串田アキラの力強いボーカル「キン肉マン Go Fight!」アニソン史に残る名フレーズが炸裂!
プロレスブームの真っ只中に放送が開始された「キン肉マン」
現在50代の男性は、プロレスにハマった人が多かったのではないだろうか。1973年生まれの自分もご多分に漏れず、幼稚園の頃、初めてテレビで観た『テリー・ファンク&ドリー・ファンク・ジュニア VS アブドーラ・ザ・ブッチャー&ザ・シーク』戦でのテリーの血まみれファイトに心を奪われ、プロレスファンの一員となった。
毎週『全日本プロレス中継』『ワールドプロレスリング』をテレビにかぶりついて観戦し、すっかりプロレスの虜になった幼い自分にとっての憧れは、やはり覆面レスラーたちだった。全日ではミル・マスカラス&ドス・カラスの兄弟コンビ “マスカラス・ブラザーズ”、新日ではなんといっても1981年に登場した四次元殺法のタイガーマスクである。
友だちとの休み時間のプロレスごっこでは再現できない、彼らの華麗な空中殺法と美しい覆面マスク姿は、幼かった自分にとってスーパーヒーローそのものだった。そんなプロレスブームの真っ只中にアニメ放送が開始されたのがご存知『キン肉マン』(1983年)だ。
超人たちのプロレスバトルを中心とした友情物語
週刊少年ジャンプに連載されていたゆでたまご先生の漫画を原作とし、日曜日の朝10時から放送されていた『キン肉マン』。開始当初は原作同様にキン骨マンやイワオが登場するギャグ中心のアニメだったが、「超人オリンピック編」からは超人たちのプロレスバトルを中心とした友情物語へと変わっていき、プロレスファンの少年少女たちを虜にしていく。
主人公のキン肉マンをはじめとして、ロビンマスクやラーメンマンなど、登場する超人はまさに憧れていた覆面レスラーそのものだった。テリー・ファンクをモデルにしたテリーマンはもとより、バッファローマンはどことなくブルーザー・ブロディを彷彿とさせたし、ネプチューンマンの見た目はまんまハルク・ホーガンだった。『キン肉マン』は、まるで現実のプロレスラーたちがアニメの世界で活躍しているかのような気分にさせてくれた。そしていつしか友だちとのプロレスごっこは、“キン消し” を使った技の掛け合いに変わっていった。
オープニング主題歌は「キン肉マン Go Fight!」
社会現象ともいえるほどの大人気アニメに上りつめた『キン肉マン』のオープニング主題歌が「キン肉マン Go Fight!」だった。作詞:森雪之丞、作曲:芹澤廣明による楽曲は、串田アキラのパワフルすぎるボーカルも相まって、『キン肉マン』の “バトル” “友情” そして “ギャグ” の世界観を見事に表現している。
ああ 心に愛がなければ
スーパーヒーローじゃないのさ
特にこの歌詞は、お調子者で下品だけど、正義感が強く、仲間のためなら危険をも顧みず戦うキン肉マン(=キン肉スグル)を象徴するだけでなく、他の正義超人や、他の作品のヒーロー像にも影響を与えた、アニソン史に残る名フレーズだと思う。
そして、この「キン肉マン Go Fight!」の魅力はそのアレンジにも溢れている。ファンファーレ風のイントロ、力強いブラスをフィーチャーしたアレンジは、『ワールドプロレスリング』のオープニングテーマ「朝日に栄光あれ」や、『全日本プロレス中継』のテーマ曲でありジャイアント馬場の入場曲でもあった「スポーツ行進曲」(NTVスポーツのテーマ)を思い出させる。また、ホーンセクションの華やかさや、思わず手拍子をしてしまうようなリズムが、まるでレスラーの入場曲のようでもある。プロレス中継で感じる興奮を『キン肉マン』でも同じように受け取っていたのだ。
個人的な話で恐縮だが、小学校4年生の時の日曜参観で、授業の後のPTA集会に出席する保護者を待つ間、先生が気を利かせて、10時から始まる『キン肉マン』を教室のテレビで流してくれた時があった。
Go!Go!Muscle!
串田アキラの力強い歌声が響き渡った教室内は異様な盛り上がりをみせる。それはまるで「INOKI BOM-BA-YE」が鳴り響く中で、アントニオ猪木を一目見ようと花道に殺到する子どもたちのようでもあり、金曜夜や土曜夕方にワクワクしながらお茶の間で待ち構えて、プロレス中継が始まった瞬間のあの高揚感のようでもあった。まるでプロレス会場のように一体になった教室の興奮は、今でも鮮明に覚えている。
そんな『キン肉マン』の新作アニメ放送が、2024年7月から始まった。プロレス中継が地上波ゴールデンタイムから外れて久しいが、串田アキラが歌った「キン肉マン Go Fight!」は、宮野真守によってしっかりと受け継がれている。
Information
1986年にカセットで発売された『キン肉マンのザ・ヒット・パレード 超人の歌ベスト20』が、初CD化されて7月31日に発売!
https://columbia.jp/prod-info/COCX-42316/
*2023年9月15日に掲載された記事をアップデート