萩原利久「『やったことがないのでできません』と言っていたらもったいない」#春からの君に伝えたいこと
人生の先輩である著名人の方々から、春から新生活、新しい学年が始まる大学生のみなさんに、エールを送る「春からの君に伝えたいこと」。
今回は映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』で主演を務めた萩原利久さんが登場。ご自身の経験から、新たなスタートを切る学生たちの背中を押すアドバイスをしてくれました。
【写真】萩原利久の撮りおろし萩原利久が<春からの君に伝えたいこと>
1.ちょっとでも興味があるものは失敗を恐れずに一回やってみる
――学生のうちにやっておいたほうがいいと思うことはありますか?
僕の実体験ベースで話すなら、やっぱり行動したもん勝ちだなということです。行動すると結果が生まれるわけじゃないですか。もしそれが失敗だとしても、そういう結果を得られただけで十分学びがあるなと思っていて。僕は今の仕事だったり趣味だったり、好きなものが明確に見つかっていますけど、これも降ってきたというよりは行動した結果、やってみた結果、好きになっているんです。
あと僕は時間ってすごく貴重だなと年々感じるようになっていて、18歳だったあの時間はもう取り返せないんだなと思うと戻ってみたいなとも思うんです。当時を後悔しているわけではないですけど、もう一回その頃を経験できるならもっともっと行動できたこともあったのかなとは思うので、ちょっとでも興味があるものは失敗を恐れずに一回やってみることがすごく大事だと思います。
2.「やったことがないのでできません」と言っていたらもったいない
――新生活、新しい環境をスタートするときにやっておいてよかったなと思うことや心構えはありますか?
これも、とりあえずやってみるに尽きるかなと思います。一年半くらい前からバラエティ番組をやり始めて、今こうやって続いているのだってやってみた結果でしかなくて、その中で得られたものや縁というのはやってみた結果にくっついているだけで。これを「いや、ちょっとやったことがないのでできません」と言っていたらもったいないし、今はやってみてよかったなと思うんです。その中で失敗をしたことがないわけじゃないし、もっとこうできたなと思うことはありますけど、それは次に活かせばいいし、考え方によっては成功するための前段階で。だから、心構えをするほど構えなくてもいいと思います。僕もやってみて全然向いてないなと思うことも、ハマらなかったなということもいくらでもあったし、辞めたとしてもその結果を経ていれば自分の中で納得できると思います。
3.人が勧めてくれた新しいものに触れてみるのもいいかも
――これから新生活を迎える学生が観たり、聞いておいたほうがいいものは?
全然参考にならないと思うんですけど、僕は基本スポーツを観ることと玉置浩二さんの曲に背中を押してもらっていて。でも全員が全員それで元気をもらえるとは限らないから、自分の好きなものに染まるというのはありかもしれないです。前に好きだった音楽に浸ってみたり、人が勧めてくれた新しいものに触れてみるのもいいかもしれないです。
――では、萩原さんがひとつおすすめのものを挙げるとしたら?
玉置浩二さんの「田園」を聴きましょう。「生きていくんだ それでいいんだ」ってシンプルだけど、それくらい楽観的になっていい瞬間があるんじゃないかなと思うんです。ぜひ聴いてみてください。
僕はバカポジティブなので、小西とは根本から違う
――4月25日には主演映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』が公開されます。今回演じた小西を演じる上で考えられたこと、意識したことはありますか?
ある種、自分の人格とは切り離して考えていたので、僕の価値観はむしろ削いでいって、自分を落とし込むというより別軸に小西という人を作っていたイメージでした。僕は簡単に言うとバカポジティブなので、小西とはもう根本から違うんです。でも小西みたいに他人にどう思われているかを考えてしまう気持ちは分かります。僕も気にしだしたら永遠に気にしちゃうんですけど、これって自分ではどうしようもないことじゃないですか。だから僕はそれを考え続けるのは無理なんです。そういう意味で、僕が入ると小西ではなくなるとは思っていました。
――考え方の違う小西を通して見る世界は、普段とはまた違ってみえるものでしょうか。
興味深かったですし、人の優しさも冷たさも全部が紙一重で、言い方は同じだったとしても受け手によってどっちとも捉えられるなというのは、言葉を扱う人間としてもっと考えなきゃいけないのかなとすごく感じました。何気なく言ったことで僕が思っている以上に傷つく人がいたり、心に残ってしまうことがあるというのは日常の中でも仕事をする上でも起こり得るなとより強く感じたかもしれないです。
――今回の現場で学びになったことなど、印象的なことはありますか?
お芝居をする上で学んだことはたくさんあります。今回、今までにやったことのないアプローチをしていて、基本的に作品を撮る上ですべてが順撮りではないがゆえに、役を通して一本の線のようなもの作っていくのが僕のスタイルなんです。それは現場に行って変わることはあるんですけど、その線があればひとつの作品を通して人物がちぐはぐになることはないなと思っているので、合っている・間違っているは置いといて、自分の中での正解みたいなものを作って現場に行くようにしているんです。でも小西においての正解が僕の中で出なくて。今までと同じやり方ではできないなと思い、とにかく考えられるだけいろんなものを考えて、現場ではキャッチできるものを全部キャッチして、やりながら線にしていこうというイメージでいたんです。僕が現場に向けて準備をしていくというのは自信をつけるためというより不安を消すためにやる側面が強くて、今回は自ら不安な状況を作っているのに近いので、起こる物事や相手の言葉もいつも以上に聞いていた気がするし、些細な景色やリアルに歩いている関大生だったり、すべてから何かを敏感にキャッチしようとしていたかなと思います。そうやっていつもと違うプロセスで現場に臨んだことで、アプローチを変えてみるのもひとつの手だなというのはこの作品を通じて感じました。
素敵な役者さんしかいなかった
――今回共演した河合優実さん、伊東蒼さん、黒崎煌代さんの印象を教えてください。
素敵な役者さんしかいなかったなというのがみなさんと一緒に演じた率直な感想です。河合さんに関しては、本当に言葉を届けるのがお上手な方だなと思っていました。(河合さん演じる)桜田さんと小西が一緒にいるときは、桜田が喋って小西が聞いて何かを返すというシチュエーションが多かったので、より言葉が体に入ってくる感覚があって。お芝居ってセリフは決まっているので、すごく極論ですけど、聞かなくても成立させるだけならできてしまうわけじゃないですか。でも日常の会話ってちゃんと聞いて話してという当たり前の状態があるわけで、お芝居でもそれが絶対にあるべきだなと思うんです。その中で極めて日常の会話に近い状態を作ってくださっていたなというのは、河合さんのお芝居から感じていました。
(伊東さん演じる)さっちゃんとのシーンは小西の現場での評判がめちゃくちゃ悪くて、「何やってんだよ、小西」といろんな人に言われたんですけど、それはやっぱり伊東さんが素晴らしかったから小西がどうしようもなく見えたわけで。さっちゃんが一人で喋るシーンは会話のキャッチボールじゃないので、伊東さん自身がエンジンをつけて演じていて僕がやったことなんて何もないに等しいんですけど、あそこは本当にいいシーンでした。
黒崎くんが演じた山根は、文字で読んだ時点で「これ、どうやってやるんだろう」と思う難役で、どう頑張っても音声が再生されないセリフたちを「うわ、山根じゃん」と初日から思うくらいに演じられていて。それはご本人の人柄があるからで、何より面白かったし、すごく素敵な役者さんだなと思いました。
――完成した作品をご覧になった感想を教えてください。
客観的に観られないので主観ではあるんですけど、僕は鮮度というものが自分の中ですごく気になってしまうんです。その鮮度というのは、例えば反応です。驚くとか何かに感動するとか、やればやるほど慣れてきちゃって、なかなか最初のような反応にはなれないのが永遠の課題だなと思うんです。でも今回は自分の中で役が決まりきってないからこそ、鮮度という部分ではいつもよりストレスなくできたというか。本番でも役をチューニングしながら演じていた瞬間があったりして、すごくフリーに、いつもより考えずにできていた気がしました。
PROFILE
萩原利久
1999年2月28日生まれ、埼玉県出身。主な近年の映画出演作に、『美しい彼〜special edit version〜』(主演/23)、『劇場版 美しい彼~eternal~』(主演)、『おとななじみ』、『ミステリと言う勿れ』、『朽ちないサクラ』、『世界征服やめた』など。現在はCXにて初の冠バラエティ「萩原利久のwkwkはぎわランド」に出演中。今後は映画『花緑青が明ける日に』の公開が控えている。
映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』4月25日(金)全国公開
思い描いていた大学生活とはほど遠い、冴えない毎日を送る小西。学内唯一の友人・山根や銭湯のバイト仲間・さっちゃんとは、他愛もないことでふざけあう日々。ある日の授業終わり、お団子頭の桜田の凛々しい姿に目を奪われた。思い切って声をかけると、拍子抜けするほど偶然が重なり急速に意気投合する。会話が尽きない中、「毎日楽しいって思いたい。今日の空が一番好き、って思いたい」と桜田が何気なく口にした言葉が胸に刺さる。その言葉は、奇しくも、半年前に亡くなった大好きな祖母の言葉と同じで、桜田と出会えた喜びにひとり震える。
ようやく自分を取り巻く世界を少しだけ愛せそうになった矢先、運命を変える衝撃の出来事が二人を襲うー。
https://kyosora-movie.jp/
取材・文/東海林その子
撮影/三橋優美子
ヘア&メイク/鴇田晋哉
スタイリング/Emiy(Three Gateee LLC.)
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