まだ勝ち星がないキングス。リーグまたぎ開幕3連敗…岸本隆一が「沸点にいくまでが早い」というコメントに込めた課題感とは
琉球ゴールデンキングスが、早くも正念場を迎えている。 10月4、5の両日にホームの沖縄サントリーアリーナで行われたBリーグ開幕カードで横浜ビー・コルセアーズ(横浜BC)に75-77、75-79で2連敗を喫し、10月8日に台湾のアウェーであった東アジアスーパーリーグ(EASL)開幕戦も桃園パウイアンパイロッツ(P.LEAGUE+)に80-94で敗北。2025-26シーズンは、まだ勝ち星がない。 昨シーズンはBリーグ準優勝、天皇杯優勝、EASL4位という好成績を残しただけに、予想だにしない波乱の幕開けとなった。 各試合ともキングスらしい粘り強い戦いぶりが影を潜める。勢いに乗りかける度にターンオーバーで流れを失い、ディフェンスで我慢を続けられない。Bリーグ、EASLとも長いシーズンはまだ始まったばかりだが、選手らのコメントからは危機感の強さがうかがえる。
簡単なシュートミスから走れる展開に
EASLの桃園戦、出だしで岸本隆一が2本連続で3ポイントシュートを決め、ヴィック・ローも内外から得点を決めるなど各選手の強みを生かし、先行した。第2Qに今季初出場となった平良彰吾が持ち味のディフェンスやコーナー3ポイントシュートで流れを引き寄せる場面もあった。 しかし、第2Q中盤でローがテクニカルファウルを吹かれて早くもファウルが三つに。さらに5点をリードした場面で小野寺祥太のパスがスティールされたり、アレックス・カークのスクリーンにオフェンスファウルが吹かれたりと、勢いを醸成することができず。 その後は簡単なレイアップシュートやフリーの3ポイントシュートを決めきれない場面も散見され、たびたび速攻につなげられた。ディフェンスをセットする前にスコアを重ねられ、ホームの大歓声を背にした相手の勢いに飲み込まれていった。 桶谷大HCは試合後、厳しい表情を浮かべて試合内容を総括した。 「ゲームの入りはすごく良かったのですが、桃園の勢いに上回られてしまいました。セカンドユニットの時のターンオーバーで追い付かれ、そこからはどちらもイニシアチブを取れていなかったと思いますが、後半にターンオーバーや簡単なイージーポイントでやられてしまいました」 勝負所でのターンオーバー、ディフェンスの乱れはBリーグ開幕カードの横浜BC戦とも共通する課題だ。この2連戦もいいリズムの時間帯こそあれど、リードしている時や追い上げた時に攻守でミスが生まれ、いずれも接戦を落とした。 指揮官が「今シーズンは切れてしまうというか、集中力が続いていない感じがあります」と言ったように、ディフェンスでふとした瞬間にボールから目を離してしまったり、相手ディフェンスが収縮してる中でインサイドを無理に攻めたりする場面もある。 「決められるようなイージーレイアップをポロっと落としてしまい、『うーん』となってる時に逆に走られてイージーレイアップを決められることもある」(桶谷HC)というコメントも、集中が持続しない事例の一つだろう。
岸本隆一「活路を見出して、前進していきたい」
これらの課題感は、コート上でゲームをコントロールする岸本隆一も共有している。以下も桃園戦の総括だ。 「ヘッドコーチが言ったことと大きくは変わりません。自分たちがいいリズムになりかけた時にターンオーバーを起こし、流れがぶつ切りになってしまいました。相手は本当にいいタイミングでシュートを決めてきて、それが今日の試合展開になった理由の大部分を占めていたと思います」 勢いを生み切れない現状について、岸本は「沸点にいくまでが早い」という言葉で表現した。横浜BCとの第2戦で、新加入の小針幸也がルーズボールに飛び込んだり、3ポイントシュートを決めたりして流れを引き寄せた場面を事例に出し、その意図に言及した。 「前回の試合の幸也のプレーが象徴するように、自分たちが均衡を破りたい時はほんの一瞬のプレーがきっかけだったりします。そのためには、どれだけ我慢強くやり続けられるかが今のチームの課題です」 大きな流れや勢いを醸成するためには、我慢を続け、そのチャンスが来た瞬間に一気にプレーの熱をピークに引き上げ、それを維持して相手を飲み込む必要がある。つまり、「沸点にいくまでが早い」とは、チャンスを迎える前の我慢が継続できなかったり、ピークに上がり切る前にターンオーバーで断絶してしまったりすることを示しているのだろう。 昨シーズンの話になってしまうが、例えば、今年3月にあった天皇杯決勝が分かりやすい事例だ。 キングスはアルバルク東京を相手に60-49という稀に見るロースコアゲームを制したが、その時はひたすらディフェンスとリバウンドで我慢を続け、最後の最後にルーズボールを繋いでからの小野寺の3ポイントシュートや岸本の勝負強いレイアップシュートで勝負を決めた。 シーズンが変わって新チームとなってはいるが、キングスの際立った我慢強さ、接戦での強さこそ、相手が最も嫌がる要素であることに変わりはないはず。岸本が「悔しいですけど、しっかりと受け止めて、ここからまた何ができるか。BリーグもEASLも続いていくので、必ず活路を見出して前進していきたいと思います」と言ったように、課題と向き合いながら“らしさ”を取り戻したい。
好転の鍵となる平良彰吾の“ディフェンスマインド”
選手、コーチがよく口にする「我慢」を体現するためには、高強度で統率の取れたディフェンスを維持することが最も大きな要素となる。 その意味で、桃園戦では頼もしい選手の躍動が見られた。ポイントガードの一人である平良彰吾である。Bリーグの開幕カードはロスター外だったため、この試合が新シーズンでの初出場となった。第2Qの途中に初めてコートに立つと、早速体を張った守りで相手のトラベリングを誘うなどして、存在感を発揮した。 3連敗となった今の課題については、以下のように語る。 「ホームの開幕戦で負け、直したかったところを直せませんでした。点が入らない時間があり、ミスから相手に簡単に得点を許してしまいました。そこを気にし過ぎてディフェンスがおろそかになったり、ミスに引っ張られ過ぎたりして、悪い雰囲気が続いてしまったと感じます」 10月11、12の両日にホームであるアルバルク東京戦への意気込みを聞くと、「絶対にこの流れを止めないといけない」と強い決意を語った上で、変わらないディフェンスに対するプライドを口にした。 「シュートが入るかどうかは試合にならないと分からないので、オフェンスはある程度波があります。でも、ディフェンスはしっかりコンディションを準備して、強いマインドを持ってやればいつでもできることです。それが僕の仕事なので、そこからいい流れをチームに与えれるようにしたいなと思います」 チーム全体でこのディフェンスマインドを今一度共有し、愚直にやり続ける。現状を好転させる上では、必要なポイントの一つであることは間違いない。