SAI/街に開かれた、感性と創造性の「器」
ミヤシタパーク南館3Fにあるギャラリー「SAI(サイ)」は、数ある表参道・原宿のギャラリーの中でも特異な展示空間だ。街とアートの交差点にいるような感覚になるのは、渋谷と原宿という2つの異なる文化がちょうど混ざり合う場所に位置しているからだろう。名前は漢文学者・白川静が提唱した、古来中国で神へ捧げる祝詞を入れる器を表した甲骨文字に由来。ギャラリーの形がその字に似ており、感性と創造性を受け入れる「器」として機能することを表す。ギャラリー内に足を踏み入れると、展示室から通路や吹き抜けを見下ろし、日常と隣合わせの空間が特別感を際立たせる。ミヤシタパークという商業施設の一部でありながら、枠に囚われないダイナミックな存在感が魅力だ。いちばん大きな展示室の窓越しには走る電車や、その先に広がる交差点が見え、外の世界との繋がりを強く感じられる。この景色がギャラリーの心地よい静けさと絶妙な対比を生み出し、特有の魅力を醸し出す。開催される展覧会ごとに、まるで別の表情を見せてくれるのも面白い。あるときは洗練されたミニマリズムが漂い、またあるときは色彩豊かなポップアートが彩る。前衛的な現代アートや気鋭のストリートアートまで。変化の幅広さは、来るたびに新しい発見を提供してくれる。感性の交流が行われる特別な「器」が、現代のアートシーンに新たな風を吹き込んでいく。この「器」に蓋はない。グローバルに活躍するメジャーなアーティストや新々のアーティスト、世界水準の多様なキュレーションがあふれんばかりの創造性を与えてくれるのだ。ギャラリーの敷居が高いと思っている人こそ立ち寄って、最先端のアートを受け取ってほしい。Text:Tomohisa MochizukiPhoto:OMOHARAREAL編集部展示:菅原ありあ「Black Water」(2024年8月23日〜9月8日)
住所:東京都渋谷区神宮前6丁目20−10MIYASHITA PARK SOUTH 3F