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ジャパニーズ・フュージョンは抜群のクオリティ!高中正義に対する海外からの熱いまなざし

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2025年05月21日 ジャパニーズ・フュージョンオムニバス「CROSSOVER CITY -Misty Morning-」発売日

最もバラエティーに富んでいるユニバーサル ミュージック編


ジャパニーズ・フュージョンの膨大なカタログの中から、“今こそ聴くべき楽曲" を集めたコンピレーション・アルバム『CROSSOVER CITY』シリーズ。このシリーズを紹介するコラム第3弾は、ユニバーサルミュージック編の『CROSSOVER CITY -Mint Breeze-』だ。

今回のシリーズ5タイトルの中で、本作が最もバラエティーに富んでいるといってもいいかもしれない。まさにそこがユニバーサルミュージック編の特徴でもある。というのも、レコード会社の再編を繰り返した現在、ユニバーサル ミュージック内には、ポリドール、キティ、エキスプレス(東芝EMI)などさまざまなレーベルのカタログが揃っているからだ。しかもそれぞれが個性的なレーベルだったため、他社よりもユニークなラインナップになったのは自然といえるだろう。

高中正義のブラジリアンサウンドとトロピカルなフレーバー


ただ、だからといってマニアックなわけではなく、メジャーのアーティストもしっかりと収録されている。その代表といえるのが高中正義だ。昨今のジャパニーズ・フュージョンに対する注目度の高さはご存じの通りだが、高中正義に対する海外からの熱いまなざしは抜きんでている。とりわけ、スカイダイビングをする姿の写真があしらわれた1979年発表のベストアルバム『All Of Me』の人気は圧倒的で、動画サイトでは1,000万回以上もの再生数を誇っているのだ。ここまでバズっていることは本当に不思議な現象としか言いようがないが、それだけ当時のフュージョンのクオリティが高い証拠でもある。

『CROSSOVER CITY -Mint Breeze-』に収録した楽曲は、その『All Of Me』にも収められていた、1978年に発表したオリジナルアルバム『BRASILIAN SKIES』のタイトルトラックをセレクトした。タイトル通りブラジリアンサウンドとトロピカルなフレーバーをまといながら、軽やかに奏でられるギターが夏のリゾートを想起させてくれるだろう。

シティポップ感覚で楽しめる小林泉美「Palm St.」


その高中正義のバッグでキーボードを弾いていたこともあるアーティストが、小林泉美である。彼女はシンガーソングライターやアレンジャーとしても活躍しており、アニメ『うる星やつら』のテーマ曲「ラムのラブソング」の作曲者として認識されている方も多いはずだ。ここでは「Palm St.」という楽曲をセレクトしており、ベースは本格的なラテン・フュージョンである。しかし、キュートなスキャットが入ることでポップに転換されており、シティポップ感覚で楽しめる1曲に仕上がっているのは彼女ならではだ。

タイトルに冠した「Mint Breeze」は、ピアニストの今田勝のグループNOWINによるものだ。今田勝はクラリネット奏者の北村英治をサポートするなど、いわば本格派のジャズピアニストであったが、フュージョン期に結成したこのNOWINでは涼しげなトロピカルフュージョンへとアプローチ。ラテンやブラジリアンを取り入れることも多く、この曲のようにリリカルで涼しげなピアノの音色で演出するのが得意としている。一歩間違えば単なるBGMになってしまうタイプであるが、ソロでもきらりと光るプレイを披露しており、ジャズマンとしての矜持を感じさせてくれる。

美しいエレクトリックピアノとサックスが絡み合う「Daybreak」


アルバムのラストに配されたNATIVE SONは、フュージョン全盛期にはカシオペアやTHE SQUAREと並ぶ人気グループのひとつだった。ピアニストの本田竹廣とサックス奏者の峰厚介を中心としたこのグループは、1970年代末にデビューし、「スーパー・サファリ」という楽曲がCMに使用されたこともあって人気を得たが、ここでは敢えて後期のアルバム『Daybreak』 (1985年)からタイトルトラックをセレクトした。ゆったりとしたリズムに美しいエレクトリックピアノとサックスが絡み合うメロウなナンバーで、このコンピレーションを締めくくるにはぴったりではないだろうか。

他にもラテン・フュージョンの代表的な存在であるCARIOCA、ファンクを大胆に取り入れたベテラン・ジャズギタリストも杉本喜代志、映画音楽やドラマのサウンドトラックでその名をよく知られるサックス奏者の本多俊之、昨今は国内外で人気が高まりアナログリイシューまで行われている野力奏一のプロジェクトであるNORIKIなど、実力派が揃えられている。

その一方で、異色作が多数収められているのも本作の特徴である。まずは日本に帰化したアメリカ人尺八奏者のジョン・海山・ネプチューンによる「Walk Downtown」は、たしかに変わり種と言っていいだろう。尺八とフュージョンという、一見まったくつながらなさそうな組み合わせだが、これが意外にもグルーヴィーで心地良く聴ける。フュージョンは英語で “融合” という意味を持つが、まさに和洋折衷の融合が味わえるフュージョンなのだ。

野口五郎がギターを弾くギターを弾くフュージョンナンバー


そして、野口五郎の楽曲が収められていることに目を疑った方もいるのではないだろうか。もちろんヴォーカル入りの歌謡曲ではなく、彼がギターを弾くフュージョンナンバーである。実のところ野口はギターの名手である。その事実を知っている方はそれなりにいるかもしれないが、歌なしのインストアルバムを数枚発表していることは、コアなファン以外にはあまり一般的ではないだろう。ここに収められた「Chico」という曲は1982年に発表した初のギター・インストアルバム『FIRST TAKE』から。豪華なサポート・ミュージシャンと作り上げた贅沢な作品だ。

井上堯之の「カーチェイス」も異色曲にひとつに挙げられるかもしれない。この曲は長谷川和彦監督の傑作映画『太陽を盗んだ男』(1979年)のサウンドトラックに収められている。沢田研二が演じる教師が原爆を作って政府と対峙するという破天荒なストーリーの映画だが、終盤に彼が恋人役の池上季実子と警察に追われるシーンで流れる1曲だ。しかしカーチェイスと言いながらも、非常にスローでメロディアスな美しい楽曲というところが、この映画のセンスの良さを感じさせる。当時は映画やテレビのサウンドトラックにフュージョン・サウンドが起用されることも珍しくなく、その代表的な作品のひとつである。

なんでもありなのがフュージョン


異色作は他にも、YMOのマニピュレーターとして知られる松武秀樹が国外のセッションミュージシャンを集めて作ったLOGIG SYSTEM名義のフュージョン曲や、エレクトーン奏者の柏木玲子などもある。こういった幅の広さが『CROSSOVER CITY -Mint Breeze-』の特徴であり、魅力でもあると言える。そして、フュージョンという言葉の固定観念にとらわれず、“融合” という言葉通り “なんでもありなのがフュージョン” ということに気づいて楽しんでいただけると幸いだ。

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