流派越え 花の魅力追求 歴史つなぐ秦野華道協会
日本の伝統文化の一つである「華道」。花の持つ生命力や個性に魅せられた人々が花と向き合い、数多くの作品が生み出されてきた。ここ秦野市でも、伝統を受け継ぐとともに、新たな「いけばな」を表現しようと秦野華道協会(小泉道生会長)が活動している。今年は23年ぶりに秦野が「第74回神奈川県華道展」の会場となり、県内から22団体が集結する。9月4日(水)の開会を前に、同協会の歴史や魅力を取材した。
秦野華道協会は1946年頃、秦野市でいけばなを教えている人々が、流派を越えて足並みを揃え、華道を盛り上げようと創立。「秦野市文化振興大会」や「秦野市文化祭」だけでなく、「神奈川県華道展」や「武相華道展」に出品している。また、市文化祭の際には「いけばな体験会」を実施し、いけばなの普及活動にも取り組んでいる。現在は休館中のクアーズテック秦野カルチャーホールでは開館時に会員らが週替わりでロビーに作品を展示。作品のクオリティを保つため、頻繁に手入れを行うなど、精力的に活動している。
華道には数多くの流派が存在しており、同協会には15流派が所属。流派の垣根を越えて会員は仲が良く、「他の流派の作品も素敵。時には参考にすることもあります」という。また、教室を開いて稽古を行う流派もあれば、渋沢駅連絡所の一角にいけばなを自発的に展示している人も。中には献花台を手がけたり、海外で活躍している人もいる。現在、会員の人数は67人で、30代〜90代の会員が所属している。
「花材が豊富」
秦野市は山に囲まれた自然豊かな場所であることから、「花材が豊富にある場所」と評判が良いのだとか。いけばなで使用する花材は、花屋での購入はもちろんのこと、自身の庭で育てている花を活用することも。さらには、地域や花を育てている人から譲り受けることもあるという。
東京で花を生けているる人からは「羨ましい」と言われることもあるそう。小泉会長は「花材が豊富という所は秦野の強み。まさに、いけばなには持って来いの土地ですね」と語る。
「常に新しいことを」
小泉会長がいけばなを始めたきっかけは、「新生未生流」を教え、同協会の初代会長でもある父親の影響を受けて。自宅に花や剣山などの道具が揃っていたことから、「小学生の頃には学校に道具を持って行って花を生けていました」と笑顔を浮かべる。しかし、父親にいけばなを教わったのはたった一回のみ。「ほぼ独学。いけばなを教える父親の姿をそばで見ていましたし、自分の作品と父親の作品を見比べて勉強していました」と振り返る。その後、父親の代わりに稽古を行い、いけばなを教えるようになった。2000年頃には独立して、自ら「新生」という流派を生み出した。
小泉会長のいけばなは剣山を使用ぜす、決まりきった形がない。「新しく生きる」という名の通り、常に新しい表現方法を模索しているという。「角度に制約が生まれてしまう剣山を使用しないからこそ、花が自由に向きたい方向に向き、生き生きとした表情になる」と話す。今年6月15日・16日に行われた「秦野市文化振興大会」では、アジサイとワイヤーで表現した作品を出品。植物ではないものを、植物と同じように生ける対象として受け止め、線を混ぜこぜにして一体化させたという。
また、同大会には10流派が参加しており、それぞれが選んだ花器や花材を使い、流派の技術を駆使した個性あふれる作品が会場を彩った。
自由に表現する場へ
今まで同協会に入会するためには、講師として活動している人や資格を持っていることが条件だった。しかし、愛好家の人にも入会してもらうため、2021年に規約改正を行った。「今後の目標は会員増強。敷居が高くないことを知ってもらい、気軽に入会してもらえるようにしたい」と語る。さらに、異なる流派の人々が集まることから、「自由に表現ができるような会の雰囲気を作りたい」と意気込む。
62流派が秦野に集結
「第74回神奈川県華道展」は9月4日から9日(月)まで、メタックス体育館はだので開催される。午前10時から午後5時(5日(木)・7日(土)・9日は4時)まで。入場無料。
秦野が会場となるのは23年ぶり。県下22の華道団体から推薦された華道家による、全240点の作品が集う。6日間の期間で、2日ごとに80作品を入れ替えて展示される。小泉会長は「62流派の作品が秦野に集う。同じ花でも、流派や人によって花との付き合い方や考え方が違うので、ぜひ見に来てほしい」と話す。個性豊かで華やかな祭典が秦野で楽しめそうだ。(問)小泉会長【携帯電話】090・8963・2914