、保温できる水筒だと温かい味噌汁やスープを作ることができ、便利です」と話します。

レトルト非常食は、家庭によって必要な量・持ち運べる量は変わりますが、ヤマモトさんの場合は重さを考えて3人分×2食分を入れています。

<体を温めるもの>
・ダウンジャケット
・使い捨てカイロ

<便利グッズ>
・布ガムテープ
・キャンプ用ロープ
・エコバックと風呂敷

<生理・衛生用品>
・衛生用品ポーチ
・女性用サニタリー用品
・大人用サイズのオムツ袋(子どものオムツのほか、使用済みの生理用品やゴミを入れるのに便利)
・ゴミ袋
・フタ付きおしりふき
・子どもの下着とオムツ
・シートマスク、個包装のスキンケアセット

<その他>
・重要書類セット
・防災マニュアル本と、“お守り本”
・抱っこ紐

ヤマモトさんの場合はリュックを背負って、子ども1人を抱っこして、もう1人と手をつないで避難するので、両手がふさがらないように抱っこ紐も必要です。


①「重要書類セット」

ヤマモトさんの「重要な書類セット」には、次の5つが入っています。

・母子手帳
妊婦や小さい子どもがいる場合は、適切な医療を受けるために必要

・通帳(または写し)と印鑑
通帳本体がなくとも、災害時は通帳の写し、もしくは本人確認ができるものがあればお金をおろせる場合もあります

・家族写真と個別の写真
家族写真はお守りでもあり、家族と離れ離れになってしまったときに捜索用としても使えます

・現金
現金を引き出せない場合があるため、食費と日用品の分は準備しておく

・ふせんとペン
避難所でアナウンスされた事項や、見聞きした情報をメモしておく

これらの重要な書類は、防水のためまとめてビニール袋などに入れるといいと話していました。

②「衛生用品ポーチ」

「避難先で、健康的に過ごすためにも衛生用品は重要です」とヤマモトさん。
持ち出しやすいように、ポーチにまとめて以下のものを入れています。

・歯ブラシ、歯みがきタブレット
・水のいらないシャンプー
・大判ボディシート
・折りたたみブラシ
・除菌シート
・爪切り
・ボディソープ(赤ちゃん用)
・保湿クリームとオイル
・かっさ
・シップ
・冷却シート(赤ちゃん用)
・体温計

ヤマモトさんの場合、1歳の子どもが熱を出しやすいため、冷却シートが必須。
ボディソープは赤ちゃん用があれば大人も使える。小さめの泡で出るポンプ式容器に詰め替えておけば、泡立てる必要がなく、節水にもつながると話します。

「かっさ」はマッサージに使うものです。肩こりの解消のために、毎日寝る前にマッサージをしているヤマモトさんにとっては必需品だ。シップも、産後から足がつりやすくなったヤマモトさんの状況に合わせて入れたものです。

このように家族構成や、人によって必要なものが変わってきます。

歯磨き粉よりも軽量で持ち運びがしやすい「歯磨きタブレット」や、「水のいらないシャンプー」、「大判ボディシート」など便利なグッズもあります。避難所に入浴設備がない場合や、水は使えるが、給水に時間がかかる場合にも重宝します。

この衛生用品ポーチは、普段から旅行用ポーチとしても活用できます。
自身や家族の状況に合わせ、必要な薬や欠かせない衛生用品を考えてみてほしいと話していました。


③「子どもの下着とオムツ用品」

乳幼児がいる家庭は、子どもの下着とオムツ用品の備えが必須です。ヤマモトさんは半日から1日後には夫と合流できる想定で、5~6枚のオムツを用意しています。避難所と自宅が近いため、緊急的に必要になる、持ち運びできる量で考えたといいます。

おしりふきは、厚手でフタ付きの大容量タイプを推奨します。
厚手で丈夫なおしりふきならば、1枚で便が拭くことができ、節約にも繋がります。また、体を拭くためのボディシートの代用にもなります。フタ付きのものを選ぶと、中身が乾燥しにくいです。

ヤマモトさんは、「普段はオムツを不要としている子どもでも、災害時のストレスで、おねしょをしてしまうことも多いんです。防水加工が施されたおねしょパンツも入れておくとさらに安心できるかもしれません」と話します。

④「キャンプ用ロープ」と「布ガムテープ」

「キャンプ用ロープ」と「布ガムテープ」は、さまざまな用途で使用することができます。

「ロープ」は、家具や物の固定、重量物の移動、洗濯物をつるすなどの用途に使えます。
キャンプ用のものに限らず、丈夫なロープであれば、代用が可能です。

「布ガムテープ」は、紙タイプよりも、防水性に優れていて丈夫です。
避難所でダンボール製のベッドやパーテーションの補強に使ったり、レインコートや破れた衣服の補修にも活用できるといいます。

⑤子どもも大人も“ほっ”とできる「おやつ袋」

普段食べているアメやガム、チョコレートなどのおやつは、「おやつ袋」として一つにまとめ、非常食とセットで用意しておくとよいです。

ヤマモトさんは、「ストレスが多い災害時にも、おやつがあれば、子どもも大人も“ほっ”と一息つくことができます。特に小さい子どもがいる家庭は、ストックして入れとおくといいと思います」と話していました。

⑥「防災マニュアル本」と「お守り本」

出版社や自治体が制作した「防災マニュアル本」は、事前に読んでおくことも大切ですが、災害時ではパニックになり、内容を忘れてしまうこともあります。

また、スマートフォンの充電が切れ、情報を調べられない場合もあるため、リュックに入れて持ち運ぶことがおすすめだといいます。

ヤマモトさんは精神的な“お守り本”として、日頃から読んでいる本や、落ち込んでいるときに読み返していた本も持ち出せるようにしているといいます。

ヤマモトさんは、「大前提として、災害発生時に生き残ることが一番重要です。とりあえず、生き残ることができたら百点満点なのです」と話します。その上で、「防災用品で大切なのは、やみくもに備えるのではなく、各家庭で『自分たちの場合』を想定し、行動することではないでしょうか」と呼びかけていました。

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