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認知症の方の歩き方が変化する理由や特徴とは?転倒予防のための5つの対策と早期発見のポイントを解説!

「みんなの介護」ニュース

髙橋 秀明

認知症の人の歩き方が変化する理由をご存知でしょうか。

実は、認知症の進行に伴い、歩行能力にも変化が現れます。歩き方の変化は転倒のリスクを高め、骨折や寝たきりにつながる可能性があります。認知症高齢者の転倒発生率は健常高齢者よりも高い傾向にあるので注意が必要です。

転倒による大腿骨頸部骨折は、高齢者のQOL(生活の質)を大きく低下させます。認知症の人の転倒を防ぐことは、本人のみならず家族や介護者にとっても重要な課題なのです。

そこで本記事では、認知症の歩き方の特徴や転倒予防策、早期発見のポイントについて詳しく解説します。認知症の人が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために、ぜひ参考にしてみてください。

認知症による歩行障がいは、本人の生活の質を大きく低下させるだけでなく、介護者の負担も増大させます。転倒による怪我や骨折は、認知症の人の寝たきりや要介護度の上昇につながることもあるでしょう。また、転倒への恐怖心から、認知症の人が活動を控えてしまい、身体機能のさらなる低下を招くこともあります。認知症の歩行障がいに早めに気づき、適切な対策を講じることが、本人と介護者の両方にとって重要なのです。

認知症の進行に伴う歩き方の変化

認知症にはさまざまな種類がありますが、歩き方の変化にも特徴があります。厚生労働省老健局によると、認知症の種類別割合は以下の通りです。

アルツハイマー型が67.6%と最も多く、次いで脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭洋型認知症と続きます。また、認知症高齢者数は2060年には850万人に上ると推測され、有病率が上昇した場合は1000万人も超える見込みです。

アルツハイマー型認知症の歩き方はすり足になることが特徴

アルツハイマー型認知症の場合、歩幅が狭くなり、すり足歩行になることがあります。また、歩行速度が低下することも特徴的です。

認知機能の低下により、歩行時の注意力が散漫になったり、目的地への道順を忘れてしまったりすることがあります。そのため、迷子になるリスクも高くなります。

アルツハイマー型認知症の初期段階では、歩き方の変化が目立たないこともありますが、症状が進行するにつれて、歩行障がいが顕著になってきます。歩幅の減少や歩行速度の低下は、転倒リスクを高める要因となるため、注意が必要です。

また、アルツハイマー型認知症では、歩行時の姿勢にも変化が見られることがあります。背中が丸くなり、前かがみになる「屈曲姿勢」が特徴的です。この姿勢は、バランスを崩しやすく、転倒のリスクを高めてしまいます。

レビー小体型認知症の歩き方の特徴

一方、レビー小体型認知症では、パーキンソン症状が出現することがあります。具体的には、すくみ足(歩き出しが困難になる)や小刻み歩行などです。これらの症状により、転倒リスクがさらに高まります。

レビー小体型認知症では、歩行時の姿勢が前かがみになるケースもあります。また、歩行中に突然立ち止まってしまうこともあるので注意してください。

レビー小体型認知症の歩行障がいは、日内変動することが特徴です。日内変動とは、一日の中で症状の現れ方が変化することを指します。例えば、朝は比較的スムーズに歩けていたのに、夕方になると急に歩行が困難になるといったケースです。

また、レビー小体型認知症では、幻視(実際には存在しないものが見える)が出現することがありますが、歩行中に幻視が現れると転倒のリスクがさらに高まってしまいます。

血管性認知症の歩き方の特徴

血管性認知症の場合は、歩行のふらつきや不安定さが増加することが見られます。脳血管障がいによる運動機能の低下が原因と考えられます。

片麻痺や歩行失調などの神経学的症状を伴うこともあります。脳梗塞や脳出血の後遺症として、歩行能力が低下するケースもあるでしょう。

血管性認知症では、脳の損傷部位によって歩行障がいの現れ方が異なります。例えば、前頭葉が損傷された場合は、歩行時の注意力が低下し、障害物を避けることが難しくなります。

一方、基底核が損傷された場合は、パーキンソン症状が出現し、すくみ足や小刻み歩行が見られることがあります。

また、血管性認知症は、脳血管障がいの再発リスクが高いことが知られています。再発を予防するためには、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理が重要です。

このように、認知症の種類によって歩き方の変化には違いがあるものの、いずれも転倒リスクを高める要因となります。認知症の人の歩行能力の変化に早めに気づき、適切な対策を講じることが大切です。

認知症の人の転倒リスクと予防策

なぜ認知症の人は転倒しやすいのでしょうか。

主な原因として、注意力や判断力の低下、バランス能力の低下が挙げられます。認知機能の低下により、環境の変化に適応しにくくなったり、危険を回避する能力が低下したりするのです。

また、認知症の行動・心理症状(BPSD)も転倒リスクを高める要因の一つです。徘徊やせん妄、不穏などの症状により、転倒や外傷のリスクが高まることがあります。

住環境の改善で転倒を防ぐ

転倒を防ぐためには、多角的なアプローチが必要不可欠です。まずは住環境の改善から始めましょう。

手すりの設置や段差の解消、十分な明るさの確保などが有効です。また、家具の配置にも気を配りましょう。動線上に不要な物を置かないことや、床の上にコードを這わせないことも大切です。認知症の人にとって、住み慣れた環境を整えることは安心につながります。

トイレや浴室、脱衣所は、特に転倒のリスクが高い場所です。床の濡れやすい浴室では、滑り止めマットを敷くなどの工夫が必要です。また、トイレの場所がわかりやすいように、目印を付けるのも良いでしょう。

照明の確保も重要なポイントです。暗い場所では足元が見えにくく、つまずきや転倒のリスクが高まります。特に夜間のトイレや寝室への移動時は、足元灯を設置するなどの配慮が必要です。

住環境の改善は、認知症の人の転倒予防だけでなく、自立した生活を送るためにも重要です。手すりや福祉用具を適切に活用することで、認知症の人の残存機能を最大限に引き出すことができます。また、認知症の人が安全に移動できる環境を整えることは、介護者の負担軽減にもつながります。認知症の人にとって過ごしやすく、介護者にとってもケアがしやすい住環境を目指していきましょう。

適切な履物選びと着用の徹底

次に、適切な履物選びも大切です。かかとが安定し、薄底で柔らかい靴がおすすめです。滑りにくく、足にフィットする靴を選ぶことで、転倒のリスクを減らすことができます。

また、靴の着用を徹底することも重要です。認知症が進行すると、靴を履くことを忘れてしまったり、間違った履き方をしてしまったりすることがあります。介護者が靴の着用状態をこまめにチェックし、正しく履けているか確認しましょう。

靴下の選び方にも気を付けてください。ゆったりとしたサイズで、かかとがずり落ちにくいものがおすすめです。履き口が緩すぎると、歩行中に脱げてしまい、つまずきの原因になります。

なお、屋内でも素足や裸足で過ごすのは避けましょう。床の状態によっては、滑って転倒してしまうリスクがあります。室内用のスリッパを用意するようにしましょう。

定期的な運動と歩行訓練の効果

筋力維持やバランス感覚の改善に効果的であるため、定期的な運動や歩行訓練も欠かせません。

歩行訓練には、平行棒や歩行器を使ったトレーニングがあります。理学療法士や作業療法士と相談しながら、適切な運動プログラムを組むことをおすすめします。

また、日常生活の中で身体を動かす機会を増やすことも大切です。例えば、家事や買い物、散歩など、できる範囲で体を動かすようにしましょう。ただし、認知症の進行に伴い、一人で外出することが難しくなることがあります。介護者が同行するなど、安全面に配慮することは忘れないようにしてください。

運動や歩行訓練を続けるためには、本人のやる気を引き出すことが重要です。無理強いするのではなく、本人の興味や関心に合わせて、楽しみながら取り組めるようにしましょう。

福祉用具の活用と介助技術の習得

さらに、福祉用具の活用と介助技術の習得も重要です。歩行器や車椅子の適切な使用法を学ぶことで、安全な移動をサポートできます。介護者が適切な介助技術を身につけることも、転倒予防につながります。

福祉用具を選ぶ際は、認知症の人の身体機能や生活環境に合ったものを選ぶことが大切です。また、定期的にメンテナンスを行い、故障や不具合がないか確認しましょう。

歩行器や杖は、正しい使い方を身につける必要があります。例えば、歩行器を使用する際は、両手でしっかりと握り、体を前傾にすることが重要です。また、杖の長さが合っていないと、かえって歩行が不安定になることがあります。

車椅子を使用する場合は、座面の高さや背もたれの角度に注意しましょう。座面が低すぎると立ち上がりにくく、高すぎると前のめりになってしまいます。背もたれは、腰から肩にかけてしっかりと支えられる角度に調整します。

福祉用具の活用と合わせて、介護者が適切な介助技術を身につけることも大切です。例えば、移乗の際は、認知症の人の残存機能を活かしながら、安全に移動できるようにサポートします。

また、歩行介助の際は、認知症の人のペースに合わせて、ゆっくりと歩くことが重要です。

認知症の早期発見につながる歩き方の変化

認知症の早期発見には、歩き方の変化に気づくことも大切です。具体的には以下のような点に注意しましょう。

歩幅の変化と歩行速度の低下

歩幅の変化:歩幅が狭くなる、左右の歩幅が不揃いになる
歩行速度の低下:以前と比べて歩くのが遅くなる

歩行速度の低下は認知機能との関連性も指摘されています。

歩幅の変化や歩行速度の低下は、認知機能の低下だけでなく、筋力の低下やバランス能力の低下とも関連しています。高齢者の歩行状態を定期的にチェックし、変化に気づくことが大切です。

つまずきや足の引きずりの増加

認知症が進行すると、足元の障害物に気づきにくくなります。つまずきや足の引きずりが増えるようであれば、認知機能の低下が疑われます。

また、歩行時につま先が上がりにくくなることもあります。これは、認知症による運動機能の低下が原因と考えられます。つまずきや足の引きずりは、転倒のリスクを高める要因となるため、注意が必要です。

介護者は、日頃から認知症の人の歩行状態を観察し、つまずきや足の引きずりが増えていないか確認しましょう。また、つまずきの原因となるような障害物を取り除くことも大切です。

方向転換やバランス維持の困難さ

認知症の人は、方向転換やバランス維持が難しくなることがあります。狭い場所での歩行や、段差の昇降などで困難な様子が見られるようであれば、注意が必要です。

方向転換の際には、認知症の人の体を支えながら、ゆっくりと向きを変えるようにしましょう。また、階段の昇降時は、手すりを使用し、一段ずつ確認しながら移動することが大切です。

バランス維持が難しくなるのは、認知症による感覚機能の低下が関係しています。視覚や聴覚、深部感覚などの低下により、バランスを取ることが難しくなるのです。転倒予防のためには、バランス訓練を取り入れることも効果的です。

このように、歩き方の変化は認知症の早期発見の手がかりとなります。日頃から高齢者の歩行状態に目を配り、変化に気づいたら早めに専門家に相談することが大切です。

おわりに

本記事では、認知症の歩き方の特徴や転倒予防策、早期発見のポイントについて解説してきました。

認知症の人の歩行能力の維持・向上は、転倒予防だけでなく、自立した生活を送るためにも重要なテーマです。

認知症の進行に伴う歩き方の変化は、本人だけでなく家族や介護者にとっても不安や戸惑いを感じるものです。しかし、適切な対策を講じることで、転倒のリスクを減らし、安全な移動を実現することができます。

住環境の改善、適切な履物選び、定期的な運動、福祉用具の活用など、できることから始めていきましょう。

また、歩き方の変化は認知症の早期発見にもつながります。日頃から高齢者の歩行状態に注意を払い、変化に気づいたら早めに専門家に相談することが大切です。

認知症の人が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには、家族や介護者の理解と支援が欠かせません。一人ひとりに寄り添った介護を心がけ、認知症の人の尊厳を守っていきたいですね。

介護に関わる全ての人が、認知症の歩き方の特徴を理解し、転倒予防に取り組んでいくことを願っています。認知症の人が安全に、そして自分らしく歩み続けられる社会を目指して、今日からできることを始めてみませんか。

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