【社長インタビュー】TVゲーム販売から「地域お客様のお困りごとを解決する会社」へ、「COMG!」展開のコミュニケーションゲート・櫻井正朋社長
「COMG!」を展開するコミュニケーションゲート。櫻井正朋代表取締役社長(写真右)はこの約10年で会社の改革を進めた
かつてTVゲーム販売をメイン事業として新潟県内外に展開していた「COMG!」──TVゲームがネット通販やDL販売へシフトしたことにより一時苦境を迎えたが、この10年でスマートフォンの販売や活用のサポートを行うモバイル事業をメインにしたことで、2024年には7期連続増収増益を達成。今期も好調を継続する見通しだ。
こうした中で運営会社の株式会社日野屋玩具店(新潟市西区)は2024年9月、社名を株式会社コミュニケーションゲートへ変更。改革の指揮を採ってきた櫻井正朋代表取締役社長は「ゲームやモバイル端末を売ることではなく、必要としている人に本当に必要な情報を再編集し、提供することが我々の仕事」と自社を再定義する。
目次
○ ゲーム販売からモバイル事業へ
○ コミュニケーションゲート、「何かあった時に相談できる『入口』」
○ 社内でも改革を
○ ライフソリューションカンパニーへ
ゲーム販売からモバイル事業へ
櫻井正朋代表取締役社長。1977年、新潟市の生まれ。人材サービス会社・パーソルキャリアでの経験を経て、2013年に日野屋玩具店に入社。2023年に社長就任
櫻井社長が日野屋玩具店(当時)に入社した2013年は、まさにゲームの販売がネット通販にシフトし、一方でスマートフォンが生活の中で欠かせない存在になりつつあった時期。櫻井社長は当時の経営について「赤字が続き、事業継続が危うい状態だった」と振り返る。そこで、すでに生活必需品となっていたスマートフォンへ事業の軸足をシフトし、さらにただ商品を売る小売業から顧客の困りごとを解決するサービス業への転換を目指した。
そして現在、そうしたモバイル事業の利益が約6割を占める。強みは主に2点。「COMG!」が複数の携帯キャリアを扱っているため、大手3社をフラットな視点で見て顧客に最適なプランを提案できること。そして、手厚いアフターサービスだ。
近年、会員サービス「COMG!パスポート」を拡充し、端末のデータ移行作業や付属機器の故障対応、ゲームも含めた製品の割引などの特典を用意した。櫻井社長は以前より「お客様の困り事に対応することを重視」(同)してサービス業への転換を進めることで、顧客の満足度を高めてきた。「お客様にとっては、買った後が一番困るところ。設定やデータ移行などだいたい2、3年に1回しかやらない作業なので、調べながらやっていると時間がかかったり、何かミスをしてデータが飛んでしまったり…という話を聞くことが多い。端末を販売するだけではなく、そうしたアフターサービスのニーズが高いと思っている」。
また、キャリアのショップなどではオンライン化が進む部分もある中で、「COMG!」では実店舗も重視。キャリアショップは即日対応できないことも多いが、「COMG!」では予約なしでも利用できる点でも支持を得る。経営の合理化で閉店した店舗もあるが、2025年4月現在は県内に14店舗を展開し、今後の新規出店も計画している。
コミュニケーションゲート、「何かあった時に相談できる『入口』」
「COMG!パスポート」のサービス(一部)、同社webサイトより。「COMG!」には元々会員制度はあったが、単なるポイントカードのような形であり、2013年当時は会員情報の活用もしていなかったという。櫻井社長は制度の改善や会員へのDMの提供などにも取り組んだ
こうした事業の転換のなかで2023年、新たに立ち上げたのがファイナンス事業だ。前述の「COMG!パスポート」の中にも、金融講座の参加をサービスの一つとして盛り込む。モバイル事業から一見唐突なように見えるが、櫻井社長は「本質は同じだ」と話す。
「我々はゲームやモバイル端末を売ることではなく、必要としている人に本当に必要な情報を再編集して提供することが仕事だと考えている」と櫻井社長。携帯電話やゲームといったモノを売るのではなく、「何かあった時に真っ先に相談できる『入口』」(同)として自社を位置づける。
そしてモバイル事業では前述のような「第三者的な立場」という一定のポジションを確立できてきた中で、保険や資産形成などの業界にも売り手と顧客の間に情報の非対称性があることに注目した。「こうした分野は、各金融機関の系列があったりして一般消費者から見ると非常に難しい。我々のような第三者だからこそ、お客様本位の提案ができると考えている」。
社内でも改革を
「COMG!」のイメージキャラクターたちも新たにつくった 画像提供:コミュニケーションゲート
新しい社名「コミュニケーションゲート」にも、同様の想いを込めた。そして、社内や仕事の改善にも乗り出している。
コミュニケーションゲートは2024年7月、Great Place to Work(R)Institute Japanが実施した調査で「働きがいのある会社」に認定された。櫻井社長は社内環境を重視することについて「心理的安全性は非常に重要で、パフォーマンスに影響する。サービス提供する側が満たされて満足していないと、お客様にご満足いただけるサービスもできない」と説く。
一方で昨年は「コングイノベーションズ」という制度も開始した。社内ベンチャーのような形で、2人以上のチームから事業やサービスを提案してもらい、「会社のミッション、ビジョン、バリューに合うものであれば採用し、1,000万円以上を投資する」というもの。なお、チームには社外の人間を巻き込んでも構わないという。会社の経営側だけでなく様々な社員からアイデアを募ることで、新規事業立ち上げのスピードを上げていくことが狙いだ。
「まだ昨年立ち上げたばかりで、具体的に動き始めたものはない。しかし、(会社全体に)新規事業を発想する素地を耕したり、マインドのある外部の人を迎えることができたらと考えている」(同)。
ライフソリューションカンパニーへ
自社の今後について語る櫻井社長
改革に着手して10年以上。しかし櫻井社長は「改革はまだまだ途中だ」と話す。
顧客からのアンケートに目を通すと、基本的なスマートフォンの使い方以外にも様々な困りごとを抱えていることを実感するという。モバイル端末やファイナンスに留まらず、これからもサービスを考え、改善を重ねていくことを目指す。
櫻井社長は力を込める。「会社のビジョンは、ライフソリューションカンパニー。お客様の人生で起きる様々なライフイベントにおいて、ベストなソリューションを提供してくれる頼りがいのある、なくてはならない存在になっていきたい」。
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コミュニケーションゲート(日野屋玩具店)の設立は1952年だが、元々は材木店として明治期に創業。その後雑貨店を経て、戦後に玩具店として会社化した。90年代以降、県内でよく知られた「COMG!」も、同社の歴史の中では比較的新しい業態と言える。
時代に合わせて企業が形を変えようとする時、重要なのは中心となる理念や方向性だ。同社が近年改めて「情報を再編集し、必要な人へ本当に必要な情報を提供する会社」という軸を定めたのは意義深い。
「コングイノベーションズ」などからも出てくるであろう動きも含めて、同社の今後の改革と展開に注目したい。
【関連リンク】
コミュニケーションゲート webサイト
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