東京出張編「駒込」駅散策 〜 JR山手線をスズキナオが降りて歩いて飲んでみる
駅前からその街を知るべく街を歩き、巡り合った人に街について聞いてみたり、酒場で店主と話してみたりして、街に住む人、そしてその街のよさを探る本連載。今回は、出張編と題して「東京」にやって来ました。さて、どの駅を散策するのかお楽しみに。
駒込駅周辺は、飲みに行ったことはあるけど……な街
JR大阪環状線、阪急宝塚線・箕面線の各駅周辺を散策し、街の雰囲気を感じながら行き当たりばったりにお酒を飲む当連載ですが、今回は東京を走るJR山手線の駒込駅にやって来ました。
筆者(スズキナオ)は大阪在住のライターですが、10年ほど前までは東京で暮らしていました。豊島区の池袋近くに長く住んでいたこともあり、同じ豊島区にある駒込駅は距離的には近かったのですが、その割にはあまり降りたことがありませんでした。
と、そんな個人的な事情もあって、全30駅ある山手線の駅の中から今回はなんとなく駒込駅を選んでみた次第です。山手線の路線図は丸く描かれることも多いですが、実際の山手線の線路は南北に縦長になっていて、駒込駅はその北の方に位置しています。東京メトロの南北線にも駒込駅があり、乗り換えにも利用される駅です。
JR駒込駅から南に7分ほど歩いた位置に「六義園(りくぎえん)」という庭園があり、東京に住んでいた頃、その美しい庭を何度か見に行きました。徳川綱吉の側用人だった柳沢吉保が綱吉から拝領した土地に屋敷を建て、庭園を造成したのが「六義園」の始まり。大きな池を中心に、その周囲を回遊しながら眺めることのできる「回遊式築山泉水庭園」という様式で、元禄時代の大名庭園の姿を今に残しています。
六義園を見に来たのと、あとは友人と何度か飲みに行ったな……と、それぐらいが私の駒込の記憶です。あえて駒込を目指そうという機会が個人的にあまりなかったので、今回はじっくり歩いてみようと思います。
駅周辺には豊島区、北区、文京区の区境が
冒頭で、駒込駅は豊島区にあると書いたのですが、ホームの一部は北区の区域に入り、先ほど触れた、駅から徒歩7分ほどの「六義園」は文京区に位置しています。豊島区、北区、文京区の区境にまたがって駒込という地域があるのです。
ちなみに、当連載の取材はいつも編集担当のMさんと二人で行っているのですが、そのMさんは所用で東京に来るのが遅れることになり、後から合流する予定になっていました。せっかくなので駒込に詳しい友人と一緒に歩きたいなと思い、シンガーのbutajiさんに散策のお供をしてもらうことにしました。
まず、JR駒込駅の南口から歩き出してみることに。
歩いて数分の場所に東京メトロ駒込駅の改札へと続く出入り口がありました。
都道455号線の大通りを南の方へと歩いてみます。通りに沿ってマンションが立ち並び、車通りも多い道路です。案内板によると、このままずっと南へ進むと本郷の方にたどり着くようでした。
通り沿いには飲食店も点在しています。butajiさんおすすめの「カリーシュダ六義園」はカレー専門店で、取材時はすでに営業を終了していたのですが、スパイスのいい香りが漂ってきました。
さらに少し歩くと「六義園」の入り口が見えてきます。今回はすでに時間が遅くて入ることができなかったのですが、すごくすてきな庭だった記憶があるのでまた行ってみたいです。
六義園の近くには「フレーベル館」があり、玄関にはアンパンマン像が立っていました。
butajiさんが好きでたまに立ち寄るという古書店「BOOKS 青いカバ」や、現在はリニューアル休館中ですが、アジア諸地域の歴史・文化関連資料が集まる「東洋文庫ミュージアム」も近いエリアにあり、駒込駅前とは違って落ち着いた空気が漂っているように感じました。
そこから東側へ、都道437号線に沿って歩き、案内されるまま通りを北へと折れて歩きます。
大通り沿いとはガラッと雰囲気が違い、2~3階建てのビルや古い住宅が並んでいます。butajiさんによれば、通りをこのまま北西の方に進んでいけば駅前から続く商店街「アザレア通り」につながるとのこと。頼りになるその背中を追いかけていくと、道の両側に徐々に商店が増え始め、「アザレア通り」のゲートが見えてきました。
鮮魚店や青果店、スーパーや飲食店があり、駅に近づくにつれてにぎやかになっていきます。美味しそうな中華料理店や居酒屋もあり、「ここ、おいしいですよ!」「ここもよく行きます!」とbutajiさんが紹介してくれるのを聞きつつ歩きました。
JR駒込駅東口の線路下をくぐると、今度は「さつき通り」という商店街に入ります。こちらは先ほどの「アザレア通り」より道幅が狭く、商店もギュッと並んで活気のある雰囲気です。この辺りにも居酒屋が数多く見つかり、きょろきょろしながら北へとゆっくり進んでいきました。
霜降銀座商店街から染井霊園へと歩く
さつき通りを抜けて谷田川通り、都道455号線を西へまたいで「霜降銀座商店街」にやって来ました。70年以上の歴史を持つ商店街だそうで、「アザレア通り」「さつき通り」よりも歴史を感じさせる、昭和の雰囲気を残すような通りでした。人通りも多く、お店もたくさんあって「まだ東京にこんな商店街が残っていたとは」と感動しました。
「駒込に住むならこの辺がいいな」と思いながら歩き、老舗和菓子店「新月」で名物のいちご大福を買って食べました。私はこれまでの人生でほとんど「いちご大福」を食べたことがなかったのですが、あまりにおいしくて、びっくりしました。いちご大福というものがそもそもおいしいのか、それとも「新月」さんのものだからこんなにおいしいのか、今後の人生で確かめていきたいです。
日が暮れかけてきましたが、散歩の勢いは止まらず、霜降銀座商店街を抜けたまま西へ西へと歩いて「染井霊園」までやって来ました。都立霊園の中では規模が小さい方だそうですが、緑が豊かで、近隣には大きなお寺も多くあり、しんとした雰囲気が気に入りました。ここまで来るともう隣駅の巣鴨もかなり近いようです。
歩きながら改めてbutajiさんに駒込駅周辺の印象を聞きました。「何があるわけでもないですけど、適度に静かでいい街だと思います。文京区、北区、豊島区に分かれているんですけど、それぞれ少しずつ雰囲気が違う気がします」と、なるほど、そんなエリアだからこそ少し歩くことで街並みが変わって楽しいのかもしれないと思いました。
近くには天然温泉が自慢の入浴施設「東京染井温泉sakura」もあり人気だそう。ここで温泉に入って駒込駅前で乾杯、というコースもよさそうです。
それにしても、いつもなら歩き出すとすぐに酒場で乾杯している当連載なのですが、今回はここまで2時間近くお酒を飲まずに歩き続けています。それはなぜかというと、ゲストのbutajiさんが翌日に健康診断を控えていたからなのです。
「これだけ歩いたら明日の結果はきっといいです」と語るbutajiさんと、さらに南へ歩いて「駒込富士神社」に健康を祈願し、butajiさんが大好きだというラーメン店「自家製麺ほんま」で早めの夕飯を済ませることに。
私は「しおらーめん」をいただいたのですが、大山鶏で作った鶏白湯と野菜のポタージュを合わせたというスープが衝撃的においしかったです。「私はこのラーメンを食べにまた駒込に来ることになるだろう」と思いました。
お店を出て再び駒込駅まで歩き、そこでbutajiさんは帰路に。ちょうど入れ替わるように編集担当・Mさんが到着し、いつもの二人になって「さつき通り」を歩きます。
「逆転クラブ」から「高賢」へとハシゴ
谷田川通りまで来ると、私の飲み仲間でもある酒場ライター・パリッコさんからその店名を聞いたことのあった「逆転クラブ」という立ち飲み店があり、そこに寄って乾杯することにしました。
10人で満席だというカウンターのみのお店で、もとは立ち飲み店だったのが、最近では椅子も置くようになったそう。スナックからスタートしたお店は創業47年。この店を切り盛りしてきたマスターは残念ながら昨年ご病気で亡くなられ、店をなくさないようにと二人のスタッフがその後を引き継いでいるといいます。
スタッフの一人である林直子さんは、駒込周辺に住んで22年ほどになるそうです。もともとはこの店の常連客だったとのこと。「この辺りに用事のついでに来ることが多かったんですけど、一休みするのにファミレスでお茶を飲んだりしていたのに飽きてきて、徘徊するようになったんです。それでこの店の前を通って、昔は入り口の方に焼き台があって、焼鳥の煙とタバコの煙でお店の中がモクモクしていて、気になったけど何回も通り過ぎて、『やっぱり入れない……』って(笑)。ある時、勇気を出してやっと入ってみて、それが、今ここに立っているんですよ(笑)」と、人の縁はつくづく不思議なものです。
林さんは駒込が大好きだそうで、「もともと池袋に住んでいたのもあって、新宿とか渋谷よりこっち側の方が落ち着くんですよ。駒込には個人店がいっぱいあって、年を取ってくると余計にこの便利さが好きになってきましたね。楽だし、住みやすいし、そういう街に自分にとって特別なお店が見つかると、生活がもっと豊かになるじゃないですか。でも、なくなってしまうお店もいっぱいあるんで、だからここもなくしたくないんですよ」と、この店を続けている理由も聞かせてくれました。
そんな林さんの好きな居酒屋が「旬の味 みや和」で、徒歩5~6分ほどの距離にあるというので行ってみることにしました。しかし、たどり着いてみると残念ながら満席とのこと。店長さんが申し訳なさそうに外まで出て見送ってくださったのですが、それに甘えて図々しくおすすめのお店を伺うと、近くにある「高賢」というもつ焼きの店がおいしいそう。
そんな流れでたどり着いた「もつ焼 高賢」は人気店で、なんとかギリギリ二人分の席があって座らせてもらうことができました。山形出身の店主が営むお店らしく、メニューには「玉こんにゃく」や「芋煮」といった山形の郷土料理も。看板メニューはもちろん焼きとんで、脂の上質さを感じる「かしら」も、旨みと歯応えが素晴らしい「なんこつ」も絶品でした。東京のもつ焼き店らしい「焼酎ハイボール」や「豆乳割り」といった飲み物もあり、大阪に住んでいるとなかなか味わえない取り合わせの妙を堪能しました。
店を出て、駅へと歩き、別の方面へと向かう編集担当・Mさんと別れました。一人になった瞬間、「あ、ここは東京だったんだ」と、ふいに不思議になり、山手線版の「降りて歩いて飲んでみる」もまた機会があったらやってみたいなと思いながら、私は私の行き先へと向かいました。
駒込駅周辺に住もう
JR山手線と地下鉄が利用できる駒込駅は、23区内のどこへ行くにも便利で、飲食店も多く、文化施設や商店街もあり、一人暮らしからファミリーまで幅広く受け入れてくれる街に感じます。さて、そんな駒込駅周辺の家賃相場はというと、LIFULL HOME'Sによれば、ワンルームは10.08万円、1Kだと10.3万円。そして1LDK17.79万円、2LDKは22.01万円、3LDKであれば32.04万円です(2025年4月時点)。さまざまなタイプの住宅があるので、自身や家族の状況によって選べそうです。
スズキナオさんによる人気連載が書籍化! 加筆修正を大幅に行い、「大阪環状線」1周の降りて歩いて飲んでみるが楽しめます。
この記事では画像に一部PIXTA提供画像を使用しています。