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世界遺産「熊野古道」をめぐるアドベンチャーツーリズム【後編】熊野三山のあふれるパワーに満たされて

さんたつ

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神々が籠る深山の聖域、熊野。清らかな滝や巨大な岩など、自然への崇拝を起源とした霊場とその参詣道が、2024年にユネスコ世界遺産登録20周年を迎え、注目を集めている。そんないまこそ知っておきたい、熊野信仰の原点にふれる2泊3日のアドベンチャーツーリズムの様子を2回に分けてご紹介!【前編】では熊野古道の中辺路(なかへち)歩きを楽しみ、熊野本宮大社や大斎原(おおゆのはら)へ向かった。今回は熊野三山の参詣を制覇すべく、熊野速玉(はやたま)大社や熊野那智大社などを目指す。

【2日目の旅程】
神倉神社→熊野速玉大社→阿須賀神社→Bistro ILE DE FRANCE(ビストロ イル ド フランス)→大門坂→熊野那智大社・那智山青岸渡寺(せいがんとじ)→飛瀧(ひろう)神社・那智の滝→ホテル浦島
【3日目の旅程】
円月島(えんげつとう)→とれとれ市場→南紀白浜空港

まるでロッククライミング!?な熊野権現降臨の地へ

2日目は神倉神社からスタート。熊野三山に祀られる熊野権現が最初に地上に降臨したとされる、はじまりの聖地であり熊野速玉大社の摂社だ。

崖の上の巨岩「ゴトビキ岩」をご神体とするこの神社は、山の麓から538段もの石段を上ってようやく辿り着くことができる。今回は石段を上らずに、下から仰ぎ見るのみにとどまったが、もし上るとしたらロッククライミングのようになりそうだ……。石段の荒々しさからも、自然信仰の力強さを感じた。

この石段を、松明(たいまつ)を持ちながら駆け下りる「御燈(おとう)祭」が毎年2月6日に行われる。

【神倉神社】
☎ 0735-22-2533(熊野速玉大社)
境内自由
和歌山県新宮市神倉1-13-8

“新たな宮”で感じる1000年の時

神倉神社のお次は、熊野速玉大社へ。歩を進めると朱色で彩られた鮮やかな神門、そして社殿が見えてきた。景行天皇の時代に、熊野権現が神倉山から現在の鎮座地に遷座したため、神倉神社の「旧宮」に対して「新宮」と呼ばれている。

大きな注連(しめ)縄がかけられた神門をくぐる。
速玉大神(はやたまのおおかみ/別名・イザナギノオオカミ)と熊野夫須美大神(ふすみのおおかみ/別名・イザナミノオオカミ)の夫婦神を主神としていることから、縁結びの神社としても知られている。

境内には天然記念物に指定されている樹齢約1000年のナギのご神木が。その幹の太さ、そして時を重ねたいまも変わらず悠々と茂る葉の青さに、生きる力を分けてもらえた気がした。ご神木にも古道歩きの安全を祈り、次へと向かおう。

ナギが「凪」とも通じることから、旅の安全祈願として祈りの対象となっていた。また、その葉を縁結びのお守りにする風習もあるそう。 
境内で売られていた、ヨモギを使った柏餅もゲット。

【熊野速玉大社】
☎0735-22-2533
境内自由
和歌山県新宮市新宮1

熊野速玉大社の参拝を済ませたら、阿須賀(あすか)神社にもぜひお参りを。熊野川の河口近くに鎮座し、背後の蓬莱山をご神体とした自然信仰が起源となっている。古くから熊野信仰の重要な地になっていたというこの神社は、2016年に世界遺産に追加登録された。

蓬莱山の木々に包まれ、なんとも厳かな雰囲気。人も少なく、不思議な世界に迷い込んでしまったような気分に。
八咫烏(やたがらす)のおみくじもかわいい。

【阿須賀神社】
☎0735-22-3986
境内自由
和歌山県新宮市阿須賀1-2-25

神倉神社の“お味”は?

お昼は阿須賀神社のすぐ近くの『Bistro ILE DE FRANCE』へ。できるかぎり地元の食材を使うことにこだわったフランス料理店だ。

ここで食べておきたいのが、神倉神社を食で表現している「熊野ハンバーグ」。マッシュポテトは雪が降り積もったゴトビキ岩、ハンバーグは神社を支える天ノ磐盾(あまのいわたて)、レッドキャベツは御燈祭の炎、水菜は椎の木や樫、ポテトチップは磐盾の岩質である熊野酸性火成岩がイメージされ、それぞれが美しく折り重なっている。

日本古来の信仰の形を、洋のテイストに落とし込むシェフの繊細なバランス感覚と熊野愛にふれ、おなかも心もいっぱいで大満足。午後からは今日の熊野古道歩きが始める。

熊野ハンバーグのソースには、コク深いエビとフォン・ド・ヴォーが使われている。
店は親子で営み、写真は息子の倉本幹也さん。大阪で修業後、地元の新宮に戻ってきた。

【Bistro ILE DE FRANCE】
☎0735-22-3986
ランチは11:30~13:00LO、ディナーは17:30~19:30LO。月曜休。
和歌山県新宮市丹鶴3-1-18

待ってましたの石畳。古(いにしえ)の気配がそこかしこに

2日目午後の熊野古道歩きは中辺路の大門坂を上り、熊野那智大社と那智の滝へと向かう約2.5kmの道のり。初めは大門坂入口から民家の横を通ってゆく。きれいに整えられた果樹や歩道から地元の営みが感じられ、山中を歩いた昨日のコースとはまた違った雰囲気だ。

スタート地点の大門坂駐車場には、「なでしこジャパン」の記念モニュメントも。
道端にはポンと果物や野菜が置かれた直売所が。地元の人のおもてなしの心にほっこり。

俗界と聖域の境目・振ヶ瀬橋(ふりかせばし)に差しかかった。ここから聖域に足を踏み入れるんだということを改めて自覚し、姿勢を正す。緑も増え、どんどんと道の様子が古道らしくなってきたなと思っていると、「夫婦杉」が現れた。大きな大きな2本の杉の木は古道を歩く人々を出迎えているかのようだ。

振ヶ瀬橋を渡ると、本格的に古道歩きが始まる。
夫婦杉の樹齢は約800年!
夫婦杉から少し歩いたところには、多富気(たふけ)王子が。これが中辺路最後の王子となる。

途中から空気がひんやり。苔むした石段が連なり、その両脇には樹齢数百年もの木々がそびえている。表面がすりへり、少し不ぞろいな様相もみられるこの石段は、どのくらいの人々の歩みを受け入れてきたのだろう。先人たちの声に耳を澄ませてみた。

いまにも平安貴族が歩いてきそうだ。

ダイナミックなおみくじと滝で運気上昇!

大門坂を歩き終え、467段の石段をひいひいと言いながら上っていくと熊野那智大社が見えてくる。主神は熊野夫須美大神で、夫須美は「結び」を意味することから、縁や願いを結ぶ神として崇められている。

お参りをしたあと、おみくじを引こうと授与所に向かうと、その大きさにびっくり! 全長約133cmの筒はずっしりと重くて引くのもひと苦労だが、頑張って得たくじからはよりいっそうのありがたみが感じられた。

熊野那智大社は那智山の中腹に位置している。来た道を振り返ると「ここまで上ってきたんだな」と感慨深くなる。
熊野夫須美大神はもともと那智の滝のそばで祀られていたが、約1700年前にいまの場所に遷移された。
巨大なおみくじは日本一の大きさともいわれている。

熊野那智大社の隣には那智山青岸渡寺の本堂が。明治時代の神仏分離まで2つの社寺は一体となっており、いまでもこの位置関係や社殿の造りから神仏習合時代の名残が感じられる。すべて熊野杉で造られているという本堂や、そこに奉納されている日本最大級の大鰐口(おおわにぐち)が見事で、しばらくぼおっと見とれてしまった。

豊臣秀吉によって再建された那智山青岸渡寺の本堂は、国指定の重要文化財となっている。
青岸渡寺から下ってゆくと、朱塗りの三重塔と那智の滝が見えてきた。
石段を下り、那智の滝を目指す。
道沿いの岩は美しい苔で覆われている。滝の潤いがここまで届いているのかも。

那智山青岸渡寺から石段を下っていくと、那智の滝とそれをご神体とする飛瀧神社に到着だ。高さは133m、滝壺の深さは10mあり、落下する水量は毎秒1t。日本一の落差を誇るともいわれている。ごうごうと流れ落ちる水の音と、間近で浴びる水しぶき……帰路に就くころには、体があふれんばかりのパワーではちきれそうになっていた。

飛瀧神社は滝そのものをご神体としているので、本殿はもたない。
熊野三山でしか買えない「熊野もうで餅」と、那智の滝をイメージした「お滝もち」に癒やされて。

【熊野那智大社】
☎0735-55-0321
境内自由
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1

カメが連れて行ってくれた先は……

今晩の宿は『ホテル浦島』。10もの源泉からなる6つの温泉をもち、旅行新聞社が実施した「あなたが好きな露天風呂のある宿」アンケートで、2024年の1位に輝いた宿だ。

ホテルへは対岸の勝浦港から船で向かう。高まる期待を胸に船着き場で待っていると、なんともかわいいカメ「浦島丸」のお迎えが! 浦島太郎気分でしばしの船旅を楽しみ、ホテルへと到着。

浦島丸に乗り、約5分でホテルに到着!
本館、なぎさ館、日昇館、山上館と4つの館からなる巨大リゾートホテルだ。

先述したように、多くの湯をもつこのホテルでは、敷地内で湯めぐりを楽しめる。なかでも押さえておきたいのが天然の大洞窟風呂「忘帰洞(ぼうきどう)」と「玄武洞(げんぶどう)」。ごつごつとした岩肌に包まれ、荒々しい波を間近に感じながら湯につかる。そこにあるのは非日常と大きな開放だ。

「玄武洞」の露天風呂は濃~い硫黄泉。1日目に宿泊した川湯温泉は比較的さらりとした湯だったので、同じ紀伊半島でもここまで泉質が違うのかと驚いた。

夕食は食べ放題と約3品のミニ懐石が楽しめるハーフバイキング。那智勝浦名物・生まぐろのむっちむちな食感となめらかな脂にうっとり。
紀州藩主の徳川頼倫(よりみち)が「帰るのを忘れさせるほど心地よい」と賞賛したことからその名がつけられた「忘帰洞」。
山上館の窓からは那智山と勝浦湾、そして那智勝浦の町並みが望める。

【ホテル浦島】
☎0735-52-4111
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1165-2

最後だから、思いっきり和歌山を食べつくす

3日目は勝浦から南紀白浜方面へ向かい、まずは白浜のシンボルともいわれている円月島とご対面。正式名称は「高嶋(たかしま)」というのだが、島の中央に円(まる)い海蝕洞があいていることからその名がつけられた。ぽっかりとしたシルエットに自然のおもしろさを感じる。

今回は日中の訪問だったが、ここは「日本の夕陽百選」にもなっている夕景の名所でもある。

旅の締めくくりは『とれとれ市場』で。水揚げされたばかりの新鮮な魚介をはじめ、紀州の梅、地酒など和歌山の食が大集合した食のテーマパークだ。どれもこれもおいしそうで、ついつい財布の紐がゆるんでしまう幸せタイムに突入。市場でひととおりの買い物を楽しんだあとは、とれとれ横丁で海鮮丼やお寿司を食べるのもよし、BBQ(バーベキュー)コーナーで新鮮な食材を堪能するのもよし。

その場で解体された新鮮なマグロも注目商品の一つだが、陰のおすすめはマダイ。市場を運営している「堅田漁業」が「育てる漁業」というモットーのもとに、こだわりをもって育てたマダイは高品質で鮮度抜群なのだ。なめらかで繊細な味わいがたまらない。

堅田漁業のマダイや紀州産カツオ、貝類などがずらり。
BBQコーナーで、買ったばかりの魚介を焼きながらビールをぐびり。

【とれとれ市場】
☎0739-42-1010
8:30~18 :30(食事処は~17:30LO)、不定休
和歌山県西牟婁郡白浜町堅田2521

荒々しい波や清らかな川の流れ、手つかずの木々が生い茂る山道。自然崇拝を起源とした熊野古道をめぐる今回の旅では、くるくると変わる自然の表情を知り、道の静けさに自分と向き合う時間をもらった。

このアドベンチャーツーリズムは、2024年9月以降も随時開催している。今年のうちにもう1回参加したいなあ……。

●《和歌山県 世界遺産「熊野古道」をめぐる紀伊山地の参詣道散策 3日間(アドベンチャーツーリズム)》(主催:ジャルパック)についてはこちら↓

https://www.jal.co.jp/jp/ja/domtour/jaldp/kumanokodo/

取材・文・写真=『旅の手帖』編集部
撮影=ジャルパックオフィシャル

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